6話 ペングルを探せ
「……ええと、あんたたちこのギルドに所属しているのか?」
「……そうだが」
「俺たちギルドに登録したくて」
「なんだ、冒険隊志望か。それならこのギルドを入ってまっすぐ行ったところにいるペングルに話しかけると良いぜ」
「ペングル?」
「ああ、俺たちがヒショって呼んでる奴だ。一番偉そうにしている奴だからよ、すぐに分かるぜ」
そう言ってその大きな口のモンスターはにっこり笑うとアフロのモンスターのところへ戻っていった。存外良い奴のようだ。
「……よく緊張しないね」
「緊張?」
「あのオオクライはこの近くで良く見かける冒険家だよ。だからあのモンスターに聞けばすぐにギルドのことは分かる。……ただ、顔がおっかないから緊張して中々声が掛けられなかったんだよ。……案外良いモンスターなのかもな」
なるほど。確かに俺もゲームじゃなくて実際なら絶対声はかけないな。その気持ちは分からなくもない。でも話しかけないと分からないことも多いからね。現にこれでギルドに登録するにはどうすれば良いか分かった訳だ。……ペングルってのが何なのかちっとも分からないが。
「ペングルというのは……モンスターか?」
「そうだよ」
「ちなみにキュビクスは?」
「それもモンスターだね」
ん? キュビクスもモンスターなのか。一番偉そうにしているからてっきり一番トップのモンスターがそのペングルかと思ったよ。……だとすると探すのはちょっと大変かもしれないな。ま、入れば分かるか。
ヒナタとアクアは冒険隊ギルドの扉を開けて中へ入った。当然だが中には何匹かのモンスターがいる。先程のオオクライと似た雰囲気を感じるのはきっと彼らが皆冒険隊であるからに違いない。
……偉そうなモンスターはいないかな。何匹かモンスターがいるけど、特に偉そうには思えない。こういう時に一番偉そうって言われるモンスターならもっと分かりやすく偉そうなはずだ。……となるとフロアを移動しないといけないかな。奥の階段を下がっ……誰か上がってくる?
なるほど、多分このモンスターがペングルだな。
ヒナタの目にはちょうど奥の階段を上がってきた眼鏡をかけたペンギンのモンスターが映っていた。顎を上げこちらを品定めするかのように見回すその姿は偉そうと言って差し支えない。間違いなくこのモンスターがペングルである。
「……見ない顔だな。このギルドに何の用だ?」
「俺たちギルドに登録したくて」
「……ほう、それでわざわざこのギルドへ来たのか。何もこのギルドでなくても良いだろうに」
「……何か問題が?」
「気にするな、こちらの話だ。……さて、登録だったな。トップのところへ行くぞ。ついて来い」
tips:
ヒショ
キュビクスのギルドに所属するペングル。いつも偉そうな態度をとっている。コードネームはヒショ。理由はさほど良いものではないが、本人は割と気に入っているらしい。