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最終回

「ねぇ、今まで聞いたことが無かったけど、みんなはどうやってオリハルコンと出会ったの?」

 真希は思い出したように質問した。

「俺は畑のあぜ道で見つけたんだ。土にまみれていたけど、あの輝きを見逃さなかったぜ。」

 英司は宝石の発掘者のような口調になっていた。

「私のオリハルコンはスーツケースの中に入っていたの。留学のお守りに、こっそり弟が入れてくれたのかな・・と思っていたのだけど、家族は誰も知らないと言っていたわ。」

 エリーは不思議そうに言った。多くの不思議な体験をした皆は、このような話に驚いたり、エリーを否定する事はなかった。

「僕は犬の散歩で公園に行ったとき、晴れた日によく見える光の粒子のような物を眺めていて・・」

「光の粒子って何?」

 真希がヒカルの話をさえぎって聞いた。

「フェアリーダストやプラーナって呼ばれている物だと思うけど、空気中にチカチカ光るような粒子が泳いでいるように見えるんだ。室内よりも屋外、都会よりも自然豊かな所の方がよく見える気がするな。晴れた日に空を見上げて、少し視点をぼかす様にすると見えると思うけど。」

「俺にも見えるかな?」

 英司は自信なさげに聞いた。

「僕の周りでも、かなりの人が見えているから真剣に見ようと思えば誰にでも見えると思うよ。そして、その日は特別にその光の粒子が多く見えるなと思っていたら、突然オリハルコンがこっちに向かってゆっくりと泳ぐように空から落ちてきて・・。」

 両手を前に出してキャッチする仕草をしながら、真剣に話しているヒカルに向かって、英司は苦笑いをしながら言った。

「誰かにこの話をしても、ほとんどの人が信じないだろうな。」

 皆は英司の意見に同意するように何度もうなずいた。そして待っていたかのように、真希が話し始めた。

「私は祖母が私宛にくれた遺品の中に入っていたの。今でもオリハルコンは祖母の形見のような存在よ。」

 四人は同時にオリハルコンと初めて出会った時の事に意識を向けた。すると胸の奥からオリハルコンの輝きが広がっていき、体全体が包み込まれたような感覚を味わった。その輝きは、あらゆる暗い部分を照らし出し暖かさで全てを優しく迎えてくれるように感じられる。エリックがオリハルコンの事を『太陽と同じ資質を持っている』と言っていた事を四人は思い出した。そして皆はオリハルコンが、この先ますます輝きを強めようと頑張っている事を感じ取った。四人はしばらくの間、動物や植物とは違う、ゆっくりじわじわと伝わってくるようなオリハルコンとの交流を全身で楽しんでいた。

「今まで気が付かなかったけど、私たちはいつも、このエネルギーに包まれていたのね。」

 エリーはオリハルコンに感謝するように言った。

「アトランティス神殿には、あらゆる宝石や金属があったでしょ?私達はオリハルコンを持っているけど、他にも同じ物を持っている人同士が出会って同じような経験をしているのかな?」

 真希の言葉で思わず四人は周りを見回した。

「こんな話を他人にベラベラ話す人はあまりいないと思うから、案外そばにいるんじゃないか?」

 英司が小声で言った。

「その人達と会えたら楽しそう!」

 真希は目を輝かせた。

「でも、オリハルコンが一番きれいだと思うな・・。」

 ヒカルの意外な言葉に三人は驚いた。

「ヒカルは親ばかになるタイプだな。」

 英司がヒカルとエリーを見て、笑いながら言った。

「でも動物と話が出来る人や、植物の気持ちがわかる人もいるでしょ?私たちが今経験したような、鉱物との交流も当たり前になる時がくると思わない?」

 真希がワクワクしながら言った。

「私も同じことを考えていたわ!」

 エリーはびっくりした顔をして言った。

「あ、思い出した!この前テレビで[私、妖精を見る事ができます]と、堂々と言っている人がいたの。アナウンサーの人も、どんな妖精だったか?見た場所は?などと興味心身に聞いていたわ。いいなぁ。私も見てみたい。」

 真希が少し悔しそうに言った。

「あ、俺も一ヶ月ほど前に妖精っぽいのを見かけたよ。」

 真希の話を聞いた英司が急に思い出して言った。

「えぇ~どこで?」

「家の庭にある柿の木の下で。はじめはトンボかな?と思ったけど、金色に輝いていて。よく見ようと近づいたら、急に消えてしまった・・。でも、すごくきれいだったなぁ。そうだ、その妖精のおかげで美味しい柿の実がなるのだろうな。」

 英司は一人で納得するように言った。

「まさか英司が・・。」

 真希が本当に悔しそうに言ったので、三人は笑い出した。

「それにしてもアトランティスは楽しかったな。俺はアトランティス神殿で神々が集まる場所の気持ち良さが一番心に残っているよ。」

 英司は懐かしむように言った。

「あそこは本当に素敵だったわね。でも私はやっぱりシースーと仲良くなれた事が一番の思い出よ。」

 エリーは微笑んでいたが少し寂しそうな目をしていた。

「私は美味しい果物を食べたことかな。英司が見つけたスイカの様な果物は最高だったわね。あと、レムリア大陸にも行きたかったな。テレパシーも使えるし、いろんな人達と仲良くなれたと思わない?エリックに連れて行ってもらえば良かったわね。お父さんを一緒に捜せたかもしれないし・・。」

