3話 転移ポータル
……ふぅ、倒せたか。ちょっとピンチだったが、まあなんとかなったね。さ、助けようか。……どうやって罠を外せばいいか分かんないけどね。
「……罠も外してくれるのか?」
「ん? ……そのつもりだが?」
「……ありがとう。ダンジョンでこんなに優しいモンスターに会えるなんて思っていなかった」
こんなに喜んでもらえるとはね。助けた甲斐があるもんだ。ま、優しいモンスターって思われるのはちょっと慣れないけどな。……お、外れた外れた。
「ありがとう、……本当にありがとう。……君は何をしにこんな場所に?」
「……答えるのが難しいな。気がついたらこの近くにいたんだ。外へ出たいんだがこの道を戻ればいいのか?」
「ここは海岸の岩場の4階層目。次の階層が最後だから入り口への転移ポータルがあるはずだよ。……良かったら案内しようか?」
「……いいのか?」
「もちろん。君には命を助けてもらったんだ。喜んで案内させてくれ」
そう言うとそのモンスターはどこかへ向かって歩き始めた。それはまるでどこに階段があるのかを把握しているかのようである。ついていきながらヒナタは少しだけ首を傾げていた。
そしてしばらくしてヒナタたちは階段のあるフロアへとたどり着いた。フロア内にポツンとある上へと伸びるその階段がどこに繋がっているのかはヒナタからは見えない。前にいるモンスターの言うことを信じるのであればその先の階層には入り口へ戻るための転移ポータルがあるはずである。
「これを上ればこの先に……、その……」
「転移ポータル?」
「そう、それだ。それがあるのか?」
「ああ。階段はすぐに見つかったんだ。でも、何かアイテムが落ちてないかと探し回っていたね。それで罠にかかってしまったんだ。……君が通りかからなかったら危なかったよ」
「なるほどね。それじゃ、進もうか」
……広いな。ここが最後の階層っていうのは何となくだけど分かるね。そして、これがその転移ポータルか。見た目的にはワープゾーンって感じだな。……踏めばいいのか?
ヒナタにとって転移ポータルを見るのはこれが初めてである。大して驚きがないのはそもそも見るもの全てが見たことが無いものでありいちいち驚いていられないからである。
そしてこの世界でこの転移ポータルはありふれたものらしく案内してくれた彼は流れるようにこの転移ポータルを踏み姿を消したのである。
正直不気味でしょうがないがこの世界に来た以上、この転移ポータルには幾度となくお世話になるのだろう。意を決してヒナタは転移ポータルの上に乗った。
まるでエレベーターに乗っているかのような微弱な浮遊感を感じながらヒナタは初めてのダンジョン“海岸の岩場“を後にしたのである。
tips:
転移ポータル
ダンジョンの入り口と最奥に設置される転移ポータル。これを使えばすぐにダンジョンの入り口に戻ることが出来る。