幕間 女子会2
男子会を行った次の日、サラちゃん達も女子会をするんだそうだ。
けれど、どうして男子会の次の日なのだろうか?
はじめに聞いた時は不思議に思ったが、そんな疑問はすぐに解けた。いや、解けてしまった。
「ねぇ、やっぱりオレ、席を外したいんだけど……?」
「もう。男なら決まった事にグチグチ言わないの」
「いや、男だから席を外したいんだけど……」
そう。今回はなんと女子会にオレまで参加する事になったのだ。
会場はサラちゃんの屋敷にある鏡張りの部屋。
鏡越しとはいえ、オレは女の子達からの視線を一身に受けており、いたたまれない。
「玉木は最近、男性陣とは仲良しだけど、女性陣との会話が少なすぎるわ。仲間とのコミュニケーションは大事よ?」
「ここまでの気遣いがないと女性と会話も出来ないとは。貴方の元の世界での交友関係が容易に想像つきますね」
相変わらずフローラさんは容赦が無い。いや、その通りだよ? 確かに男と絡む方が圧倒的に多かったけども。
だけど、ここではしょうがなく無い? ただでさえ年齢も性別も違うのに、オレの声も姿も認識出来ないんだよ? 難易度高すぎじゃない?
「玉木様……。私達と仲良くなるの、イヤなんですか……?」
クレアちゃんが目に涙をたたえて見つめてくる。ここまでの事態になったのも、彼女とサラちゃんの2人に涙目で迫られたからだ。
そんなの、断れる筈がないじゃないか……
「ピィ……ピィ……」
「はい! 仲良くしましょう!」
「クレアちゃん、意外と強かですね。あの押し方は勉強になります」
「マリア。貴方、これ以上押しを強くしてどうするつもり? だけど確かにクレアさんは意外と……。あら? でも、クレアさんは玉木さんに言われたから素直になったのよね? この状況って、実は玉木さんの自業自得なのでは?」
「リリー様……。その結論はあんまりです……。玉木様が気の毒ですよ……」
エレナちゃんがオレに同情してくれる。
そうなんだよ。オレは無理矢理巻き込まれただけなんだよ。女性陣は想像以上に我が強くて大変なんだよ。
「エレナ。今日は玉木だけじゃなくて貴方の歓迎会も含んでいるからね。貴方もこの機会にもっと皆と仲良くなりましょ?」
「は、はい!」
そう言って顔を赤らめるエレナちゃん。
これ、何度見ても慣れないなぁ……
「あ! 玉木様が変な顔してます!」
うえぇ!? 嘘!? そんな変な顔してた!?
「あぁ……そう言うことかい……。サラ嬢がいつも言ってるのは玉木のこういう行動なんだね」
「えぇ。玉木は思った事がすぐに顔に出ますからね。誰でも思考を読めると思います」
フローラさんの言葉に内心焦る。
マジか。営業してた時はそんな事ーーいや、お客さんと出会う前には身嗜みのチェックもきちんとしていたからな。その時に鏡で表情も確認してた。
何より営業は仕事だ。仕事モードでいる時と普段とではオレの思う以上に違うんだろう。
「……サラ様とエレナさんに反応した……? 何やら同類の気配を感じますね……」
感じないでそんな気配! 自分でもリリーちゃんを笑えない事は薄々気付いているけども!
「ふむ。動揺しても顔が更に青くなることはないのですね。では、そもそも怒ったりした時はどうなるのでしょうか? 青い顔が赤くなるのでしょうか? そもそも魔人の血は赤いのでしょうか?」
マリアちゃんは鏡の中のオレを凝視している。やめてね? オレの血を見たいとかスプラッタな事は言わないでね?
「玉木様、一体何を考えていたんですか……?」
エレナちゃんがドン引きしてる。
そんな……。唯一オレの味方をしてくれそうな子だったのに……
い、いや。まだ挽回出来る筈だ。
「あ、何か書いてます!」
クレアちゃん? 実況しなくて良いよ? 動物園のパンダの気分だ。
『いや、変な事を考えてた訳じゃないよ。エレナちゃんはサラちゃんの事ホントに好きだよなって思ったんだよ。主が好かれてるのは嬉しいからさ』
「あ! エレナ様ズルいです! 私だってサラ様の事大好きなのにぃ!」
「ええ!? い、いや……競うものじゃないんじゃ……」
クレアちゃんのわざとらしい不満も、エレナちゃんには本気に聞こえたようだ。
サラちゃんがクスクスと笑いながら指摘する。
「エレナ。クレアのは冗談よ?」
「え!? そうなんですか?」
「はい。勿論サラ様の事も大好きですが、私は友達になった皆さんの事も大好きですから」
満面の笑みで答えるクレアちゃん。うん。これは乙女ゲーヒロインだわ。
「あ! 玉木様また変な事考えてますね!」
クレアちゃんよく見てるねぇ……
「まぁ、コレは仕方ありませんね」
「そうね。まさか女の子相手で鼻血が出そうになるとは思わなかったわ」
「そ、そうですね……。流石に照れますね……」
マリアちゃん、リリーちゃん、エレナちゃんの3人娘も照れている。だよね? 今回はオレ、悪くないよね?
