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プロローグ


「うひゃー。やっぱ外は寒くてしょうがないや」


 吹き付ける外気に小城日向おぎひなたは思わず顔をしかめた。外の気温は氷点下であり、ちらほら雪が散らついている。そんな日に外に出るような人はあまりいない。こういう日は暖房のきいた家の中で過ごすのに限る。だが彼は家の外へ出ていた。理由は簡単である。彼は最短距離を心がけながら最寄りの家電量販店へ歩いていった。


 家電量販店のエスカレーターで数階昇った先に彼の目指すものがある。このフロアは主にゲームを取り扱っており、この日は数量限定の福袋が売られていた。そう彼の目的はこの福袋なのである。

 POPには1人ひとつまでと書かれている。並んでいる赤いその紙袋をサッと見渡してからひとつ手に取った。ずしりとした重みを感じる。その重みが彼の期待を大いに膨らませた。いったいこの福袋にはどんなゲームソフトが入っているだろうか。そんなことばかり考えながら彼は会計を済ませ足早に家へと帰るのであった。




「……いやあ、これはミスったなあ」


 帰宅するなりすぐに福袋の封を開けた日向は中身を目の前に並べ渋い表情である。目の前に並べられたゲームはそのほとんどが今年度に発売された最新作であり、福袋としては豪華なラインナップと言えよう。

 ではなぜ彼は渋い表情なのだろうか。それは目の前の棚に同じゲームが並んでいるからに他ならない。要はダブついたのだ。


「これは持ってて、これも持ってるな。……ってことは持ってないのはこれだけ……か」


 日向の手元には“トレジャー・ダンジョン 〜隠された光と禁忌の調べ〜“とパッケージに書かれたVRゲームがあった。これは確か3年ほど前に発売されたダンジョンRPGである。良く出来たゲームだとは言われているが、不幸にも大人気シリーズの最新作が発売された次の日に発売した関係であまり売れなかったはずである。


「……ま、これもひとつの縁かな。せっかく手に入ったんだ、やってみよう」


 並べたゲームソフトを一旦福袋の中に入れ日向は手元にあるそのゲームソフトをハードに読み込ませた。心地良い起動音とともにハードが立ち上がる。ヘッドギアを装着した日向はひとつ深呼吸をしてフルダイブ専用のマシーンに搭乗しタイトル画面のSTARTボタンをしっかりと押し込んだ。





 夜……だろうか。辺り一面が闇に染まっていた。暗くて自分がどんな姿をしているのか分からない。始まりにしては不穏だが不思議と恐怖はあまり感じなかった。


「…………聞こえますか?」

「ん? 聞こえますか?」


 どこからか声が聞こえた気がした。振り返ると一粒の星がきらめいていた。どうやら声をかけてきたのはこの星のようである。


「あなたの名前を教えてください」

「……ヒナタ」

「ヒナタですか。良い名前です」


 名前とは恐らくゲーム内での呼び名のことだろう。彼は大抵ゲーム内での呼び名はヒナタに設定していた。それは自分の名前をカタカナ表記にしただけの至極シンプルなもの。結局使い慣れたものが一番良いのだ。


「あなたの好きな色を教えてください」

「緑……かな」

「あなたの好きな数字を教えてください」

「……数字、……7?」


 聞かれるがままヒナタはその質問に答えた。恐らくこれは意味のある問答であり何か大事なことがこれで決まるに違いない。先に攻略サイトを見ておくんだったと答えながら少しばかり悔やんだ。


「……これが最後の質問です」


 ヒナタの目の前には色とりどりの球体が浮いている。球体は7つありそれぞれ色がついている。透明があることから虹では無さそうだ。


「直感でひとつ手に取ってください」

「……直感」

「手に取りましたね。彼はあなたの良き味方となるでしょう」

「……味方となる?」

「これで全ての準備が整いました。それではヒナタよ、旅立つ時です」



tips:

『ノヒン島』

このゲームの舞台となる孤島。数多くのモンスターたちが暮らしている。

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― 新着の感想 ―
好きな色は結構自由に、なんならカラーコードを言ったら超細かく設定出来るのかなとか 好きな数字は2桁以上でも行けるのかなとか 設定だけでも色々想像を広げると面白いよね、読み物の醍醐味 1から10にする…
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