119話 君たちこそ行くべきだ
「脱出リングを使ってどのようなダンジョンが広がっているかを偵察しておいてある。見つかったダンジョンは2種類だ」
「2種類?」
「ああ、2種類だ。森の小道は比較的小さなダンジョンのようだ。恐らくかなり長いと予想される果てなき森の攻略の肩慣らしにちょうど良いだろう。……私の勝手な考えではあるが、このダンジョンは攻略しておくべきと考えている。特に君たちはな」
「へえ、……その理由は何だ?」
「入り口を見つけられたのは君たちの存在が大きいからだ。君たちが以前発見した断崖の空洞というダンジョンがあるだろう? 今まで経験上ダンジョンが二手に分かれていることも、最深部が違う場所であることも無かったのだ」
いつになくヒショは真面目な表情である。その瞳はヒナタを真っ直ぐに見つめていた。軽い気持ちで聞いた話ではあったがどうやらしっかりと聞かないといけない話のようだ。ヒナタは姿勢を正し、ヒショをじっと見つめた。
「その発想が無かったとも言い換えられる。今回もそうだ。最初私はこの場所はダンジョン果てなき森の入り口しか無いと考えていた。……だが、君たちの経験を思い出しさらに入り口、つまり転移ポータルを探し、ダンジョン森の小道を見つけたのだ。これが何かの運命なのだとしたら、君たちこそ攻略すべきだと思ってね」
なるほど、そういうことか。確かにガタガタ林道は入り口が2つあって違う場所に繋がってたからな。
今回は果てなき森と森の小道でダンジョン名も全然違う。ヒショの言うように森の小道が比較的小さなダンジョンなのだとしたら、果てなき森の攻略の練習にちょうどいいかもしれない。……よし、そっちを先に攻略するか。
「森の小道に行こうか。入り口はどこに?」
「こっちだ。ついてきてくれ」
言われるがままヒショについていき木々の間を抜けると目の前に転移ポータルが現れた。ここが森の小道の入り口なのだろう。
「ここが森の小道?」
「ああ、そうだ」
確かに入り口は小さいし、見た感じはそれほど長そうなダンジョンには見えないな。ダンジョンの名前からして、森の小道と果てなき森なら果てなき森の方が絶対に長いダンジョンであることは間違いない。このダンジョンが長いとそれだけ果てなき森の長さも推し量れる。……長くないといいんだけどね。それじゃあ攻略といこうか。
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森の小道 1階層
――
ふむ、1階層ってことは上に上がるダンジョンなんだな。……周囲の景色って結構高いところまで森が広がっていたような気がするな。それが森の小道だとすれば嫌だし、果てなき森でも嫌だわ。……はぁ、先が思いやられるね。
tips:
森の小道
果てなき森の近くにある小道。どこかの森に繋がっているようだ。




