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体育祭 終わって

「ファハハハハ! 戻ったぞ!!」


「ただいま」


「帰ったか。二人共」


「おぉ! フォウ殿!」


 グリアグロウとキャロルは偵察任務を終え、自分達の隠れ家に戻ってきていた。


「どうだった? 神鏡の様子は?」


「うむ。守護騎士の召喚は出来てはいるようだがーーまだまだ未熟だな。複数の事を同時にするだけの練度は無い」


「他のやつらもお遊戯みたいな実力。私やグリアグロウでも勝てる」


「成程。ドゥーク、ガスクと立て続けに妨害されたから慎重に、と思っていたが、そこまででもないか」


「いや。そうとも言い切れん」


「なに?」


 二人の報告に安心しかけたフォウだったが、グリアグロウから待ったがかかる。


「偵察中、ワシは何者かの視線を感じた」


「なに? キャロルは気づけたか?」


「全然。最後までわからなかった。こいつが嘘をついてないなら、私には認識出来ないやつがいたってこと」


「……それは守護騎士の力か?」


「わからんな。守護騎士の使い手は、ワシらを気にしている素振りは無かった。こちらから話しかけてもみたが反応が無かった。反応出来ないのかしなかったのか。判断もつかん」


「ちっ。貴様にしかわからんというのも面倒だな。と、なるとオレやアミーラの力を見極めたのもそれか?」


「断言出来んな。ワシらが校庭を出た時点で、感じていた視線は離れていった」


「どういうことだ?」


「ついてこられても面倒だからな。校庭を出て暫く歩いた後、走って距離を取ろうと考えたのだ。だが、それをするまでもなく、視線はどんどん感じなくなった。恐らく、校庭から出てこなかったのだろう」


「……ついてこなかった? 巻けたということか?」


「いや。文字通り、追ってこなかった。その理由はわからんがな」


 フォウは苦虫を噛み潰したような顔をする。グリアグロウの報告は今後を左右するほどの重要なものだ。だが、それはわからないものがいる事がわかった。というだけである。これでは思い切った行動も出来なかった。


「つまり正体不明の何かがいる。だが、そいつの能力も、目的も不明ということか?」


「そうだな。校庭からワシらについてこなかったのは、ついてこなかったのか、これなかったのかもわからん。そうなると、目的も断言出来ん。それに守護騎士と関係があるかどうかも分からん」