 真希はエリックの事を思い出して少し表情が暗くなった。

「エリックもおじいちゃんなのに、面白い人だったよな。少年の心のままというか・・。」

 英司もしんみりとした顔をしながら言った。

「この世界にはエリックのような人はなかなかいないだろうな。あ、エリックに年齢を聞いてなかった。七十歳くらいに見えたけど、もっと上かな?」

 ヒカルが言い終わると同時に四人はエリックのおどけた顔を思い出して、一斉に笑い出した。

「ねえ今、映像のテレパシーみたいじゃなかった?私、エリックが急に自己紹介をはじめた時の面白い顔を思い出したの。」

 真希が皆に確かめるように聞いた。

「私も!」

 エリーが興奮気味に言った。ヒカルと英司も笑いながらうなずいた。

「今まで意識していなかっただけで、テレパシーって案外簡単かもな。」

 英司が嬉しそうに言った。

「話は変わるけど、未来の日本で出会ったおじさんが言っていたように、私達はこの世界に貢献できるのかな?」

 エリーが少し不安げに聞いた。

「きっとできるわよ。根拠はないけど、できる気しかしないわ。」

 真希が笑いながら言った。

「ポジティブな真希には、いつも救われるわ。」

エリーも笑いだした。

「僕もできると思う。さっきオリハルコンと交流した時にそう思った。まだ、どんな事で貢献できるかはわからないけど。」

 ヒカルがエリーを見て微笑んだ。

「おいおい、二人だけの世界みたいだぞ!」

 英司がひやかす様に言ったのでヒカルとエリーは照れくさそうに笑った。

「でも、この世界が本当に素敵な所だと心から思える瞬間が増えたような気がするの。小さな幸せをより深く感じると言ったらいいのかな・・。これが、あのおじさんが言っていた常に喜びの中で生きるという事かな?」

 真希が穏やかな口調で言った。

「俺もそう思う。アトランティスや未来に行ってから、ささいな事にも感謝できるようになった気がする。もしかして悟りを開くのも近いかもな。」

 英司がにやけながら言った。

「あはは。英司が悟りをひらくなんて・・。」

 そう言って真希が大笑いした。

「俺は妖精も見えるんだぞ。」

 得意げに言った英司の口調に真希はムスッとしながら言った。

「悟りを開くことは負けないわよ。」

「おいおい、競争することかよ。」

 以前と変わらない二人のやり取りを、ヒカルとエリーは楽しそうに見つめていた。

「ヒカルはアトランティスで一番心に残っている事は何なの?」

 真希が話題を変えるように聞いた。

「そうだな・・。辛かった事だけど、レムリア人とアトランティス人の戦いかな。セスが言っていたけど、レムリアでは争いなんてなかったようだし、アトランティスの人々も戦いには慣れていなかったと思う。いくらテクノロジーが進歩しても、精神性が高くても起こることなのか・・と思うと、すごくショックだったな。だから、アトランティスとレムリア、お互いの良いところを大切にして、調和の取れた世界になってほしいと思うけど・・。」

「そうね・・。テクノロジーと精神性のバランスがとれて、より良くなるためには何が大切なのかな?」

 エリーが深刻な顔をしながら皆に聞いた。

「私の祖母は精神性が高かったと思うけど、テクノロジーも積極的に取り入れていたわ。メールのやりとりもしていたし。そして常に微笑んでいて、感謝を自然に表していたような気がする・・。」

「素敵な人だったのね。会いたかったな。」

「私もみんなに紹介したかったわ。」

 アトランティスでの戦いを思い出して暗くなっていた四人に微笑みが戻った。

「なぁ、俺たちはキャラが全然違うけど、仲良くなれたな?」

 英司が皆を見回した。

「そうね・・。私たちの共通点は同級生、オリハルコンを持っている・・。もっと根本的には人間として今ここに生きている事かな?そうそう、人間の未来は、あのおじさんのようになるのかな?過去や未来もなく、常に今、喜びの中で自分らしく生きる…みたいな感じ?」

 真希が皆に確かめるように言った。

「地球にいる人たちが、今ここに生きている事に喜びを感じると、すごく世界が変わると思わない?」

 エリーがキラキラした目をしながら言った。

「うん、そう思う。無意識に不満や愚痴を言ったり、まだ起こってない事なのに悪い方に考えてしまう人が多い気がするなぁ。」

 ヒカルがエリーに同調するように言った。

「真希と正反対のような人だろ?」

 英司がにやけながらいった。

「そう、そう。」

 エリーも笑いながら大きくうなずいた。

「じゃあ私たちに今できる事って、自分の喜びに意識を向けておく事かな?」

 真希は言い終わると満面の笑みで皆を見つめた。

「人それぞれ喜びが違うから、面白いのよね。」

 エリーが優しく微笑んで皆を見ながら言った。

「あのおじさんのように生きる事が幸せかどうかは分からないけど、いまよりも穏やかな世界になると思う。」

 ヒカルは確信するように言った。

「もう、その世界は始まっているわね。」

 真希も自信をもって言った。

「え?どこで?」

 英司が身を乗り出した。

「今、ここに決まっているでしょ!」


 微笑みあった四人の目は、オリハルコンのように輝いていた。


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