264話 追いかけっこは意味がない
一歩進んだらまた表示が出てきたよ。なんかこの階層割と高頻度で敵モンスターがアイテムを拾うよね。
……ん? 違うな、これ拾った訳じゃないや。なんだこの表示、上にのった? ……となると本来なら拾えるけど拾えなかったって意味かな。
スカルガオはさっきマッドの巻き物を拾ったから、多分同じ奴がこんがりクロワッサンのマスに入って拾えなかった表示が出たって感じだろ。
それじゃあこんがりクロワッサンがあればある程度位置が分かるな。まあそれが分かる頃には大分離れてるんだろうけどもね。さて、このフロアには何があるかな……。ん?
『ヒナタはこんがりクロワッサンを拾った』
……あったな。普通に落ちてたよ。となると……、巻き物を拾ったスカルガオはかなり近くにいたってことか? うわぁ、惜しすぎる。そして多分行き止まりでもない限り遭遇可能性がかなり低くなったな。……巻き物の回収は諦めるか。
ヒナタはなぜアイテムの回収を諦めたのか。それにはヒナタたちと敵モンスターたちにターンの使い方に明白な違いがあるからに他ならない。
基本的にターンはどのモンスターにも等しく同じだけやってくる。そのためヒナタたちがどこかへ移動すれば敵モンスターもどこかに移動するのである。
そしてヒナタたちは罠を踏みたくない故にターンを消費して進行方向に罠がないことを確かめながら進んでいるのである。当然だがターンを消費する以上敵モンスターはさらに多く進むことになる。行き止まりで引き返すでもしない限り単純に追いかけて追いつくことはあり得ないのだ。
もちろんヒナタたちが罠を気にせずに進むことは可能である。よほど運が悪くない限り罠を踏み続けることはないし、例え多少の罠を踏んだとしてもこのダンジョンの難易度なら充分リカバリーは可能である。
とはいえ依頼主を連れてその行動をするのはかなりのリスクを背負うことになる。そしてそのリスクを背負ったとして結局単純な追いかけっこになるのは変わらないのだ。
階層の地図を見る限り行き止まりがところどころにあるっていうよりはいろんな通路に分岐してる感じなんだよな。だから正直に追いかけてもいいことはない。むしろ適当に散って動き回る方が偶然の遭遇が誘発できそうだよね。ま、それも依頼主を帰還させてからの方が安全ではあるけど。お、マチルドだ。
『ヒナタのバイト マチルドに46のダメージ』
『マチルドを倒した 経験値を112手に入れた アクアはさらに経験値を56手に入れた』
tips:
アイテムを探すことと比べると、動き回る故にアイテムを拾った敵モンスターを探すことは格段に難しい。




