12話 ポケットの中には
「……全て無くなるのか?」
「左様でございます」
「……本当に?」
「嘘ではございません。ですから金庫番が必要なのです。私に預けてくだされば万が一脱出ポータルを使ったとしても預けてあるお金は決して減ることがございません。……それに」
「……それに?」
「私宝石集めが趣味なのですが、金庫にたくさんのお金がある光景を見るのもそれはそれは好きなのです。……ですから、一定以上の金額を預けてくだされば何か粗品を差し上げましょう。いいものを見せてくれるお礼ですから遠慮なさらず」
……なるほど、金庫番にお金を預けておけば仮に探検失敗となってもお金が減らないってことか。しかもお金を一定数預けると粗品がもらえると。……宝石集めが趣味ってことはもらえる粗品は宝石絡みかな? 最初にもらったアメジストの指輪みたいなものだと嬉しいね。
さて、これで全員との自己紹介が終わったかな?
「全員との自己紹介を終えたな。それではみんな通常業務を始めてくれ」
ペングルのその指示で先程自己紹介をしたモンスターたちは皆業務を始めるために散り散りになってどこかへ去っていった。後にはヒナタとアクア、それにペングルだけが残っていた。全員との自己紹介を終えて戻ってきたヒナタとアクアを見てペングルは満足そうに頷いていた。
「さて、自己紹介を終えたらどうすればいいんだ?」
「……そう言えば私の自己紹介を忘れていたな。私はヒショと皆からは呼ばれている。トップの側近でありこのギルドで2番目に偉いのだ」
「ヒショだな。よろしく」
2番目と言う言葉をヒショはいやに強調していた。だからと言って過度に敬う態度を示す必要はない。そもそも一番偉いトップに対してヒナタは特段恭しい態度はとっていない。
「……まあ、良いだろう。次はギルドに寄せられる依頼について説明してやる」
「……依頼?」
「探検、迷子捜索、採取。……我々冒険家の仕事は様々で内容によって色々と決められた呼び名がある。このギルドでは寄せられる要望をすべて依頼として受け付けているのだよ。ついて来たまえ」
言われるがままヒナタたちはヒショの後をついて歩いた。そして巨大な掲示板の前でヒショは立ち止まったのである。何枚か紙が押しピンでとめられている。そしてその紙には何やら書かれているようだ。恐らくヒショの言う依頼というものはこれなのだろう。
「冒険家となったものはここに貼られる依頼書を各自で取り依頼をこなしていく。……お前たちカバンの側面に薄いポケットがつけられているのが分かるか?」
「ポケット?」
「基本的に依頼書は持ち歩くことが推奨されている。そのため冒険家の持つカバンにはそれ専用のポケットがつけられているんだ」
tips:
金庫
ゴールドを預けたり、引き出したりできる。たくさん貯めれば粗品がもらえることも……。