64話 ないとは言えない
……ふぅ、とりあえず通路は抜けられたな。毎回通路内でモンスターと接触しないように祈りながら進むのは精神的にキツいな。今のところ通路内で戦闘したことは……、一度あるくらいか。無いとも言い切れないのが辛いところだ。
SPをフルに使って倒せるかを試してみたい気もするけど、かなりリスクが高い。現状は祈りながらフラワに丸投げしてレベルアップするのが得策かな。……おっと。……リス?
次のフロアに行こうと通路に向かったヒナタは通路に入る直前にモンスターと接触したのである。幸いここはまだフロアの中。フラワを戦闘に絡める隊形に出来なくもない。斜め後ろに二マス下がることでヒナタは得意のL字型……ではなくI字型にそのモンスターを待ち構えた。
隊形は上手く変えられたな。アクアが動かずに戦闘を始めたらどうしようかと思ったけど素直についてきてくれて良かったよ。
……さて、このモンスター可愛いリスかと思ったけど、そうでもないな。目は白眼だし尻尾で包んでる白いものはあれ……骸骨じゃね? まあ、こんな森に可愛いだけのモンスターはいないよな。ちょうど良い機会だし、俺たちも戦闘してみようか。
『ヒナタのポイズンアロー 5回当たった あまり効いていない リスカウルに合計12のダメージ』
『アクアの通常攻撃 リスカウルに6のダメージ』
『フラワの通常攻撃 リスカウルに29のダメージ』
『リスカウルを倒した 経験値を89手に入れた』
『ヒナタのレベルが1上がった』
『HP+3、SP+2、ちから+2、まもり+2、せいしん+1』
『アクアのレベルが1上がった』
『HP+5、SP+2、ちから+1、まもり+3、せいしん+2』
レベルアップは嬉しい。……が、ちょっとこれ厳しいな。
レベルアップして嬉しいという気持ちとは裏腹にヒナタの表情は曇っていた。それはポイズンアローのダメージが思っているよりも低かったゆえである。
ポイズンアローは多段攻撃であり、当たった回数が多ければ多いほどダメージが期待できるスキルである。強力故にSPの消費も多く、現状のヒナタは連続で2回撃つことができない大技である。
しかしそんな大技の最大ダメージである5回当ててダメージがたったの12。このダンジョンでの敵モンスターの体力は少なくとも30は超えており、多く見積もっても3分の1程度のダメージしか与えられなかった計算となる。もちろん相性の問題もあるが、相性を抜きにしても一撃で倒せないとなるとかなり厳しいのだ。
あまり効いてないってことは多分相手は闇属性ってことなんだろうな。こちらへの攻撃も弱くなるのは嬉しいけど、SPの効率はかなり悪い。……これは戦闘は完全にフラワに丸投げだな。そして通路内で出会わないよう祈るしか無さそうだ。……心臓に悪いね。
ヒナタはふぅ、とひとつ息を吐くと通路の中へ進んだ。いくら通路内での戦闘を回避したいとは言ってもいつまでもフロア内にいては攻略が進まない。そう頭では分かっていても中々足は進まないものである。
ようやくフロアにたどり着いたヒナタはフロア内にあるアイテムが落ちているのが見えた。知っているアイテムのようにも見えるが違うアイテムらしい。拾った際のアナウンスはヒナタの知らないアイテムの名前を表示していた。
『ヒナタはとがった石(3)を拾った』
tips:
属性の相性
属性ごとに相性が設定されている。相性が悪いとダメージは半分に減ってしまうが相性が良いとダメージは倍となる。相手モンスターの属性を正確に見極めるのも攻略のひとつだ。