7話 パーティ名は……
……気になるな。とりあえずついていこうか。階段を降りて……、この階は宿泊部屋かな? ベッドが何個か見える。……まだ降りるのか。この建物って案外広いんだな。地下にこんなに部屋が続いているなんてね。
……お、止まった。ここがトップのいる部屋か。なるほど、特別豪華って訳じゃないが、広い部屋だ。
ペングルの案内でやって来たその部屋は1匹のモンスターが使うにはかなり広く、ゆったりとした空間が広がっていた。そしてその空間の奥には確かな風格と鋭い威圧感を放つ九尾の狐が座ってこちらを見ていたのだ。このモンスターがトップだ。それは一目で分かった。
「トップ、入隊希望者が参りました」
「ふむ、……君たちが入隊希望者か」
「ああ、ここに来れば冒険家になれると聞いてな」
ヒナタの横でペングルが慌てた表情である。なにかまずいことでもあったのだろうか。だがヒナタはそれを知らないのだから仕方がないのだ。
「おいっ! お前たち口の聞き方が……」
「良い良い。威勢が良いのは良いことだ。……さて、まずは名前を聞いておこう。君たちの名前を教えてくれ」
「……ヒナタだ」
「アクア……です」
「ヒナタとアクアだな。君たちはそこの2人でパーティを組むのか?」
「……そうだな」
「パーティの名前は決まっているのか?」
……名前? パーティの名前なんて考えてなかったぞ。……アクアは、明らかに俺に任せたって表情じゃねぇか。
参ったな。アクアには文句は言わせないが、俺が文句を言いそうだ。すぐにそんないい感じの名前は浮かばないな。
……デフォルトはハンターズか。トレジャーハンターの複数形ってことだな。まあ、これはやめておこう。……ええと、文字数制限は……6文字か。6文字ならあれがちょうど6文字だな。よし、決めた。
「パーティの名前は……“ユグドラシル“だ」
「……なるほど、良い名前だ。それではユグドラシルの登録を認めよう。ヒナタとアクアよ、これからこのキュビクスのギルドの一員として頑張ってくれたまえ」
そう言うとトップは細い目を更に細くし、朗らかに笑ってどこからかカバンを取り出した。促されるままそのカバンを開けるとその中には一枚のカードと地図のようなものが描かれた巻物、そしてアメジストがあしらわれた指輪が入っていた。いったいこれはなんなのだろうか。
ヒナタが不思議に思って首を傾げているとペングルがゆったりとした足取りでこちらへ近づいて来た。どうやら何か知っているらしい。
「……これは?」
「順に説明しよう。まずそれは冒険隊カードだ。冒険隊としてのランクや次ランクまでの必要評価数が書かれているほか、緊急用の脱出ポータルの役目も担っている。次にその地図だ。名前をワンダー・マップといい行ったことのある場所ならば位置を確認することが出来る不思議な地図だ。そしてその指輪だ。装飾品の一種で装備すれば闇属性のスキルの威力を底上げしてくれる便利なものだ。最後にそのカバン。探索時に手に入るを持ち帰ったり持ち歩いたり出来る。収納数には限界があるがな。……どれも貴重な品々。決して無くすことの無いように、探索の時には気をつけるのだ。脱出ポータルはカバンの中身の保証まではしてくれないからな」
tips:
トップ
主人公たちのギルドの長。コードネームはトップ。ギルドの長となってからコードネームがトップへと変わったため別にコードネームが存在しているらしい。