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驚きの再会

一週間前、親友の茜がオーストラリアへ留学してしまい、真希は張り合いのない日々を過ごしていた。新生活が待っている茜にとって半年はあっという間かもしれないが、残された真希はとてもそのように感じることはできなかった。今日はオーストラリアから交換留学生がやって来る。とても美人だという噂が流れていたので、みんな朝からソワソワしていた。しかし真希は英語が得意ではないので、仲良くなれそうにない留学生にはあまり興味がなかった。ところが先生と一緒に教室に入ってきた留学生を見て真希は完全に固まってしまった。

(えぇ!昨日、夢の中で一緒だったエリーじゃない?)

「はじめまして。エリー・スミスです。よろしくおねがいします。」

青い瞳で金髪の素敵な女の子の登場で教室中に歓声が響いた。

なまりはあるが、日本語がかなり話せることはすぐにわかった。特に真希は昨夜の夢の中でもエリーと日本語で話をしていたのだ。先生がエリーに真希のとなりの空いている席に座るように指示をした。ずっと素敵な笑顔だったエリーだが真希と目があったとたん、時間が止まってしまったように動かなくなった。エリーよりも少し前から気が付いていた真希は正気を取り戻し、エリーの様子を見て思わずふき出してしまった。すぐにエリーも我に返り、微笑を浮かべてさっと真希の隣の席にすわった。

『なぜ?どうして?』

 これらの言葉よりも笑いが止まらない二人を周りの人たちは不思議そうに見ていた。

「二人は知り合いだったのか?さあ、授業をはじめるぞ!」

先生の言葉で皆は落ち着きを取り戻した。

休み時間になり十人ほどのクラスメイトがエリーの周りに集まった。他のクラスからもエリーを見に来る人たちで真希のクラスは賑わっていた。

「エリーはオーストラリアのどこに住んでいるの?」

「オーストラリアの東部にあるヌーサと言う所です。海が近くて自然が豊かです。家の庭に野生のカンガルーが入って来ることもあります。」

 エリーはゆっくりと日本語を確認するように話をするが、いきいきとした目をして独特の身振り手振りを使い皆との会話を楽しんでいた。

「兄弟はいるの?」

「はい。弟が一人います。十一歳です。」

 エリーは携帯電話のロック画面になっている家族写真を見せながら言った。

「可愛い!いいなあ。弟にも会ってみたいわ。」

 映画に出てくるような素敵な家族の写真を皆は興味心身に見ていた。

「彼氏はいるの?」

 皆は、かっこいい彼氏の写真も見せてもらえると思い期待していた。

「彼氏はいません。」

 残念そうに言うエリーと同じくらい、女子の皆も残念そうな顔になっていた。人気者のエリーを独り占めして、昨夜の夢の話をするのは無理だと思った真希は、

「放課後、一緒に帰ろう。」

と誘っておいた。



「エリー、夢の中で持っていたあの金属は?」

「大事に家に置いてあります。」

 丁寧な日本語しか話せないエリーに少し距離感を感じてしまうが、茶目っ気のある笑顔を見ていると気にならなくなる。夢の中で一緒だった四人全員が持っていた金属は四つとも形や大きさは違うが輝きは同じだったので同じ金属であることはわかっていた。

「あの夢は普通の夢じゃなかったのかな?すごくリアルだったし・・。」

 真希は不思議そうな顔で言った。エリーは全く同意見だと思い、うなずいた。

「それにしても素敵な場所だったよね!空気はきれいで、実っている果物も美味しかったわ。」

 真希は夢の中で初めて食べた果物の味を思い出し、うっとりした顔になった。

「でも映画の中に入ったようでした。周りの人達は私たちの事が見えていない様子だったので・・・。」

 エリーはあの場所の誰とも話が出来なくて残念そうだった。

「地球であんな場所はないような気がするわ。テクノロジーもかなり進んでいたから、どこか違う星に行っていたのかな?」

「人間の見た目は同じでした。宇宙人という感じはしませんでした。」

「そうね・・・。」

突然、真希がすごい事を思いついたような顔でエリーを見た。

「あ!私たちが出会えたという事は、英司やヒカルもどこかにいるのかな?同じ学校では見かけた事がないけど、いつか会えるかな?」

「会いたいです!」

 エリーは少し興奮気味に言った。

「楽しくなりそうね!」

 真希とエリーは満面の笑みを浮かべながら、お互いの手を握っていた。いくらでも話は尽きないが、登校初日のエリーを引き止めるのも悪いと思い、二人はエリーのホームステイ宅の前で別れた。驚いたことにエリーのホームステイ先は真希の家から歩いて五分ほどの距離だった。もう子供も独立して夫婦二人暮らしになった家は十分な広さがあった。ホストマザーが少し前まで英会話の先生をしていて学校から近い事から、エリーの受け入れが決まったのだ。

 エリーが来てから真希の生活は一変した。一週間が過ぎて例の夢の話はあまりしなくなったが、女子高生は何気ない話題でも笑いがとまらなくなる。エリーは動作も日本人とは違い、大げさではあるが気持ちがダイレクトに伝わってくる。そんなエリーがいると教室中が明るくなり、以前よりもずっとクラス中の皆が仲良くなっていった。

「今日も楽しかったなぁ。」

 真希は寝る前、おまじないの様に幸せな言葉をつぶやくようにしていた。そして少し体が軽くなったように感じながら、気持ち良く夢の世界へと入っていった。


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