387話 神樹への道
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神樹への道
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少しばかりの間光り輝く階段を登っていくとヒナタたちの目にも目的地が見えて来た。それはそらにぽかりと存在している浮島である。浮島と言ってもハリボテのように生い茂る草とひとつを除いて何も存在していない。
そして降り立って見てみるとよくわかるがその浮島の形はやや歪のようだ。唯一ある祠のすぐ後ろは切り立った崖のようになっている。それはまるで何かがかつてあったような見た目をしていた。
どこか味気ない空間ではあるが特別な場所であることはそこに降り立った瞬間から感じる張り詰めた空気で何となく分かった。そしてそれは隣を歩くトップの表情からも。
「……ここは?」
「ここは神樹への道と呼ばれる場所。オーブを全て集め正しく収めたものたちにだけ足を踏み入れることが許される神聖な場所だ」
「オーブを……、と言うことは前に言っていた古びたハープを弾く場所ってのはここか?」
「理解が早いな。まさにその通り。……ここでこの古びたハープを弾き、優しきものであることを示した時ユグドラシルの神樹への道が開かれる」
トップはまっすぐ祠を見つめた。祠には石碑が建っている。その石碑の前にまっすぐ立つとトップは古びたハープを取り出した。いよいよそれを弾く時のようである。
「ふふ、思い出すよ。またこの場所で弾くことができるとはね……」
微笑みを浮かべトップはそう呟き、古びたハープに手をかけた。美しい音色が聞こえる。やや聞き覚えのあるメロディにヒナタは少し考えた。
そしてそれがオープニングで流れたメインテーマであることを思い出したその時、石碑の後ろが光を放ち始めた。その強い光は石碑を飲み込もうとするほど大きく膨れ上がり、霞のように消え去った。
そして残されたのはツタのようなもので作られた道である。先程までは切り立った崖であったはず。つまりこれらハープの音色によって開かれた道とみて良さそうだ。そしてどうやらここから先に進めるらしい。
「さあ、ユグドラシルの神樹へ向かおう。目的地はすぐそこだよ」
目的地というのはユグドラシルの神樹のことに違いない。すぐそこと言う割にはヒナタにはユグドラシルの神樹への入り口は見えない。
ここから少し歩くのかな。なんてつまらないことを考えながら石碑を通り過ぎて進もうとしたその時、近くに気配を感じたヒナタは慌てて周囲を見渡した。そして振り返ったのである。
そこには今までは確かにいなかったはずのモンスターの姿があった。しかもヒナタはそのモンスターを見たことがあるのである。
「……ジイヤ?」
「ふむ、気付いたようじゃの。……誰のことを言っているかは知らんがな」
tips:
神樹への道に置かれた石碑に刻まれた楽譜は、かつてスケリラールが好んで演奏していた曲であると伝わっている。




