270話 常夜の森
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常夜の森
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このダンジョンの入り口に来るのは久しぶりだな。確か果てなき森に挑んだくらいのタイミングだったような? あの時はヒショが同行者にいたんだっけ。あの頃にはもう入り口までたどり着いていたのに攻略するのはこんなに後になるなんてね。分からないものだよ。
「常夜の森。……噂ではあんしグラスが無ければ何も見えないほど暗いとか」
「雷鳴の丘と同じくらいか」
「あそこは確かに夜だと同じくらい暗いけど、ここは昼間も暗いんだってさ。まあ、あんしグラスがあれば問題ないけどね」
なるほど、周囲が暗いからなんとも思ってなかったけどそういえば今って昼間なのか。さすがに常夜の森と言われるだけのことはあるらしいね。文字通り常に夜の暗闇に包まれているのか。
周囲の雰囲気とか何にも分からないけど、……多分結構長いダンジョンなんだろうな。中継地点があればいいけどね。ま、あれこれ考えても仕方ない。突入するとしようか。
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常夜の森 1階層
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……おぉ、暗いな。当たり前か。装備品は毎回カバンの中に戻ってしまうからダンジョンに入る度につけ直す必要がある。面倒ではあるけどこれは仕方ないね。まずはあんしグラスを装備しようか。
『ヒナタはあんしグラスを装備した』
いつも思うけど、これすごいアイテムだよね。あんなに暗くて見えなかったのにあんしグラスを装備したらフロア全体が見通せるようになるんだからさ。
ええと、フロアは割と狭い方かな。となるとダンジョンの構造は狭めのフロアが多いのかな? 森って言うだけあって中々迷いやすい難易度の高いダンジョンなのかもね。
この雰囲気なら何となくゴーウッドとかコノハウルとかが敵モンスターとして遭遇しそうだな。当然未知のモンスターもいるだろうから気を引き締めて攻略しないと。
それじゃあ進み始める前に下準備だな。けいけんのたてをアクアに装備させてちからのたねを使おう。
『アクアはけいけんのたてを装備した』
『ヒナタはちからのたねを使った ヒナタのちからが1上がった』
これでよし、と。それじゃあ攻略していこうか。通路は左右に分かれてるから……とりあえず近い方でいいかな。右に行こう。……ん? ちょっと待って。ちらっと見たことないモンスターが見えた気がする。
進んで次のフロアに行ってから待ち構えてもいいけど、次のフロアに敵モンスターがいるとはさみ撃ちになっちゃうからね。引き返して迎え撃つとしようか。
……うん、やっぱり敵モンスターだったね。ランタンのお化けみたいな見た目だな。……明かりの部分は火の玉にも見えなくもない。というか多分それで合ってる。どことなく雰囲気がガイストに似てるのは気のせいであってほしいな。この見た目で壁からいきなり出てこられるとさすがにびびるわ。
さて、普段なら隊形を整えてから挑むんだけど、フロアが狭すぎて隊形を整えてる暇がないね。どうせ俺だけで戦うなら先手は打っておこうか。こいつの使用感も気になるところだしね。
『ヒナタはブーメランを投げた ウィルストに30のダメージ』
tips:
常夜の森
昼夜問わず闇に包まれている不思議な森。その闇が晴れることはない。




