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8話 趣味の悪い目覚まし


「確認が終わったな。それでは拠点の説明に入る。ついて来い」

「拠点?」

「ああ、拠点だ。このギルドは活動拠点が併設されている。ここまでの道中で見かけただろう?」


 ベッドがいくつかあった部屋のことかな? あれは来客用の寝具かと思ったけど、なるほど活動拠点になっているのか。ぱっと見はシンプルな空間に見えたけど、野宿よりははるかに快適だろうね。


「さ、今日からこの先の部屋がお前たちの活動拠点となる」


 目の前には木の板を立てかけただけにしか見えない扉があった。その扉からなんとなくヒナタは部屋の中を想像し少し肩を落とした。きっと中は荒れているのだろう。

 意を決して扉を開けヒナタたちは中を確認した。扉の先にあったその部屋は土壁をくり抜いただけの広い空間に干し草で作られたベッドが2台置かれているだけのシンプルな部屋である。

 それ以外何も無いが荒れてもいない。想像以上の部屋に思わずヒナタはペングルを振り返った。


「ここについては基本的に好きに変えてもらって構わない。ガオンなんかはオーディオを運び入れていたな」

「オーディオを?」

「ああ、たまに音楽が鳴っているのが私の部屋にも聞こえてくるよ。……趣味はまるで合わないがね」


 なるほど、つまり自由にカスタムして良いってことだな。オーディオがあるなら他にも家具があるのかもしれない。別に部屋にこだわりは無いけど、どうせ寝泊まりするなら綺麗なところが良いからね。


「今日はもう遅い。今日のところはもう寝て明日の朝から冒険隊活動を始めるといい。……そうだこれを渡しておこう」


 そう言うとペングルはどこからか時計のようなものを取り出した。ペンギンがあしらわれたデザインのそれは少しヒナタの趣味には合わなかった。

 が、笑顔で差し出されるその時計を拒む訳にはいかない。ヒナタはぎこちない笑みを浮かべながらもそれを受け取った。


「……これは?」

「私の愛用している目覚まし時計だよ。遠慮せず使うと良い」

「……あ、ありがとう」

「基本的に活動内容に制限は無いが、毎朝の朝礼には参加してもらう。……決して寝過ごさないように」


 毎朝朝礼があるのか。活動に制限は無いが、朝寝坊はするなと言うことだな。……実際に寝る訳じゃないから寝坊の心配は無いだろう。面倒な習慣だけど所属した以上は守らないとね。……スピーチとかはさすがにしなくて良いよね。


 ヒナタが要らぬ心配をしているとアクアは眠そうにあくびをしながら干し草のベッドに潜り込んだ。どうやら少し疲れたようだ。


「俺もう疲れたよ。先に寝るな」

「そうか、おやすみ」

「おやすみ、ヒナタ」


 実際に寝る訳じゃあ無いんだけど、こうやっておやすみって言ってもらうのも良いものだね。ええと、時計は……ここかな。

 ……置いただけで特に操作は出来ないのか。まあ、何時に朝礼があるのか知らないから操作出来ても何にも出来ないけどね。

 それじゃあ俺も寝るとしますか。おやすみ、アクア。


tips:

グッズ

モンスターたちからもらったり、ショップで買うことができる。これを使って自由に拠点の模様替えができる。

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