崩壊
前回。本気を出したロゼの攻撃を、【魔法反射】で跳ね返しロゼを倒したカルテは、血を奪いその場から消える。一方。【セリアリンク】が発動し、目を覚ましたロゼは暴走する。
世界はなぜ、災害を与えるのか
命はなぜ絶えるのか
人はなぜ悪意を持つのか
ピンチは何故訪れるのか
「幸福なだけで良いじゃないか」
無論。そんな理想は存在しない。
意味は一つ。対価だ。
幸福な環境や人生には対価が存在する。
才能を持ちながら、人と距離を空けダラダラと生きて来た。
一体何度、チャンスを棒に振るった?
…これは対価だ
「###################」
聞き馴染みのない声が頭を走る。
もう…大切な人は死んで欲しくない。
でも……大切な人は…
神はなぜ、後悔という感情を与えたのだろう。
吹き荒れる大地は音を枯らし、前進する事を拒む。
ただ、ただ…悔しい
本気を出すタイミングを見誤った。
手を抜いた。
どうせこいつは、俺に勝てないと思い込んでいた。
唸る喉は唾を飲み込み、気配を察知する
もう手加減は辞めだ
「###################」
振り返ると、剣を持った金髪の男がこちらを伺っていた。初めて見る顔。…その情報だけで良いのではないか?この考えこそ…
「#######!」
「?!」
マナを尖らせ、風をぶつける。
音速を超えた空気の振動は、地面を抉る。
「あっぶね?!?!」
「##?」
自分ですら驚いた魔法を焦りながら避けた男は、いつの間にか背後にいた。
-----------------------
「君?ロゼくんだね?聞いてたイメージとは違うけど?!?!」
▶︎【光の勇者】ライト
突然の攻撃に焦りつつ、会話を投げ付ける。暴走者を相手にするのは、これで三回目だが……
(んだそれ?!?!)
【動作短縮】で振り向きと魔法詠唱を飛ばし、【時間短縮】で魔法発動と着弾時間を飛ばす。
「ぐ?!」
防御が間に合わず、吹き飛ばされる。遅れてくる音と衝撃波が身体を揺らし、あまりの突風に目を閉じた。
「…やるね……ココ最近で1番強いよ。君!」
「######」
「って…聞こえてないか。」
「###」
「っすぅぅ!!!【光の勇者】!!ライト!!!増援遅れて申し訳ない!!これより後方の敵は一掃した!!君も逃げることを最優先に…」
瞬間。風が足を切り裂き地面がえぐれる。
「っ…?!」
「####」
「あの……話してんすけど…」
(ソニックブーム…【動作短縮】【時間短縮】風魔法、ここまで相性の良い条件が揃うと厄介……)
「######」
「?!」
(目に見えない攻撃…動作…速さにおいて……)
喋りだしと同時に【光速】で横に逃げる。かすった風は頬を切り裂き、肉を抉る。
「ぐっ?!」
(俺より早い……)
「##?」
「これは…舐めてちゃ死ぬね…」
【光速】を発動し、振り向きに合わせ背後に回る。再度【光速】で距離を詰める。
「悪いが眠ってもらう!!」
「#?」
剣を振るい、首裏目掛けて峰打ちを
パンッ!!!!!!
「なっ?!」
触れる手前、剣が何かと衝突し壊れた。距離を取り目を薄める。
「…バリア持ちか!!」
地面に転がる石を数個拾い、加速。投げた石は【光速】を纏い、バリアを一撃で破壊する。
「バリアの核にダメージ与えればぶっ壊れるよな!!!」
「###?!?!」
足を浮かされたロゼは、腕を捕まれる
「【能力無効】。君はもうスキルは使えないよ!!」
「########!!」
「?!」
(動かない?!?!)
地面から離れない左足は地面を踏み込む。
「あれ…?捕まったの……俺??」
「#######」
「なら!!」
ロゼに捕まったまま、【光速】で移動する
「?!?!」
「1人じゃ分が悪いから!!助けてもらおうかな!」
「?!な!なに?!(動揺)」
▶︎【勇者学校特待生】リーラ
突然の出現に焦る女性はロゼを目にしほっとする。
「あ、ロゼ……さん(安堵)」
「すまない君!!足だけでも治してくれるかな?!」
「え!(驚き)はい!(回復)……?回復…で、出来ない、です(疑問)」
「うん!!【能力無効】解除するから待ってね!!……」
(回復にどれほど掛かるか分からない…解除中にまたさっきの攻撃をされたら…この距離で避けれるか…?)
「######!!!!」
「ぐ?!」
「?!……?!なにこの声(戸惑い)」
強くなる力はライトを吹き飛ばし距離をとる。
「まずい?!回復を!!!!」
「?!はい!(焦り)」
「#########」
「?!」
(ダメだ!!タイミングが遅い!!)
足に地面が着く前にロゼが放った風魔法は、ライトの胴体を切り刻んだ。
「……?!」
筈だった。
「…あいつは味方じゃないのか?」
▶︎【剣の勇者】ノア
弾かれた魔法は地面を抉り消滅する
「ノアさん!!っつ…」
「後輩がここまでやられるとは…」
パンッ!!!!!!
「…?容赦がないな?」
撃ち込まれた魔法を再度叩き落としたノアは、ロゼの目を見る。
「…お前も同じか?」
「###?」
「…ノアさん!!手を抜いたら死にますよ…恐らく1thランクはあるかと……」
パンッ!!!!!!!!!!!
