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幕間 男子会2

 日も沈んで半刻程経ったころ。街の小さな酒場に火が灯り、剛気な声が響く。


「お前ら! 今日はオレの奢りだ! 好きなだけ食え! 乾杯!」


「「乾杯!」」


 今日はロイド君の歓迎会ということで、前回と同じ店を貸し切っている。まぁ、体育祭の時のメルク君の励まし会でもあるが、そこには誰も触れない。本人が言わない以上、こちらも黙っていた方が良いだろう。


「しかし、対抗戦のロイドは見事だったな。アレはオレやゼリカでも見た事がない技だった」


「そうですね。まさかあんな撃ち方をされるとは思いませんでした。油断はしていなかったのですが、あそこまで追い込んで負けるとは……」


「ふふ……。君達から一本取れたのは嬉しいな。まぁ、実はアレーー玉木君のお陰なんだけどね」


「玉木さんの? どういうことですか?」


「僕の矢に細工した学生がいた事は話したろう? あの時に玉木君に言われたんだよ。『意図して曲げられないか』って。その後に色々と試していたら、曲がる法則がなんとなく分かってね」


「……それが何となく分かるのはお前くらいのものだぞ? ただまぁ、すぐに倒されたオレとしては、戦犯にならずに済んでホッとしたがな」


『カイウス君。君だけは今回、良いとこ無しだったもんね?』


「……わかるぞ? 玉木。お前今めちゃくちゃニヤついているだろう?」


 カイウス君め、人聞きの悪い事を。オレがそんな表情をする訳ないだろう。


『ニヤついてなんていないよ。満面の笑みはしてるけど』


「なおタチが悪いわ!!」


「玉木。そもそも、ロイドにだけアドバイスするのは不公平じゃないか?」


 ん? シルヴァ君は何やら不満げだな。アドバイスになったのはただの偶然なんだけどな。けど、


『おやおや? シルヴァ君は負けた理由を人の所為にするのかい?』


「くっ! お前……。さては先日の事を根に持っているな!?」


 やれやれ。シルヴァ君は何を言っているんだ。

 確かにこのあいだ。オレはゼルクさんに投げられまくった。だというのに、誰も助けてくれなかった。

 だがね? このオレがそんな小さな事に拘る訳がないだろう。


「ピッピィ~♪」


「「ワザとらしい否定をするんじゃない!!」」



「ダハハハハ! ホントに仲良くなったもんだな」


「ホントですね。それにしても玉木さんって、シルヴァ様が最初に話してた通り、仲良くなると話しやすいですよね」


「そうだね。初めて見た時は少し怖かったんだけどね」


「ダハハ! 少し怖いくらいなら良いじゃねぇか。オレとシルヴァなんざ、最初はサラ嬢の命を狙う魔人って認識だったからな。警戒どころか敵対心まであったんだぜ?

 それが今や命の恩人で仲間なんだからな。世の中不思議なもんだ」


「僕もそうですね。マリアも僕も、こうして無事でいられるのは、間違いなく玉木さんのお陰ですから」


「なんだかんだで僕もそうだね。僕も対抗戦の時だけじゃない。そもそもエレナと仲直り出来た事も、色々と話を聞いていると、彼の影響が強いみたいだからね」



「そういえば、ロイドは最近エレナ嬢に親切だな」


 オレとカイウス君とのコントを終え、シルヴァ君が話しかける。


「勿論だよ。僕は彼女を散々傷付けたからね。僕に出来る贖罪ならなんでもするさ」


 そうか。それを聞いたらきっと彼女も喜ぶだろーー


「例えば、彼女が誰かに恋をしたとしたら、僕は喜んでその恋を応援するよ」



 ……は? ロイド君、何言ってんの?

