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389話 あいにくそんなものはない


 ……ここが、ここがそうなのか。


 荒れ狂ったかのように生えていたツタを辿ってとうとうヒナタたちはダンジョンの入り口らしき場所に到達したのである。遠目からでも大きく見えたユグドラシルの神樹は目の前にすると最早大きな緑の壁である。そして目の前には楽に通れるだけの裂け目ができていた。ここから中へ入れるのならそれはまさしくダンジョンの入り口である。


「さあ、ここから先はダンジョンになる。気を引き締めないとね」

「……一応聞くんだが、転移ポータルはどこに?」


 転移ポータル。ダンジョンの入り口及び終着点に設置されている便利な設備である。これがあることで一度来た場所ならば楽に行き来できるようになるためダンジョン攻略には欠かせない代物である。

 だがなぜかそれが見当たらないのだ。目の前の裂け目がダンジョンの入り口のようには見えるが、転移ポータルが見当たらないのでまだダンジョンの入り口ではない。それが幾度となくダンジョンを攻略してきたヒナタの見解である。


 しかし残念ながらここは紛れもなくダンジョンユグドラシルの神樹の入り口なのである。そしてここ以外に入り口は存在しないのだ。


「そんなものは無いよ」

「……無い? どうして?」

「……転移ポータルはダンジョンがこの世界に出現するようになってから冒険隊の有志たちの手によって時間をかけて作られ、設置されたものだ。その手軽さからか広まるのも早かったという。だがひとつだけ欠点があった。設置するにはまずその場所にいかねばならなかったことだ」

「それじゃあここに転移ポータルがないのは、その有志たちが来られなかったからなのか?」

「そういうことだ。ちなみに気付いているとは思うが、転移ポータルが無いということはここから拠点に戻ることができないということだ。攻略に失敗して戻ってくるのはここだ。拠点に戻ることはない。戻る時は、……攻略を諦めた時だけだ」


 そう言うとトップは苦い表情を浮かべた。その理由は考えるまでもなく明白である。トップはここからユグドラシルの神樹へ挑み、そしてあえなく退けられ、攻略を諦めたのだ。だからこそこの場所のことをこんなにもよく知っているのである。


 ……雰囲気が固くなっちゃったな。まあラストダンジョンを前にしてヘラヘラするのも違うけどさ。しかし拠点にはもう戻れないのか……、残念だな。まあ確かにラストダンジョンなのに入り口と拠点が簡単に行き来できるなんて無いよな。

 ふむ、一応戻ろうとすれば戻れるのか。一番最後に見た転移ポータルは宝玉の間かな。あそこまで戻れば拠点に戻ることはできる。攻略に失敗してどうしようもなくなったら戻る。退路が完全に断たれたわけじゃない。……ま、戻る気はさらさらないけどね。


 ……ふぅ、それじゃあそろそろ行こうかな。これがラストダンジョンになる。どこまで続くかはさっぱりわからない。まあ、低階層であっさり踏破なんてのは無いね。長丁場になる。覚悟はぼちぼち決まったかな。いざいかん、……ユグドラシルの神樹へ。


tips:

ユグドラシルの神樹で力尽きた場合、ユグドラシルの神樹の入り口へと戻される。

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