222話 本来の色は
これでヒナタたちが手に入れたオーブは迷いの森にあるものを含め5個目となった。残るオーブはあと2つ。どこにあるのか分からないがそれを見つけなくてはユグドラシルの樹のもとに到達することはできない。行きたければ探し求めるしかないのだ。
インディゴオーブを手に取ったヒナタはふと周囲を見渡した。オーブの光で満ちていた真実の虚構はオーブが無くなったことで本来の色を取り戻していた。どうやら思っていた以上にここは暗く何もない場所のようだ。
「さてと、これはもう必要ないものね。あんたたちには要るのかもしれないけれど」
そう言うとアクマイドは身につけたサングラスを外すとゆっくりとヒナタに近づいてきたのである。そして手にあるそれをヒナタに押し付けたのだ。
『ヒナタはあんしグラスを手に入れた』
「あんしグラス⁈」
「そう、あんしグラスさ。私は元々それはそれは明るい場所で暮らしていた身。こんな暗い場所だとそれが無ければ何もすることができないのよ」
あんしグラス……。確か暗いダンジョンでもある程度の視界が確保できる装備品だったか。随分と前にヒショがそんなことを言っていたような……。
「でもインディゴオーブも無くなっちゃったし、もうここに私の役目はないね。私は元いた場所へ帰ることにするよ」
そう言うとアクマイドはどこからか脱出リングを取り出した。確かに脱出リングを使えば元いた場所に帰ることができるだろう。転移ポータルでも帰ることができるはずだが、それをしないのは何か意味があるのだろう。
しかしそんなことはどうでもよかった。なぜヒナタに持っているあんしグラスを渡したのか。なぜオーブを守っていたのか。アクマイドの役目とは何なのか。疑問は尽きなかった。
「……待って!」
「ふふ、疑問がいっぱいかしら? でもそれにはまだ答えてあげられない。……また会いましょう」
「……行っちゃった」
また会いましょう……か。この先どこかで会うことになるのか、それともただそう言っているだけなのかは分からないな。
あんしグラスが手に入ったということは次攻略するダンジョンはもう決まっている。……常夜の森。これがあれば暗いダンジョンでも攻略ができるはずだ。そして多分奥底では何らかのオーブが手に入るんだろう。
……ま、何はともあれ
「俺たちも帰るか」
「……そうだね。転移ポータルは……、あそこかな」
こうしてヒナタたちは真実の虚構を後にしたのである。オーブこそ手に入ったことでシナリオが進んだという実感はある。だが、何故だか攻略する前よりも疑問が増えた気がしてならなかった。もやもやが晴れぬままヒナタたちはギルドへと帰還したのである。
tips:
オーブはダンジョンの色合いを変えるほどの光を放っている。




