32話 2つの条件
言われるがままヒナタはカバンからワンダー・マップを取り出した。ワンダー・マップは今までヒナタたちが訪れたことのある場所が分かる地図。すなわち今の状態ではギルドと海岸の岩場、そして砂浜くらいしか分からないのである。
そしてヒショは砂浜が途切れ鮮明には見えない場所を指差した。どうやらそこがおあつらえ向きの場所らしい。
「この辺りだ」
「……この辺りに何があるんだ?」
「もちろんダンジョンだ。名を潮騒の洞穴という迷いの森と比べれば少し難易度が落ちるダンジョンだよ。そこをすんなり踏破することが出来ればお前たちの実力は少なくとも決して無謀とは言えないだろう」
「……それじゃあそこを踏破出来れば?」
「もうひとつ、ノービスランクからビギナーランクへ昇格すること。その2つを迷いの森挑戦の条件とする。両方とも達成出来ればまた私に報告しに来なさい」
なるほど、その2つが条件なのか。……まあ、条件としては現実的かな。そもそもどうやら迷いの森はそれなりに難易度の高いダンジョンみたいだし、今挑んでもただ力尽きるだけだからな。経験を積んで……って言うかレベルを上げてから挑むべきってことだよな。
でもそれを海岸の岩場でまかなうのはちょっとばかり無理があると。それで潮騒の洞穴を教えてくれたんだな。
「……条件が出されちゃったね」
「まあ、それは仕方ないさ」
「どっちから達成しようか」
「……そうだな。とりあえずはその潮騒の洞穴の踏破を目指せば良いんじゃないかな」
ヒナタがこう考えたのには理由がある。そもそもヒナタたちにとって海岸の岩場は踏破こそ出来たが楽に攻略することは難しいダンジョンである。それはひとえにヒナタたちのレベルがまだ低いからであり、レベルが上がれば自然と攻略は楽になるだろう。
依頼を達成し冒険隊ランクを上げるのはそれからでも遅くはない。まずは経験を積むべきなのだ。ヒナタはそう結論づけた。
「そうだね。それじゃあ早速……」
「いや、まだ行かないよ」
「?」
「迷いの森よりは難易度が低くても海岸の岩場よりは多分高い。だから準備の必要がある」
少なくとも金庫にお金を預けておかないとな。調子に乗って所持金がゼロになる事態はなるべく避けておきたい。……早く目覚ましを替えたいしね。それじゃあまず、ショップへ行こう。
ヒナタたちがまず向かったのはミセミセのショップである。もちろん潮騒の洞穴の攻略準備もあるが、一番は目覚ましの購入費の確保である。
昨日の流れから不要なアイテムは売ることができることは既に知っていた。海岸の岩場で拾ったスライスの巻き物を売ればレトロな目覚ましが買えるかもしれない。ヒナタはそれを期待していたのだ。
tips:
冒険隊ランク
一定のランクポイントを手に入れると冒険隊ランクが上がる。冒険隊ランクは積み上げた実績の証だ。




