赤魔と俺と精霊騎士03
結論から言うと、龍倒れるまで2時間ちょっとかかった。
その間、お嬢は龍に毒を盛る魔法を使ったり、また全身を焼き払ったり(これはダメージを与えているわけではなくて、大火傷させているらしい)などしていたし、ロートハルトは手慣れた様子で範囲攻撃を切り伏せて捌いていた。
そして、俺は特に何もしていなかった。普通に、足手まといだった。なるべくロートハルトの近くにいるのが安全だった。
最後恐らく毒のスリップダメージで倒れたと思われる龍に、若干同情した。現世でホイホイでゆっくり命を落とすあの虫を思い出した。
◇
「そう、そこに名前書いて。何?生まれ年?良いわよそんなのテキトーで。どうしてもならロートハルトと同じのを書いておきなさい!」
龍退治から数日後、正式にアンタたちを雇います!と宣言したお嬢が持ってきたのは2枚の紙だった。(ロートハルト曰く)王族のみが使える契約書だというその紙に名前など諸事項を書くと契約が成立。主従として軍団入りする。これに違反することは罰を伴うそうだ。
「いやー、白魔1人いると楽になりそうね。これからは治療だって仕事として請け負えるし!」
「請け負うの俺なんですけど!?」
『諦めろ、クロード。お嬢様の言う事だぞ。』
「そうよ、私のいう事よ?」
特に何をしていたわけではないが、あの龍を倒したことで経験値が俺にも入ったのだ。あの後、頭の中に閃いたのは回復術だった。念話以外にも魔法らしいものが使えるようになったのは大変喜ばしい。しかし、俺より喜んだのはお嬢とロートハルトだった。どうも、この白魔法使いというのはどれだけ数がいてもいすぎるという事はないらしい。日々の小さなケガから戦闘での重症まで____、が目下の目標だ。
『精霊として戦うのにもだいぶ慣れた。次はあの位の龍なら単騎で討伐したいな!な、クロード!』
「いやいや、もうデカい獲物はしばらくおなかいっぱい!」
もう1つ変わったことがある。
戦闘中の売り言葉に買い言葉、「名前変えないか?」「龍倒せたらな!」はどうもロートハルト的には立派な報酬と対価だったようで。彼は龍退治の報酬の分け前で改名機を購入して俺に渡してきた。
『クロダ……クロ……うーん。』
「ノアなんかはどう?同じ"黒"よ?」
『____いや、決めた。クロード。クロードだ!昔にそういう王がいたと文献で読んだ。縁起の良い名前だ。』
まあ、俺も剣と魔法のファンタジー世界で「黒田」という日本語名を背負うというのもイマイチ冴えないなと思っていたのもあり。
こうして。
白魔法士クロードとして今度こそ人生2回目を開始したのだった。