初めての人だから
本編「世代の勇者」に登場するキャラクターの連載小説です。勇者学校特待生TOP[ロゼ]。彼の人生のレールは、どう変化したのか。
川辺を眺めながら、魚を見つける。
「あっ…跳ねた」
オレンジ色に沈む太陽が大地を照らして、森の逆光が目に映る。
「何してるの?」
「……」
「ねぇ?何してるのってば!」
「…?」
「だ〜か〜ら〜!!君だよ!!ねぇ?魚好きなの?」
「…別に…。好きでも嫌いでもない…ってかお前誰?」
振り向くと、薄水色の髪を靡かせる笑顔の女の子が満面の笑顔で立っていた。
「セリアだよ?…君は??」
「……ふん。」
「えぇ?!何で!!私教えたよ?!?!」
「……」
[何だ?この人]
「初めての人だから」
毎日毎日退屈な日々。スキルを授かり、魔法学校に通い、バリアも扱い、剣術にも精通してしまった僕は、技量の代わりに大切な物が欠けてしまった。
「ロゼ先輩!!ぁの!!付き合って下さい!!!」
「…ごめんね。今そんな気分じゃないから…」
[どーせこいつも名誉狙いだろ]
「流石は期待の星!!勇者になるのも夢じゃないんじゃないか!!」
「あはは…そんな事…」
[戦ったことも無い雑魚が…勇者様を語るな]
「ロゼは自慢の息子だわ〜!!」
「そうだな!!どうだ?将来の夢とかあるか?」
「…ごめんなさい。まだ決まってなくて…」
[…望まれて産まれた訳じゃない…ただ偶然…僕が優秀だったから捨てなかっただけ]
「ねぇねぇ?名前教えてよ〜」
「…しつこい」
「!じゃあ名前教えて?」
「うるさい」
「…そっか。あ!魚跳ねたよ!今のは"アーア"だね」
「…?何?」
「ん?名前だよ!!今のがアーアで、隣がイーイ!!その隣がエーエで、隠れてるのがオーオ!」
「…安直だね…。ウーウは?」
「ん〜?今日は見当たらないね〜。もしかしたら…寝てるのかも…」
「…」
変な人だな…っと…ただそれだけ。
毎日毎日。ポケーっとする僕に話しかけて来る彼女の目は、…話し方も…てか全部。なんかこう…[知りたい]って感じで……不思議な感じだった。
「…何が目的なの?」
「!!名前!!!」
「…変なやつ」
「ぇえ?!…嫌だった?」
「別に…」
「!!なら良かった!!」
「……」
人間みんな…必ず裏がある。言葉を理解出来るようになった時から…僕は信用しないと決めた。
「……鬱陶しいから話しかけないでくれ」
「!!…ごめん。」
「…」
これで良い。どーせ裏切られるなら…関わらないのが一番だ。
…他人を信用する奴はみんな…暖かい環境で生きて来ただけの人間。分かり合える訳ない。
虐待、孤児、いじめ。そう言った過去を持つ人は…結構いる。僕はまぁ…特殊な事例だけど。
「……今日も魚は居ないのか」
魔法学校卒業。当時19歳だった。…彼女とはあれから出会っていない。…退屈な日々。でも悪いわけじゃない。元々一人は好きだし、人が居ると疑ってしまうから、こっちの方が気が…
「…またいた!!!」
「…?誰?」
「セリアだよ!!教えたでしょ??」
「…何。」
「!隣良い?」
「別に」
「やった!」
彼女は嬉しそうに隣に座った。足をパタパタさせながら囁く。
「…勇者学校行くんでしょ?ロゼ君」
「…!名前…てかなんで…」
「え〜?私も今日卒業したし!何なら席隣だったし!」
「…」
「本当に興味無かったんだね…ちょっとショックだな〜…ははは…はぁ…。うん。少し話したくて。」
「…何?」
「…私も勇者学校行くから!友達になりませんか?」
「…ごめん。無理だ。俺は友達出来たことないし…まず信用出来ないし。絶対他の人の方が…」
「お願いします!!私も友達出来たことなくて!!!」
「…え?!嘘??」
「本当だよ!!…空被るって言うか…距離感バグってて…気付いたら除け者にされてたって言うか…。私…いじめられてたし。」
--------------------------
「気持ち悪い」「キモい」「偽善者」「あざとい」「空気読めない」「男垂らし」「自作天然」「キャラキモい」「不快」「目障り」「死ねよ」
「鬱陶しい」
--------------------------
「私が近づいても…嫌われちゃうから…でも!!私はみんなと仲良くなりたいの!!だから……この前はごめんなさい!!」