「?!なっ?!」
「余所見をするな後輩」
ライトの顔の前に伸びる剣先は静かに光る。
「…ジンさん思い出す迫力だな……」
「ジンの方が1枚上手だ。実力有りだが暴走しているなら…」
足を踏み込んだノアは、ロゼを睨み動き出した。
パンッ!!!!!!!!
「畳み掛ける」
動き出しに合わせた魔法を弾き飛ばし、加速する。風魔法。見えなければ感じればいい。見て動く反射神経より、空気の波を感じて動く脊髄反射の方が早い
-----------------------
「######?!?!」
(なんだよそれ?!?!)
ソニックブームすら起こす目に見えない魔法を、全て弾き飛ばしながら距離を詰める男にロゼは焦る。
「#######!!!」
(ありえないだろ!!!)
風を纏め球体を作ると同時に放ち爆発で距離を
パンッ!!!!!!!!
「#?」
(は?)
放つ前に、ノアの投げた剣が魔法を絶った。瞬時に剣を内側にバリアを展開し、防御を…
バリンッ!!!!!!
「?!」
「はっ!!それはもう見てんだよ!!」
「ナイスアシストだ。ライト」
剣を掴んだノアは………
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「…あれ……」
頭が痛い。体が重たく薄ら目を開けると、目の前にのぞき込む薄緑色の髪をした女性が頭を触る。
「…あの?」
「…起きたね。おはよう。寒くない?」
▶︎【回復の勇者】ヒーリェ
「……はい。なにか…物凄く怖い夢を見ていたような……。…ここは?」
当たりを見渡すと、多くの兵士が座り込んでいた。
空は眩しいほどの快晴。太陽が差し込む大地は、マナが溢れていた。
「前線から離れた集合地点だよ。みんな戻って来てる。」
「…魔王軍との戦いは?」
「…勝ったよ。ありがとう。君たちのおかげだね。」
「…」
酷く…心が沈む。
戦いには勝った。
俺は生き残った。
……でも
「ほんっっっっとに馬鹿!!!!!!!!」
「?!」
突如、すぐ近くから聞き馴染みのない声が聞こえた。反射的に振り向くと、薄ピンク髪をした女性が怒っていた。
「体力を消費してマナを使うなんて!!もうあんな無茶はしないで!!!!!」
▶︎【勇者学校特待生】アリシア
見覚えのある顔に生きていたのか…とただそれだけでも……
「ほんとにごめんね!!」
「……え?」
聞き馴染みのある声に、体が震えた
「でもまだ余裕が残ってたんだけどな?!なんでだろ!!次は気を付けるよ!!だから泣かないで!」
「うるさい泣いてない!!!!」
そんな訳ないと。そんなはずないと。恐る恐る振り向いたその先に。
薄水色の髪を靡かせる女の子が満面の笑顔で笑っていた。
「泣いてるじゃん!!」
▶︎【勇者学校特待生】セリア
「…セリア」
「?大丈夫??」
「セリア」
体が勝手に前に動く。
本能的に、無意識に、……ただ純粋に、彼女の傍に居たいという思いが…身体を動かす。
「セリア」
「?!ふぁ?!なに?!?!」
「……無事…で…良かった」
「!うん!!君も!!お互い頑張ったね?!」
焦る彼女の姿は、とても可愛らしくて心が落ち着
「ところで君は?お名前は何かな?!」
「……え」
「ぁあ!ごめんね?!失礼だよね?!私の名前覚えてくれてるのに!!私が覚えてないなんてさ?!」
「……【セリアリンク】の…効果って……」
「?!なんで?!?!それ知ってるの?!」
「…教えて欲しい」
頭が上手く回らない。理由があるなら知りたい。何故彼女から記憶が消えたのか
「えと…まぁ!使う事はないと思うけど!!付与した人は1度だけ!死んでも生き返らせるって感じかな!!」
「……デメリットは…」
「…えっと…私が…発動者の記憶を失うって…感じで……で!でもさ?!命大切だし!!私がそれを付与するなんて!!ほんとに大好きな人にしかしないから!!大丈夫だよ!!!」
「…」
生まれて初めて、【矛盾感知】が発動する事を願った。頭が真っ白になる感覚というのはこの事なのだろう。
……与えられてばっかりで…悔しい
ずるいよ。僕だって、セリアに何か………。
何か……
「えっと…あの?大丈夫?!」
「…僕の名前はロゼだよ。セリア。」
また…最初からでも構わない。
「もし良かったら、僕と友達になって欲しい。」
「!!え?!いいよ?!?!よろしくね?!ロゼくん!!」
「…ありがとう」
これでいい。
セリアが僕にしてくれたように。
僕もセリアに。心の底から思ったことをやってみようと思う。それが君への。1番の恩返しだと思うから。
「あと、君が好きだ。セリア」
「…え?!?!?!?!そういうのは!!まだ!!!早いかと!!!」
新しい自分をセリアをもっと好きになる為に
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現在【勇者学校】
「でさ!!ホープラスくんとヴァートくんがロゼくん倒したんだって!!!」
「うん。聞いたよ何回も」
「凄いよね!!!あっ!!!ロゼくんだ!!おはよう!!!!」
「はぁぁぁ!!!セリア!!!!だめだ!!!ここは公共の場だぞ!!!」
「崩壊」
~完~
本編「世代の勇者」でも、2人はまだまだ登場します!!今後の活躍に期待ですね!!!ではでは!!さらば!!!
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