225話 怪盗ゴルバード
そう言うとトップはヒナタたちにとある紙を差し出した。何やら文字が書いてあるようだが汚くて何が書かれているかすぐには判別できなかった。
「うわっ、……汚い字で読みにくいな。ええと、……『キュビクスのギルドのお宝は吾輩がいただいた。悔しかったら取り返しに来るとよい。 怪盗ゴルバード』」
「怪盗ゴルバード? 誰だそれ」
「金銀財宝に目がないことで有名な怪盗だよ。噂では盗んだ財宝を住処に飾って夜中に高笑いを浮かべているとかいないとか」
……なるほど、わかりやすい怪盗だな。確かに見渡してみるとこの部屋にはもう少し装飾品が置かれていたような気がするな。……ということはアレが無くなってるのは関係ないか。
「そのゴルバードで間違いない。……実は昨日予告状が届いていてな。盗まれることはないとは思ったが念の為この部屋の装飾品の類、それも奴が好きそうなものを見繕って閉ざされた館に運んでおいたのだ。何も盗まれることのないようにね」
「なるほど、それで装飾品が減っていたんだな。それじゃあ何か盗まれた訳でもないと」
「……そのはずだったのだ。しかしいつの間にか奴の侵入を許していたらしい。目当てのものが無かったからか、ただの腹いせか、……そこにずっと置いていた古びたハープを持っていったらしい」
あ、なんだやっぱり関係あるのか。無いなとは思ってたんだよね。……話では怪盗ゴルバードは金銀財宝が好きなんだよな? 記憶があんまりないけどあのハープそこまで装飾品はあしらってなかったと思うけど。
「古びたハープってあれだよね。……お宝なのか?」
「金銀財宝という点ではお宝ではない。……だがある意味お宝だ。価値が分かるものからすればね。悪運が強いのかよりによってあれを持っていくとはさすがに予想してなかった。……そこでだ」
「そこで?」
「君たちに頼みがある。……奴に盗られたあの古びたハープを取り返してきてもらいたい」
トップは真剣な表情である。そして話の流れからヒナタはそれを取り返す役目を自分たちに頼もうとしていることを察していた。それ故にヒナタはトップの頼みに対しては冷静に受け止めていた。そしてその頼みを受け入れることに何の抵抗も無かった。問題があるとすればひとつだけである。
「その頼みを受けたとして、……俺たちはどこに行けば?」
「……それは私にも分からないのだ。奴は転々と住処を変えていてね。今目撃情報を洗ってはいるが……」
「トップ! 失礼します」
「ヒショか。なにか分かったか?」
「昨日の晩ガタガタ林道近辺で奇妙な高笑いが聞こえていたとのこと。……奴はその辺りにいるのかもしれません!」
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怪盗ゴルバード
金銀財宝を求めて日夜盗みを働く怪盗。住処は盗んだ財宝で溢れているとか。




