〈2〉 あまり良くない
『ねぇ、どうしたの?』
そう聞いてきたのはお母さんだった。
僕はお母さんに話そうと思えば夢の中の
あのいつもと違う悲しい感じのお母さんが重なって見えて言いづらかった。
『なにかあるなら言いなさい。』
はっとするとお母さんが、かがんでいつもとは違う真剣な目でこちらを見ていた。
僕はそんな母の様子に戸惑いながらも
『実は、なんか今日変な夢を見たんだ。』
『どんな?』
すかさず聞いてきたお母さんに更に戸惑いながらも僕は続ける。
『…』
続けようと思ったんだ。
でも何故か
言葉が出てこない。
僕は気持ち悪い感覚に襲われ、
『ううん、何もないよ。』
そう言いながら僕は朝ごはんに手をつける。
『そう』
ここで何も聞かないでくれてほっとする。
いつも通り美味しい朝ごはんだ。
今日は観察をしたら何もしないでおこう。
そう心に決めながら見送りをする。
お母さんは今日はお仕事休むと駄々をこねていたが、僕がなにかオカシイことがあったらすぐにこの鳥を飛ばすということを条件に何とか説得して行くことを約束させた。
『じゃあ、行ってきまーす。』
いつもより沈んだ声でお母さんはお仕事へ行った。
観察も終わり、ぼーっと窓の外を見ていた。
今は木も色づき、ススキが海の様に波うち、空が霞んで見えた。
あれ、海って何だっけ。 また頭の中がオカシくなっていく。
これ以上考えてもなにも出てこないと自分に言い聞かせて僕はあまり好きではない本を読み始める。
夕方になった。
何だかふと空を見た。
赤と藍色が綺麗にグラデーションしていた。
ふと思う。
自分は何故生きているのだろう。
死んだらどんな感覚なんだろう。
この空は見れないのかな。
死んだらその先はなにもないのかな。
凄く怖い凄く怖い凄く怖い凄く怖い凄く怖い凄く怖い。
『ただいまー。』