188話 立ちはだかるは地竜
……長かったなぁ、浮遊感。なんでダンジョンひとつ踏破するだけで2回もこんな浮遊感を感じなきゃいけないのさ。っていうかここどこだ?
眩しそうに目を細めながらヒナタは周囲の様子をうかがった。ヒナタたちが落ちたのは断崖の地底湖。断崖の空洞最下層に広がる広大な湖である。
そしてその地底湖の真ん中から強い黄色の光が放たれていた。間違いなくイエローオーブがある場所はあそこである。
……あそこにオーブがあるのか。それじゃああの場所に行かないとな。どうやったら着くだろう? あの場所は島か……、いや陸続きだな。たどり着くことができないわけではなさそうだ。
……あの辺りから回り込んで進めばたどり着けるか? とりあえず行ってみるか。
……しかしあの唸り声の主はどんな奴だろう? 恐らくあそこにあるオーブの守り手的存在なのだろうということは予想がつく。声の大きさからして相当大きな存在だろう。
だから最下層、つまりオーブがある場所に着けばすぐにどんな奴か分かると思ったんだ。多分かなりデカいモンスターだろうしね。
……でも予想が外れたんだよな。周囲を見る限りそれらしきモンスターは見当たらない。一応上も見てみたがいなかった。まさか何の戦闘もなくオーブが手に入ることはないとは思うが……、着いたな。もしや手に入るのか? さすがにそれは……、うん無いよな。
ヒナタがオーブまであと一歩のところまで近づいたその時、地面が揺れオーブが置かれた場所を中心に陸地が大きく上へと迫り上がった。そしてどこからか重そうな翼を広げ一頭の竜がゆっくりとヒナタたちに向かって旋回し目の前に降り立ったのである。
“孤立“
そんな言葉がヒナタの頭には浮かんでいた。恐らく目の前に現れたこのモンスターはこれが狙いなのだろう。オーブに近づこうとするものの退路を断ち、自身はゆっくりとそのものを排除するために現れる。そうして彼はオーブを守ってきたに違いない。
そしてヒナタたちにとって取るべき行動はひとつしかない。このモンスターを打ち破ること。それしかないのだ。
「……オーブを手に入れんとするものよ。その力を我に示せ。グラドラン……いざ参る‼︎」
tips:
グラドラン
洞窟の奥深くで静かにたたずんでいる地竜。長く生きているため多彩なスキルが使える強者だ。




