227話 わずかな光を求めて
あんしグラス。装備品のひとつであり、ダンジョン内部では暗いダンジョンでも一定の視界を確保する優れものである。見た目はただのサングラスのようだが、わずかな光を明確に把握することができるため暗い場所で何かを探すにはうってつけなのだ。
そしてあんしグラスを身につけたアクアは早速何かを見つけたようである。
「……あれ? あそこ何か光ってるな」
「……どこだ?」
「あっちの方角にずっと進んだ先に固まった光が見えるんだ。あの光り方は星の光じゃあないね」
「……俺にはさっぱり見えん。とりあえずその方向に向かって歩いてみるか?」
「うん、行ってみよう。何か見つかるかもしれない」
何か見つかるかもしれない……ねぇ。この場合見つからない訳ないんだが、果たして何が見つかるやら。ずっと進んだ先って言ってたからゴルバードとやらの住処が直接見つかるとは思えないけど……。うん、まあそうなるよな。
見つけた光の方向へ歩き出したヒナタたちはとある場所にたどり着きその歩みを止めた。その場所には転移ポータルが置いてあったのである。ヒナタたちはどこのダンジョンを攻略したわけではないためその転移ポータルがもつ役割としてはひとつしかない。
やはり曖昧ではっきりとは見えなかったがどうやらそこからダンジョンが続いているようだ。
「……これはダンジョンかな?」
「……多分な」
「この先にもしかすると怪盗ゴルバードの住処のひとつがあるかもしれない。どんなダンジョンかも分からないけどとりあえず行ってみよう」
――
雷鳴の丘 1階層
――
雷鳴の丘か。やっぱりダンジョンが続いてたんだな。多分この先に行けば怪盗ゴルバードの住処にもたどり着くんだろうよ。……何にも見えないけどな。
ログの表示からしてヒナタたちは今ダンジョン内部にいることは分かりきっている。しかしながら視界はまったく確保されておらず見渡せど真っ暗闇。隣のマスが辛うじて見えるほどしか視界が無いのである。
『アクアはけいけんのたてを装備した』
『ヒナタはあんしグラスを装備した』
……お、これでフロアの視界は確保できたな。あんしグラスってすごいんだね。あんなに真っ暗闇だったのにここまで見えるようになるとは。まだ何一つ攻略してないけど常夜の森の攻略も多分こんな感じで進んでいくんだろうね。
さて、ダンジョンの背景は……ところどころ緑色と金色の水晶の欠片が見えるな。光源が無いから光ることはないんだけどもし明るければ綺麗な背景なんだろう。あとは鉄……なのかな、黒い石がちらほら見える。
今のところどういうダンジョンかは分からないな。とりあえずモンスターを探すか。何かしらに遭遇すればどんなダンジョンかも自ずと分かるだろ。……お、あいつは見たことあるな。スチリルだ。さて、どのくらいの強さなんだ?
tips:
雷鳴の丘
電気のエネルギーで満ちた丘。昼間は日の光が反射してものすごく明るい場所だが夜では一転して暗闇に沈む。