163話 ヒナタは上機嫌
ヒナタが確認していたログはフリフラから受けたダメージの数値である。フリフラはすぐに倒さないとダブルダブルやスワームでどんどんその数を増やしていく厄介なモンスターである。
しかしその反面、他のモンスターと比べてややダメージは少ないという面もある。ヒナタはそれを突こうと考えているのだ。
今ヒナタがいる位置から階段は斜めに3マス進んだ先。今分身した方のフリフラがいる位置である。ここから右隅に向けて移動してフリフラの動きを誘導しつつ、攻撃を受けながら逆に左に回り込んで階段に入ってしまう。それがヒナタが考えた作戦である。
もちろん今分かっているのはフリフラが通常攻撃をアクアにした時のダメージであり、ヒナタへのダメージがどれくらいかも通常攻撃以外のダメージも分かっていないためやや危険な賭けである。
それでも何とかなるとヒナタが思えているのはカバンの中にある大量のアイテム故。ヒナタは回復アイテムの物量で押し切ろうと言うのだ。
……ふぅ、よしやってみるか。狭いからあんまり意味ないとは思うけど、出来る限り下に誘導しておきたい。とりあえず左隅に移動。
よし、予想通り斜めに距離を詰めてきたな。もう一番近いフリフラには接触されちゃってるか。この分だともう誘導は必要無さそうだな。アクアと場所を入れ替えよう。
『フリフラのスワーム フリフラは仲間を呼んだ』
『しかし誰も現れなかった』
危ねぇ危ねぇ。これが一番面倒くさいんだよ。せっかく階段に入れるように誘導したのに増殖で階段のあるマスが塞がっちゃうのが一番面倒なのよ。これはかなり良い流れだわ。多分最小ダメージで階段に入れる。
『フリフラの通常攻撃 ヒナタに5のダメージ』
『フリフラの通常攻撃 ヒナタに6のダメージ』
『フリフラのダブルダブル フリフラは分身した』
分身したのは一番遠い奴か。最早何の意味もないね。だって階段は目の前なんだからさ。
『フリフラの通常攻撃 アクアに4のダメージ』
『フリフラの通常攻撃 ヒナタに6のダメージ』
『フリフラのダブルダブル フリフラは分身した』
――
閉ざされた館 3階層
――
よし、移動完了。……周りには誰もいないね? うんうん。思っているよりも上手くいったな。おっと、回復するのを忘れちゃいけない。
『ヒナタはこんがりクロワッサンを使った ヒナタのHPは100回復した』
これでよし。アクアは……、まあしなくていいだろ。
さっきの作戦はこのダンジョンでまた使えるかもしれないな。ま、フリフラにしか通用しないけどね。他のモンスターだと通常攻撃の他に攻撃スキルを撃ってくる可能性がある。そうなるとHPの管理が難しくなって最悪力尽きる可能性も全然ある。
それに加えてフリフラはダブルダブルやスワームで増やしてくる点もある。普通に戦うとなると厄介この上ないスキルではあるけど、無視して進むのならその場でターンだけを使ってくれる分むしろ助かる。接触してる数が増えない限りは実質的に何の攻撃もしてこなかったのと同じになるからね。
tips:
力尽きない限りはそのダンジョンの攻略は続けることが可能である。とはいえ無理は禁物。




