その男、精霊騎士3
案内しようか、と気さくに話しかけてきた騎士を片手で制して天空に向かって声を投げかける。
「神よ、答えたまえ(テレフォン)!」
頭の中に『この術式は一度しか使用できません。間違いありませんか?』と問いかけが聞こえた。躊躇いなくYES。今使わずしていつ使うのか。
間違いないと認めた瞬間に、視界がだんだんと暗くなる。暗くなるのが止まったころに、ある意味聞きなれた爺さんの声が聞こえた。
『やけに連絡がはやいが、何かあったかのう。』
「何かじゃないが!?このイケメンはどういう事だ!俺は黒髪ロング長身美人のお姉さんを頼んだはずだぞ!」
『はて。』
「はてじゃないが!?」
『注文通りにやったぞい儂は。お主の言動を思い返してみろ。』
~回想シーン~
俺「じゃあ黒髪の《美人》を魂のパートナーに付けて剣と魔法の世界に転生させてください。他には何も望みません。ロングであれば最高です。靴舐めましょうか?」
『そうじゃ。』
「ま、まさか…………。」
『性別までは指定しとらん。後儂、神じゃから生き物の雌雄判別とかは、ちょっと。』
「くっ個体識別はできるくせに____ッ!!」
『用件は以上じゃな。またのご利用をお待ちしております。』
「今からでも女の子にはなりませんかッ!!!!」
『ならん。』
視界が急速に色を取り戻していく。どうやら異議申し立ての時間は終わったらしい。しかし俺はまだあきらめない。この世界のどこかには黒髪ロング長身美人の女騎士がいてもおかしくないのだ。世界は広いのだから。
見ててくれ、俺はいずれ推し概念美人とゴールインしてみせるで!俺は神に向かって、関西弁で叫んだ。
「今のは、託宣か?直接神と対話出来るなんて稀だ。貴重な経験だな。」
(元)騎士、(現)剣の精霊が興味深そうにこちらを見ている。異世界人が神と交信しはじめたらそれは、そうなる。俺なら警察を呼ぶが、この世界では彼がそうなのだから、もうえらいことだ。
「いや、今のは別に。それで、なんだっけ?」
「近い町に行きたいんだろう?案内するぞ、この草原も、近い町も俺の地元だからな。」
◇
「これから俺たちが向かうのはスールという街だ。王都には劣るけど、賑やかでいい所だよ。」
「そうなんだな、前見てくれ。」
「今は秋の収穫祭の時期だ!街中派手に飾られていて、楽しい。」
「よくわかった!前見てくれ!」
「騎士になってからは王都にずっといたから、帰るのは久しぶりだな!」
「話を聞け!!!!!」
犬のような化け物(ロートクリフ曰く、魔物)が低い声で唸る。
あの後、草原を走っていた馬(※野生)を長きにわたる争いの末懐柔して、騎乗。しかし普通にその後魔物にエンカウントし、馬ともども命のために逃げている。
「crash」
前方に手を伸ばして、一言ロートハルトが静かに唱える。半透明の剣のようなものが魔物を両断していく。この手に限る。
「もうすぐだ!そのまま進んで!」
木々を抜けて、街道へと飛び出す。視界に入るのは白と黒の飾りに彩られた沈む町。
ある騎士の故郷_____スール。