29話 依頼主を探せ
アナウンスを聞きながらヒナタはそっと目を閉じてこの階層で起こったことを思い出していた。
合計138Gのお金と、数個の石ころ。そしてオトシゴン2体とラッシーが1体との遭遇。それが今回の冒険でヒナタが2回目にこんがりクロワッサンを拾うまでに起きたことである。
カバンの中を確認する。今回の冒険で拾ったアイテムの数はそう多くない。故に順番を整理する前のごちゃごちゃした状態であってもこんがりクロワッサンが 2個あることは見れば分かった。
……ふぅ、それじゃあ間抜けな依頼主を探すか。結構歩き回ってもいなかったが、どこにいるんだろうな。……ん? 黄緑色のヘビみたいなモンスターがいるな。もしかしてアレか?
ヒナタはゆっくりと目に入ったそれに近寄っていった。向こうは気付いていないのか、ヒナタには見向きもせずその場辺りを歩き回っている。なるほど、どうやらこのモンスターがペロリン、すなわち依頼主のようである。
『ペロリンに依頼のアイテムを配達しますか?』
「わあ! 君たちは冒険隊か。依頼で配達しに来てくれたんだね。ありがとう!」
結構喜んでくれるんだな。なかなか嬉しいじゃんか。……ん⁈ 消えた?
『依頼のアイテムを受け取ったペロリンは嬉しそうに帰っていった』
『依頼をひとつ達成しました。すぐにギルドへ帰還しますか?』
なるほど、依頼を達成すれば依頼主はさっさと帰るのか。それじゃあもうここですることもないし俺も帰還しようかな。……はいっと。
ヒナタが帰還を選択した瞬間視界が暗転し次に目を開けた時には既にヒナタもアクアも冒険隊ギルドへと帰還していた。なるほど便利なものである。ヒナタがひとり感心していると後ろから誰かが近づいてくる気配がしたのである。振り返るとそこにはペロリンがいたのである。
ヒナタは一瞬戸惑ったがすぐにペロリンが冒険隊ギルドに来た理由に思い至った。そういえばまだ報酬をもらっていない。
「届けてくれてありがとう! とっても美味しかったよ」
「ああ、それは何よりだ」
「これは報酬のゴールドだよ。是非受け取ってね」
『ヒナタたちは報酬として400G受け取った』
『依頼達成によりランクポイントを10手に入れた』
おぉ! 悪くない金額だ。この分なら割と早く代わりの目覚ましが手に入りそうだ。ランクポイントってのは依頼のランクの欄に書いてあった奴だな。確かE(10)って書いてあったんだっけ? そしてそれが30を超えると次のランクに行ける訳だ。……ふふん、結構分かってきたぞ。
「ヒナタお疲れ様。今日はもう寝てまた明日頑張ろうね」
また明日? 暗転したな。……マジか。
ヒナタの横でけたましい音が鳴り響いた。もちろん目覚ましの音である。依頼を達成し無事に帰還したとしてもこうして日付が進むためにその日のうちに買い物をすることは不可能。よってヒナタがまたこの目覚ましの音で起きるのは必然であるのだ。
tips:
依頼主
いくつかの依頼では依頼主がダンジョンにいることがある。こちらに気付いても向かってはこないためくまなく探してみよう!




