43話 性能は……?
ヒナタの横で賑やかな音が鳴り響いた。もちろんレトロな目覚ましの音である。相応にうるさい音ではあったがヒナタはこの音が別に嫌いではなかった。少なくとも以前のものよりは遥かにマシ。眠い目を擦りそんなことを考えながらヒナタは目覚まし時計のアラームを止めた。
……ふぅ、朝だな。まあ、それなりにはうるさいんだけど、前の奴よりは気分良く起きられそうだ。……あれなんだったんだ? まあ、気にしないでおくか。
ええと、朝礼に行く前に脱出リングの性能を確認しておこうかな。名前的には結構気になっていたんだよね。
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脱出リング
最奥部を除くダンジョン内で使うとペナルティ無しでダンジョンから帰還できる。使い捨て。
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おおっ! ものすごい強いじゃんか。文面からして任意のタイミングで使えるっぽいな。使い捨てなのは残念だけど、これで不慮の事故は格段に減らせそうだ。……まあ、使うタイミングがかなり難しいけどね。使うタイミングを間違えて力尽きてアイテムロストだけはダサいな。それだけはしないようにしよう。
……確認はこれくらいでいいか。それじゃあ朝礼に行こう。
「……それでは解散」
よし、朝礼が終わったな。まずは金庫に行こう。
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金庫
――
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「お金を預けたい」
「一部をお預けになられますか? それとも全額お預けになられますか?」
「全額で」
「かしこまりました。確かに全額お預かりいたしました。ヒナタ様の預金は184Gでございます。またのご利用をお待ちしております」
ふぅ、これでひと安心だな。預けるのを忘れていたことに気付いた時はどうしようかと思ったよ。それじゃあ掲示板を見に行こうかな。
掲示板へとたどり着いたヒナタは貼り付けてある依頼をじっくりと見渡して表情を渋くしたのだ。経験値稼ぎとランクポイント稼ぎを両立させるために狙いは潮騒の洞穴での依頼であり、潮騒の洞穴での依頼が貼っていない訳ではない。ヒナタは2つの依頼を見て顔をしかめているのだ。
……依頼にも種類がある。アイテムの配達や採取、遭難救助、依頼人を連れた探検。……まあ、パッと思い浮かぶのはその辺りか。それらの依頼を見ていけばそのダンジョンがどれくらいの階層あるのかが大体の予測がつく。最奥部で依頼を待つ奴はいないからね。
となると少なくとも場所で示された階層よりもさらに進まなくては踏破はできないって訳だ。
ヒナタは顔をしかめたまま目の前の2つの依頼を手に取った。そこにはこんな依頼が記されていたのである。
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スタミナが切れてしまう……。早く届けにきてくれ!
依頼主:ミニゴン
目的:インスタントラーメンの配達
場所:潮騒の洞穴 地下5階層
ランク:E(10)
報酬:ゴールド
潮騒の洞穴を探検したい!
依頼主:バラクーン
目的:依頼主を案内する
場所:潮騒の洞穴 地下3階層
ランク:D(20)
報酬:ドレインの巻き物
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tips:
使い捨てアイテム
消費することで効果を発揮するアイテム。ダンジョンで手に入るほとんどのアイテムがこれにあたる。