 思わず固まってしまうが、戸惑っているのは他の皆んなも同じようだ。


「ロ、ロイドさん? エレナさんには好きな人がいないんですか?」


「そうだね。彼女にはそんな素振りは無い。

 仕方ない。僕のせいでずっと苦しんでいたからね。恋愛なんて二の次だったんだろう。

 だから迷惑をかけたお詫びに、彼女に想い人が出来た時はーー婚約破棄をした上で、彼女の実家の援助をするつもりだよ。幸か不幸か、僕にはそれだけの資金を得られる能力があるからね」


 そう言って寂しげに笑う。

 いやいや、何言ってんだ。エレナちゃんがロイド君を好きなのは一目瞭然じゃないか。君、元女タラシだろう? 女性の機微には敏感な筈じゃないの? 何を鈍感系主人公みたいな事を……


「師匠? ロイドのコレってーー」


「多分、エレナ嬢への罪悪感が強すぎるんだろうな」


「罪悪感? ということはつまり……あんな酷いことをした自分に惚れる筈が無いと……? そんなバカなことがーー」


「カイウス。アイツの曇りなき眼を見てみろ。アレはシルヴァと違って、完全に気づいてねぇ。

 恐らく、普通なら脈アリにしか見えない行動も、今のロイドには受け入れられないんじゃ無いか?」


「エレナさん……最近ロイドさんに優しくしてもらう度に幸せそうでしたよね?」


「そうだな。つまり……エレナ嬢も自分の気持ちが伝わっていない事に、一切気づいていない可能性が高いな」


 うわぁ……。エレナちゃん、二重に可愛そうな事になってんな……



『これ……オレ達が伝えるべきですかね?』


「いや……。多分、ロイドの中でエレナ嬢への贖罪が終わるまで、オレ達の言には耳を傾けないんじゃないか?」


「エレナ嬢に伝えるのは?」


「シルヴァ……。ずっと苦しんいでたエレナ嬢は今、ようやく幸せそうな顔をしているんだ。お前はその顔を再び曇らせることが出来るか?」


「……そうですね」


 なる程。これは詰んだな。オレたちに出来る事はもう何もない。



「皆? 僕をノケモノにしてコソコソと話をしないでくれないかい?」


「いや、そういう訳ではないんだが……。

 まぁ、あれだ。ロイドはエレナ嬢と仲良くな?」


「勿論です。僕はもう、2度と彼女を傷付けませんよ」


 あ、うん。そうだね。



「……なんか、エレナさんにシンパシーを感じますね……」


 メルク君が哀愁を漂わせて呟く。そうだよね。君の婚約者も大概だもんね。体育祭での話を聞いた時はオレも言葉が無かったもの。今のエレナちゃんに仲間意識を感じるのも当然だよね。


「あー……。なんだ、その……。

 メルク。今日は思いっきり呑んでいいぞ? そう思って今日は多めに支払ってるからな」


「ちょっ!? イヤですよ! もうあんな事はーー」


「何の話だい?」


「ロイド。お前もいずれ知る事になるから言うが、メルクは酔うと人格が変わるんだ」


「カイウスさん!? やめて下さい!僕は今日はもう呑みませんよ!」


「前回は止めるのに時間がかかったからな。だが、今回はカイウスも無事だしロイドもいる。前回以上の速度で抑えてみせるから問題ないぞ?」


「シルヴァ様が問題無くても僕がイヤですよ!」


『オレもいつでも水を飲ませられるよう、こうして側に水差しを持ってるからね』


「持ってるから何なんですか!? 意地でも呑みませんからね!?」


「……そこまで言われると見てみたいね……」


「ロイドさん!? やめて下さい! 酒瓶片手に近づかないでください!」



 その後、絶対に酔いたくないメルク君と、酔わせてみたいロイド君とで一悶着あった。だが、メルク君がこれ以上の飲酒を回避出来たことで、今回の男子会はつつがなく終われた。


 しかしその代わりに前回の詳細をロイド君に話すこととなった。メルク君のトラウマが少し深くなった気もするが、気のせいという事にしておこう。

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