72話 遭遇は少なめを希望
ヒナタたちが降り立ったのは9マスほどしかない狭いフロアである。そして四方に通路が伸びているのだ。これはすなわちこの階層には小さいフロアが極端に多いことを指し、階段にたどり着くのにかなり時間がかかることを意味していた。
それだけではない。フロアの大きさが小さければ小さいほど、階層における通路の割合は増えるのである。従ってこれまでよりもずっと通路内での遭遇の危険性は上がっているのだ。まだまだヒナタたちだけでは安定してモンスターを倒すことができない。いかにして通路内での遭遇を減らすかが、この階層を乗り越える鍵となるのだ。
そして不運なことに通路内に足を踏み入れて僅か 3歩でヒナタは前方にモンスターの姿を見つけてしまったのだ。そのモンスターはこちらを向いており、気付かれないようにやり過ごすことは最早不可能である。戦うしか選択肢は残されていない。
……あれはマチルドだな。なるべく通路内での遭遇はしたくなかったんだけど、さっそく遭遇しちゃったか。
距離としては一マスしか離れてない。……確かアクアと位置を入れ替えるだけでターンが経過するんだよな。マチルドはアビスとかいうすんごい威力のスキルがある。一発だけならアクアがバブルスキンをすれば何とか耐えることは出来る。連発されればなす術はない。
……まだ連発されたことはないけど、連発されたらその瞬間アクアが力尽きるんだよな。となると、なるべくターンをかけたくない。ええと、……とがった石以外の飛び道具は無いか。ならどうなってもとがった石を2回投げることには変わりないな。
『ヒナタはとがった石を投げた マチルドに20のダメージ』
『ヒナタはとがった石を投げた マチルドに20のダメージ』
『マチルドを倒した 経験値を112手に入れた』
よし、倒せたな。新しく敵モンスターが来る前にさっさと通路を抜けてしまおう。……多分この階層は雰囲気的にフロアの数がかなり多い。その中でひとつだけある階段を見つけるってのは中々難しいよな。……実は最初のフロアの隣に階段があるなんてことないよな? それが一番不安だよ。お、あそこにお金が落ちてるな。
『ヒナタは74G拾った』
うん、お金は嬉しいね。あと嬉しいのはとがった石なんだけど、そう都合よく落ちてはないよな。……あと3個しかないからな。1回の戦闘で2個使っちゃうことを考えると、2回以上通路内で遭遇はしたくない。……まあ、これは運だな。日頃の行いが良ければ遭遇はしない。
……って思ってたら遭遇するんだよな。これ多分敵モンスターだよね? こんなに早いことある?
tips:
敵モンスターの視界はプレイヤーと差がない。故に視界の中のモンスターには気付かれていることが多いのだ。




