252話 二つの試練
「ユグドラシルの樹にたどり着くことができない?」
「あぁ、そうだ。スケリラールが我々この世界の住人に与えた試練は二つ。強さと優しさを持つものであることを証明するためにね」
「強さってことは……」
「そう、オーブだ。数多くのダンジョンを乗り越えた強きものにしかオーブを全て集めることはできない。そしてこの古びたハープは優しきものであることを示すものなのだよ」
……なるほどね。それでオーブを集める必要があるのか。音楽を楽しむために強さが必要だとは正直思えないけど、そこまで至った経緯を考えると無理もないか。愛用の楽器を盗むような奴が強きものな訳ないもんな。
……、愛用の楽器。ハープって楽器だよな? しかもどう見ても古い。それこそスケリラールがその昔に使っていてもおかしくないくらいに。…………もしかしてもしかしてするのか?
「……ちなみに聞くんだが、この古びたハープが盗まれたスケリラールの愛用の楽器ってことじゃ……ないよな?」
「ははっ、もちろん違うよ。これはその昔に宴で使われていたとされるただの古い楽器だよ。……まあ、特別なものではあるけどね」
「特別なもの?」
「そう、特別なもの。この古びたハープは弾くものが持つ心に応じた音色を奏でると言われている。それ故にこれを弾くことで優しき心を持つものか否かを示すことができる」
「……なるほど」
「オーブを全て集め所定の場所におさめてから進めることのできる場所。その奥に高台と譜面が刻まれた石碑があるらしい。その場所までたどり着き古びたハープの音色を響かせ優しき心を持つものであることを示す。それがスケリラールが与えた二つ目の試練なのさ」
……思ったより重要な役割だったな。強さと優しさを兼ね備えたものにしか自分のもとに近づけさせないっていう覚悟のようなものを感じるよ。音楽ってもっと気軽に楽しめるものじゃないのか?
最初の宴を楽しんでいる話が嘘のようにスケリラールは厳格な性格の持ち主に思えてきたよ。……ま、それだけご立腹だったということか。
「さて、聞きたいことはこれで答えられたかな?」
「……うん、まあそうだな」
「それなら良かった。……さて、まだ話は終わらないよ」
「……というと?」
「私は仮にもギルドのトップを務めているんだ。君たちに危険な頼みをしておいてその報酬を渡さないなんて話はあっていいわけがない。さあ、これを遠慮せず受け取ってくれ」
『ヒナタはアビスの巻き物を手に入れた』
『ヒナタはバーンスチームの巻き物を手に入れた』
tips:
二つの試練を乗り越えるということは強さと優しさを持っている証となる。