だが、彼女らを見て自己弁護していると、その隙にサラちゃんが畳み掛けてくる。
「クレア? 玉木ともっと仲良くなりたいわよね?」
「? はい。仲良くしたいですよ?」
「私やゼリカさんとはよくじゃれてるじゃない? なら、玉木にも抱きついたりしてみたら?」
ちょっ!? サラちゃん!? とんでもない提案しないで!?
「ええ!? さ、流石に男の人相手にそんなーー」
そうそう。クレアちゃんは女の子。流石にそんなことーー
「……待ってください。もし、玉木様が照れた場合、あの青い顔は真っ赤になるのでしょうか? それとも、更に青くなるのでしょうか?」
ちょっと!? マリアちゃん、余計な疑問を持たないで!?
「……想像出来ないわね……。エレナ。貴方はどう思う?」
「私も分かりません。頬っぺただけが赤くなるのでしょうか?」
不味い! リリーちゃんとエレナちゃんまで興味を……。このままでは「試しに抱きついて」とか言いかねない。
こ、ここはサラちゃんとフローラさんに話を振らなきゃ!
大急ぎで筆を走らせ皆んなの注目を2人に集める。
『サラちゃんとフローラさんならオレが照れた所も見てるでしょ!? 2人に聞けばすぐにわかるよ!』
「まあ、そうですね。見た事はありますね」
目線を斜め上にして、何かを思い出しながら答えるフローラさん。
だよね! よし、これで彼女らの興味はそっちにーー
「でも……良いのかしら?」
サラちゃんがいたずらっ子のようにニマニマとしながら聞いてくる。
その姿に身の危険を感じ、筆をとることも忘れて聞き返す。
「サラちゃん? な、何かあるの?」
「貴方が1番照れてたのってーー召喚された次の日の朝よ?」
……あ。
あの日、魔人と遭遇してパニックを起こしたオレはサラちゃんにーー
ぎゃあああああ!! オレのトラウマがぁああああああ!!
「サ、サラ様! 玉木様が悶絶してます! 顔が真っ赤です!」
「答えが分かったわね。でも、どうして青肌なのに照れると顔が赤くなるのかしらね。血が赤いなら肌も赤みがかっている筈よね?」
「リリー様。魔人は人の感情を基に生まれるんですよね? ひょっとして、人と同じように感情を表す為なんじゃないですか?」
「あぁ。そう言うことかい。もしもエレナの言う通りなら、食事の必要の無い魔人に口があるのも納得だね」
「成程。生きる為の機能ではなく、感情を表現する為の機能という事ですか? 確かにそれならリリーの疑問も解決しますね」
オレが羞恥に悶えている横で、女性陣が興味深い考察をしている。
が、とにかく今はこの場から逃げ出したい。
「サラちゃん! ごめん! 今日はここらへんでーー」
そう言ってゴースト化しようとしたところで、サラちゃんが後ろからおぶさってきた。
「……玉木? これならゴースト化しても逃げられないわよ? 折角の機会だもの。まだまだ会話してもらわなきゃ」
な!? ここで抱きつき!? しまった! これじゃ逃げられない!
「……何というか、こうして見ると想像以上に仲が良いですね……」
「そうね。サラ様、あんな表情もするのね」
「あの様子を見ると、サラ様が玉木様を兄と言う理由が分かりますね」
「フローラは良いのかい? あの状況」
「良くはありませんが……。まぁ、アレもお嬢様にとっては悪い事でもありませんからね。多少は多めに見ますよ」
「むむむ……! サラ様も玉木様もお二人だけで楽しまないでください!」
そうしてその後も存分に弄られまくって女子会は終わりを迎えた。
いつだったか、オレは「サンドバッグにはならない」と決意した。だが、その目標は健闘虚しく空振りする結果となってしまった。




