〈1〉 いつもの日
僕のお母さんは世界でたったひとりの魔法使いだ。
『おっはよ〜』
台所を見るとミルクティー色のちょっとクセ毛な髪がふわっとこちらに回る。
『今日の朝ごはんは何でしょーう?』
『パン 目玉焼き ベーコン サラダ』
僕がするりと答えるとお母さんはその菜の花の様な大きい目を
見開き、拍手をしながら
『おぉー すごい!! なんでわかったの!?』
と、聞き 僕は
『匂いに決まってる』
そんな会話をしながら僕は朝食を頬張る。
素朴な味だけど凄く美味しい。
僕はお母さんに目を移す。
リリー・フォントワード、彼女はこの世界唯一の魔法使いだ。
一度 呪文を唱えればなんだって出来る。
火を起こしたり、物を動かしたりその他もろもろも出来る。
そんな彼女は何かとべったりな過保護お母さんだ。
『さてと、僕は研究の続きでもするよ。』
僕はお母さんの魔力で通常とは違う育ち方をする植物について
研究をしている。
『もー 今日はママお仕事だからいいんだけどー』
僕はこの家を出ることを禁止されている。
理由は知らない。
まぁ庭から出なかったらいいことだし、家の周りは森だからいいんだけどね。
『じゃあ♡ お仕事行ってきまーす♪』
『行ってらっしゃーい』
さぁ 今日ものんびり過ごしますか。
それから観察、昼食、お出迎え、晩御飯、お風呂、就寝が
同じ様なテンポで進んでいく。 のんびりした生活だ。
久しぶりに夢を見ていた。
昔の記憶だ。
同じくらいの子供が周りで何か言っている。
『〇※☆□◇…』
机の上には花瓶があり、一輪の花が差してある。
先生に叱られている自分を皆が笑ってる。何故?
お母さんがなにかを泣きながら言っている。
いつも暖かい背中が何故か冷たい。
『おっはよ〜』
台所に行くとミルクティー色のちょっとクセ毛な髪がふわっと
こちらに回る。
『今日の朝ごはんは何でしょーう?』
『… あ、うん
あ、えっと、あぁ パン、ハムエッグ、サラダ』
僕は今日見た夢を忘れられなかった。