「いや…こっちが悪かった。ごめん。…何も知らなかったから…本当にごめん。」
「じゃあ!!!」
「これとそれとは話が別!!!…何で俺なの?」
「…ロゼ君はいじめてこなかったから!!」
「…それだけ?」
「うん!!」
「…やっぱり変な奴だ。」
「でも嫌いじゃないんでしょ?」
「…好きでもないけどね…。…君の事が嫌いだから友達にならないわけじゃないんだ。…俺自身の問題で…」
「?セリアだよ??」
「…?」
「名前!!」
「…はぁ……」
本当に…不思議な人だ。
____________________
「風靡く桜の舞。暖かい大気が体温を上げるこの頃。我々勇者学校生徒は…」
「ねぇ!!ロゼ君って代表だったんだね!!やっぱり凄いなぁ〜」
「…別に。と言うか近い。離れて」
「…ごめん」
「…はぁぁ…まぁ。落ち着くなら別に…」
「!…?ロゼ君って不思議だよね」
「?何それ」
「だってさ?私の事嫌いにならないでしょ?」
「…好きでもないけどね」
「うん。そこが好き。…興味ないのに…話してくれるロゼ君が大好き。」
「…本当に変な人だな…」
「またそれ?!…ぅ…私はただ!!思ってる事を言ってるだけで…」
「…まぁそれは…ただ単純に…凄い事だと思うけど」
「…!!本当?!?!」
「うん」
本当に…凄いと思う。
今更だけど僕の有するスキルの一つは[矛盾感知]と言う物だ。その名の通り、自分に対して起こる[矛盾]を感知出来る。だからこそ…信じられなくなった。……
でも
「…君だけは…スキルが反応しないんだ」
ベットに倒れて、右手を挙げ握る。
「本当に…心の底から思った事を…やりたい事をしてるだけ。」
なんて…魅力的なんだろう
____________________
「セリア、ロゼ、キザ、アリシア、ガード、キリス、リーラ。以上7名は…次行われる第三魔王軍との最前線に召集する。…一応…大切な人への手紙でも書いていろ。…生きて戻れよ…」
____________________
勇者学校校庭。裏口前。
「…最前線…」
「おいロゼ!!ま〜たボ〜ッとしてんのか?」
「…誰?」
「ガードだよ!!!同じ最前線召集者!!…大丈夫か?」
「…わからない」
「…まっ。そうだよな。」
「君も。分からないの?」
「…いや?。…ただただ怖いって気持ちが大きいな。…死にたくないし…誰にも死んで欲しくない」
「…じゃあ。勇者を目指すなんてやめたら?」
「…かもな。」
「…ごめん。怒ると思ったんだけど。」
「なんでだよ」
「…だって…夢を汚した。」
「…はっ!お前もそんな事考えるんだな!…取り敢えずは…生きて戻れよ。特待生で一番強いのはお前なんだから。…俺達に光を見せてくれ。」
____________________
…ぁあ。…これが…戦争か
絶え間無い叫び。汚染されたマナ。崩壊する自然。…脳に響く…矛盾。
「なんでみんな…嫌がりながら戦うんだろう」
…なんでみんな…辛そうに死ぬんだろう
「選んだんでしょ?」
「自分で…」
「やっぱりみんな嘘つきだ…」
矛盾がないと…生きて行けないのが人間なんだ。
「…君達も…なんで戦うの?」
「はあ?殺したいからに決まってんだろ!!」
「…じゃなんで死にたくないの?」
左手を翳して、魔法を発動する。まち針の様な薄い風の斬撃が魔人の身体を4等分に裂き、そのまま流れる様に5000以上の魔人を殺す。
「…なんでみんな戦うんだろう。」
「…面白そうなのが居るな?」
「?ごめん。殺せなかった。次は必ず…」
「は?」
「…?」
「誰に口聞いてんだ?」
→第三魔王軍幹部見習い[カルテ]3rdランク
空気が重くなり、身体が動かなくなる。
ゆっくり歩く魔神は、笑いながらロゼへと近づいた。
「お前はどっちだ?生きるか…死ぬか…」
次回「そんな君に」
ご覧頂きありがとうございます。本編にて、ヴァートとホープラスに瞬殺されたロゼ君ですが…うん。実際めちゃくちゃ強いです。これはキザも言ってましたね。魔法、剣術、スキル、バリア。全てを扱える彼は、今度どうストーリーに関係するのか。
ご覧頂きありがとうございます。いいねと感想。ブックマーク登録も是非是非!!それでは!