58話 踏破……？
フロアに足を踏み入れたヒナタはフロアの端っこでまごまごしているモンスターを見つけた。敵モンスターはフロアに入ればこちらに敵視を向けるが、このモンスターはこちらを見向きもしない。要するにこのモンスターは敵ではなく依頼主なのだ。
ヒナタはモンスターがやってこないか気配を探りながら依頼主であるミニゴンに近寄った。幸い敵モンスターが来ることなくヒナタたちは無事に依頼主のもとにたどり着いたのである。
『依頼のアイテムを受け取ったミニゴンは嬉しそうに帰っていった』
『依頼をひとつ達成しました。すぐにギルドへ帰還しますか？』
帰還はしない。だって目的はこのダンジョンの踏破だからね。
……しかしこのダンジョン、地下何階層まであるんだろう？ もういつ最下層になってもおかしくないけどなぁ。
メタ的な見方をすればまだこのダンジョンは２つ目のダンジョンでしかない。後になるにつれて階層の多いダンジョンが増えるとすれば、この潮騒の洞穴はそう階層の多いダンジョンではない。……ま、邪推だけどね。お！ 階段があるな。……さて、続きの階層はあるのかな？
――
風吹き荒れる祠
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「……ここ、どこ？」
階段を降りてヒナタたちが足を踏み入れたのは暗く強い風が吹く古い祠である。さっきまで潮騒の洞穴にいたとは思えないほど雰囲気は一変していた。いったいここはどこなのだろうか。
「潮騒の洞穴の……最奥部じゃないのかな」
「本当？ 雰囲気がまるで違うぜ？」
「多分。そうじゃないと説明がつかないよ。……それにほら、見てよ」
アクアは何かを見つけたようだ。彼が示す先を見るとそこには転移ポータルがあったのである。転移ポータルはダンジョンの入り口と最奥部に設置される代物。これがあるということは、この場所は潮騒の洞穴の最奥部と考えて良さそうである。
「踏破……でいいんだよな？」
「……良いと思うよ。この先に何かあるようにも思えないし」
まあ、確かにこの先に何かあるとは思えないな。この場所は強風が吹いている祠でしか無いしね。それにしたってちょっと雰囲気が変わりすぎのような気もするが……。まあ、良いや。とりあえず踏破できたことを喜ぼうかね。これで迷いの森にも行けるようになるしね。
少し釈然としないヒナタだったが、深くは考えずにギルドへ帰還するようだ。辺りに何も無いことを確認してヒナタは転移ポータルの上に乗った。こうしてヒナタたちは２つ目のダンジョン”潮騒の洞穴”を後にしたのである。
tips:
風吹き荒れる祠
潮騒の洞穴最奥部にある古びた祠。どこから強い風が吹いているのかはまだ分かっていない。
