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25.約束が生まれる


アロニアから鈴を受け取った。


小さな1つの、丸い鈴。


ベルでもなく、おりんでもなく、水琴窟に似た丸い小鈴。


アロニアは使い方を知らなかったが、使う目的を知っていた。

それは俺の中にいるリンクスが呪縛のため言えないような目的だった。


では、リンクスなら、使い方を教えてくれるだろうか?

呪縛の対象でないといいのだが。


音楽に疎かった彼でも、簡単に鳴らせるはずだと親友に思われていた除霊の鈴。


「リンクス、答えられるか?」


俺は心の内に向かって問いかけた。


答える声があった。リンクスだ。

「魔力を通せばいいと言われている」


「精霊術でないといけないのか?」


「特に決まりはない。怜樹の好きな……得意な魔力でいい。ただし、死霊術以外な。反発するからな」


「治癒魔法で問題ないか?」


「おまえ……治癒魔法が使えるのか?」


なぜかリンクスの声が上ずって、少し震えたような気がした。


「ああ」


「うらやましいな。……良かったな」


「えっ? リンクス、もしかして、ちょっとひがんでる?」


「そんなんじゃない! けど、俺が治癒魔法を使えていたら、父さんの医院を継いで、エルフの里に残っていただろうな、と思って」


「心残りがあるの?」


「俺は父さんのことを尊敬してたからな。創薬や魔道具開発も、医療に未練があったからしてたものだしな」


意外とよくしゃべる。


「モテ目的でモノマスの魔術師になったんだろうと思ってたけど、そうじゃないんだな」


「いや、モテ目的だよ?」


「はぁ?」


「は?」


なんだか笑えてきた。


「はははは……!」


「おまっ、絶対あきれてるだろ?」


物知りで教わることだらけのリンクスなのに、なんだかぐっと距離が近くなった気がした。



草原のど真ん中。


大きなワイバーンを、風の力と魅了で惹き付けたのはアロニアだ。


「援護して!」

アロニアが叫ぶ。


「あいよ!」

セラフの頼もしい声が返ってくる。セラフの氷弾が、ワイバーンを空中で串刺しにし、動きを数秒止める。


俺は2人を目のはしに留めつつ、上空に手をかざす。


「焼き尽くせ。出でよ焔の掌、火焔射ミットー・フラムモー!」


俺は両手から魔法の炎を揺らめかせて、襲ってきたワイバーンから、旅人を救った。

まるで昔憧れだった英雄のように。


「ナイスアシストだぜ!」


「そりゃそうよ! おいらは最強だからっ」


「はははっ、アロニア姉はいつもそう言う!」


「2人とも、ご苦労さん」


「怜樹~! だいぶ魔法の発動が滑らかになったねえ~!」


「ありがとさん! セラフ、その人は俺に」


「うん! 打撲傷は冷やしておいたよ!」


「ふぇぇ……きっつぅ……腕がちぎれるかと思ったぜ」


「まだ付いてるようだが、ちょっと見せてくれ」


「おや、火力使いかと思ったが、よく見れば治癒術師のローブじゃねえか、兄ちゃん、治してくれるのかい?」


「お代はギルドにつけとくぜ」


「世知がれえな。だが、頼む」


スキャン。


「うむ、こりゃ折れてるな……ん……うむ……よし!」


緑色の光が広がる。


「おや、痛みが引いたぞ! 兄ちゃん、無詠唱だったな、ようやるな!」


「ん? 珍しくないのでは?」


「いや、相当に珍しいぞ。オレは初めて会ったぞ」


「そっか、俺の知る人が規格外だっただけかぁ……」


主に隣にいるアロニアとかな(エルゼパルも勿論そうだ)。あれは規格外だったのか。



俺たちは冒険者ギルドに宿を借り、依頼をこなしつつ、領都に滞在し続けた。


ミラビリスも時々やって来て一緒に食事をしたりもしたが、いつもアロニアとセラフがいて、2人きりになる機会はなかった。


俺がアロニアにしきりに質問をして、距離を縮めたように見えるせいもあるだろう。


だが、ある夕方、ミラビリスが俺にしきりに視線を送ってくるので、俺もとうとう察してあげないといけないな、と思った。


「ミラビリス殿、いかがした?」


「怜樹、その……今晩……あの、続きがしたいの」


直球ストレートだな、おい。女の子に言わせるようじゃ、まだ俺はモテないぜ。


「うん、わかった」


俺は左右のアロニアとセラフを見た。


「大丈夫さ、おいらたちは、こういう時のためにもう1部屋取ってあるから。……ったく、消音しろよ」


アロニアが文句を言いつつ、赤くなりながら答えた。


「ミラビリス、本当に、いいのか?」


「うん、待っていたんだもの」


こちらも、なかなか可愛らしい。



俺は部屋にある大きな桶に、火と水の魔法で湯を張った。

浸かるほどはないが、身体を清めるには充分の量だ。


隣でミラビリスも身体を拭いている。

見えるべきものは、もちろん見えていた。


「触っていいかい?」


「はい!」


嬉しそうにミラビリスは答えた。



…………。



………………………。



続きはベッドで行い、…………。


……………………。



俺は、たぶん、シルバー級の依頼達成を目指さないといけないような気がした。




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