そんな君に
前回、やたらとしつこい薄水色の少女「セリア」に懐かれたロゼは、第三魔王軍前線地帯に駆り出されることとなる。風の魔法を操り、多くの魔王軍を蹴散らすロゼだったが、魔王軍幹部見習い3rdランクの「カルテ」と対面する
「……(なんだ…身体が…)」
少しずつ近付いてくるカルテは、辺りを見渡しため息を吐いた。
「…はぁ。こんだけいて少年1人も倒せないなんてな。毎回毎回…魔王軍と勇者軍の戦力差に絶望するよ」
死体の前に屈み血を触る。ドロドロとした血を舐めて、再び立ち上がる。
「…なぁ少年。俺達の仲間にならないか?」
「…?!」
「お前なら、俺の弟子にしてやる。見た所雑魚じゃ無さそうだしな。」
「…こ……とわ…る…」
「お?喋れるのか。…で?よく聞こえなかったが…」
人差し指を向けられた瞬間。ロゼの左肩に血液の針が突き刺さった。
「?!?!」
「仲間になるのかならないのか…さっさと決めろ」
光のない瞳に睨まれながら、ロゼはマナを体に纏い深呼吸した。
「……ならない」
「…動けるのか?…尚更欲しい…」
「違うな。俺じゃなく、俺の血が欲しいんだろ?」
「!!」
「[血液操作]…第三魔王軍の下っ端に1人居た。お前は幹部見習いのカルテだな?スキルは…[血飲]生き物の血を取り入れる事で、その者の力を取り入れる能力。」
「…情報通だな。勉強が好きなのか?」
「1度見たら覚えられる」
「!!はは?!なんて魅力的な身体なんだ?!聞けば聞くほど才能の塊だな!!!」
「あぁ。その才能にお前は負けるんだ」
「…ふ…だったら残念だな。」
「…」
「お前はとっくに終わってんだよ…」
「…?!」
[矛盾感知]が発動しない事を理解したロゼは、カルテの全体を注意深く見た。モーション、筋肉の動き、呼吸。いずれも攻撃の気配はない。
「……」
[なんだ?何が…]
瞬間。
パンッ!!!!!!!
「ぐ?!?!」
ロゼの左肩が破裂し、左腕が地面に落ちた。流れる血液はドバドバと吹き出て、歯を食いしばり下を向く。
「はぁ"!!はあ"!!!!」
「[血液操作]の発動条件。お前は知らなかったのか?」
「…ぅ"……ぐ?!な…?!?!」
(痛い…熱い…ヤバい…)
「…会話にならんな。痛みを断ち切ることの出来る者はいない。…発動条件は、【触れた血液の操作】だ。簡単だろう?」
「……はあ"はあ"…触れた……血液…。なるほどな…」
「ほぉ?」
「初撃…の血液に……はぁ…自身の皮膚をくっつけたまま…飛ばした訳だ……」
「…ふ…お前…」
「……」
「スキルを複数所持しているな?」
「…知らないな。ん…なぜそう思う?」
「…」
カルテは自身の右手の人差し指を足から頭に掛けて指さした。
「警戒の速度が早すぎる」
「……俺が信じやすいだけかもな…」
「それは無いだろう」
「…」
「この戦場で単独行動。強さを見れば納得はするが、人を信頼出来る性格なら、コンビネーションを選ぶはずだ。」
「俺の強さに並ぶ奴が居なかっただけだ」
「言い訳だな。本当の強者なら戦場に足でまといを作らない。例えば…俺みたいにな。」
右手を上げ、歩いてきた地面の血液が一点に集まる。
「仲間の死は、俺の強さに変わる」
「…させるk「…諦めろ」
瞬間。地面から血の棘が左足を貫き、ふくらはぎを抉る。あまりの衝撃に、膝から崩れ落ちた。
「ガ?!?!?!」
「その重症じゃ助からん」
「…どうかな?」
「……減らず口の者は多くいたが、ここまでなのは珍しいな」
「その分…実力があるんだよ」
右手を開き、ロゼは緑色のマナを掴んだ。
「[マナリンク][完全回復]」
「?!回復も持ってるのか?!?!」
左足は穴が塞がり、ロゼはゆっくり立ち上がる。
「[完全回復]…流石に腕は再生しないようだな」
「不憫な事にな…どうせ奪われたらバレれんだ。全部の力を出してやるよ…」
「ほぉ?早めに倒さないとだn「[矛盾感知][完全回復/維持/][データ/維持/][時間短縮][動作短縮][マナリンク/付与/][バリアリンク/付与/][体力吸収]」
「……は?」
「[セリア]」
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昨日-出撃準備前
薄水色の髪をした少女は、顔をムッとして叫んだ
「どうしてダメなの!!」
「…1人の方が気楽で良いから」
「んんん!!!…ふふん!!なら!そんな君にこれを付与しよう!!」
背中を撫でられたロゼは、びっくりする
「?!何…」
「範囲無制限の、[セリアリンク]だよ!!」
「……何それ…」
「最近私が完成させたの!!マナリンクを使える人のみの、遠距離援護!!」
「…だから何それ……」
「良いから良いから!!危ない時に私の名前を呼んで!!!きっと役に立つからさ!!」
「……」
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身体に薄水色の光が降りる。驚いているカルテを視界に入れると、空気に鋭さが付き、カルテの右手を吹き飛ばした。
「が?!?!?!?!」
「…ん?【矛盾】だな」
「お前…何を……」
「痛めつけるのは好きなのに、痛いのは嫌なのか?」
血液の球体は地面に落ち、破裂した。
「ぐ?!?![時間短縮]と[動作短縮]か…」
「ご名答」
首を鳴らすロゼは、汗をかくカルテを睨み、小さく囁いた。
「お前の力じゃ…俺の才能には届かない」
ロゼ▶︎2ndランク
次回「勇者学校トップ[ロゼ]」
ご覧頂きありがとうございました。
ここだけの話。「世代の勇者」の主人公ポジションは、5人なんですよね~。
本編▶︎ヴァート
初期案▶︎ゼロ
勇者内▶︎ノア
召喚▶︎春風 雪
勇者学校▶︎ロゼ
となっております。
今後、本編「世代の勇者」にて、ロゼはどのような活躍をするのか。お楽しみに。
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