「ちっ……。どこまで面倒なんだ。せめて守護騎士に関係あるか無いかだけでも分からんのか?」


「無理だな。情報が無さすぎる」


「はぁ……。分かった。とりあえず頭にはいれておく」



 …………



 体育祭の次の日、オレとフローラさんは傀儡魔人と洗脳魔人について、報告をしていた。


「そうか……。ありがとう。フローラ、玉木。まさか魔人が偵察に来ているとはな……」


 王子の言葉にゼルクさんが頷く。


「そうだな。だが、油断してくれたなら儲けものだったな」


「そうですね。当初の目的だった神鏡のアピールも出来ましたし、これでオレ達の実力を見せる事もないでしょう。そうなると、このタイミングで行えたのは幸運でしたね」


「全くだ。しかし……傀儡魔人の本体が、まさか玉木に気づくとはな」


「はい。それに幻覚魔人の幻覚。まさか人の声にまで幻覚効果を持たせるとは。玉木。幻覚を見せていた生徒については調べたか?」


「ピッ! ……ピッ! ピッ!」


「ん……? 調べたーーけど?」


 オレの笛の音に顔をしかめる王子。説明の為、いつものように筆記で答える。


『幻覚魔人が帰ったあと、学園の生徒達を確認したけれど……声が聞こえない生徒は特にいなかった。多分、解除したんだと思う』


「解除した? てこたぁ……音に幻覚能力を持たせる力は無制限、って訳じゃなさそうだな」


「その可能性は高いですね。デメリットが無いなら、わざわざ解除する理由がありませんからね」


「そう思わせる事が目的とか?」


「いや。ねぇな。それならいっそ全校生徒ーーいや、全国民にすればいい。そっちの方が後々楽だ。それが出来ない理由があるとしか思えん」


「なら、幻覚魔人については今まで通り、玉木に聞こえないものを中心に警戒すればよさそうですね」


 うん。そうだな。国中の音で幻覚が見せられるなら、それこそこんな回りくどい事せずに、国を制圧するよな。それなら国中の兵も上手く抱えて第3勢力に備えられる。けど、それをしないってことは多分、出来ないんだろう。



「あとは傀儡魔人か……」


「玉木の視線に気づいたとの事だったがーー今後は玉木が認識した時点でバレるんじゃないか?」


「カイウス。それはつまりーー望遠鏡などで遠方から確認した場合も、ということか?」


 王子がカイウス君に問いかける。その言葉にロイド君も賛同する。


「確かにそうかもね。話を聞く限り、傀儡魔人は相当イレギュラーな奴なんだろう。なら、その可能性も考慮した方がいいと思う」


「ロイドさんの言う通りかもしれませんね……。まぁ、それでもイレギュラーな魔人という意味では、玉木さんを超えることはありませんけどね」


「ハハ! それもそうだな! 向こうも多分、相当に混乱しているだろうな!! いい気味だ!!」


 王子が楽しそうに笑う。彼はここ最近、子供のように笑う事が増えた。多分、仲間の前でだけなんだろうけど。

 それでも、その姿はなんとなく、オレやフローラさんと一緒にいる時のサラちゃんとも似ている。ちょっと年相応な所が見えて安心するな。


「……玉木?」


「サラちゃん。今回は変な事を考えている訳じゃないよ。親目線でほっこりしてるだけ」


「……それ、充分変な事よ?」


「あ! サラ様ずるいです! 私も玉木様が変なことを考えているのを当てるゲームしたいです!」


「いや、クレアちゃん……そんなゲームしてないよ?」


「クレア。玉木が今度一緒に遊ぼうって言ってるわ」


「ホントですか!?」


 いや!? 言ってないよ!?


「ピッ! ピッ!」


「えぇ~……。玉木様酷いです。嘘つくなんて」


「ピィィィィ!?」


「あ。新しい鳴らし方ね」


「おい玉木!! ウチのクレアに嘘ついて傷つけやがったのか!?」


「ピィィィィ!? ピッ! ピッ!」


「その他だぁ!? テメェクレアに何しやがった!」


「ピッ! ピッ!」


「何もしてないのにクレアがしょんぼりするわきゃねーだろうが!! 嘘に嘘を重ねるたぁ、ふてぇやろうだ!!」


「ピ……ピィィィィ!!」



「あの……サラ様?」


「あら。エレナ? どうしたの?」


「どうしたのというか……あれ、良いんですか?」


「クスクス……。そうね。大変ね」


「え?」


「良いのよ。あれ、本人たちは楽しんでやってるんだから。玉木も含めてね」


「そうなんですか!? ……それ、どこまでホントなんですか?」


「あら。失礼しちゃうわね。ま、確かに玉木が言った事とは違う事をクレアに言ったわ。けど、あの子もゼルクさんも、そんなこと分かってるわ。その上でああやってじゃれてるのよ」


「え? そうなんですか?」


「勿論。彼らはもう、とっても信頼し合っているもの」


「……そう、ですか……」


「でも、貴方がそこに劣等感を感じる必要はないわ。貴方はまだ仲間になったばかり。これから少しずつ信頼関係を築けばいいわ」


「あ……。は、はい!」


「うん。良い返事ね」




「おらぁ! 捕まえたぞ玉木!!」


「ピィィィィ!!」


「さて、どう償ってもらうか……。おっ、そうだ! おい玉木! お前も愛を叫んでみろ!!」


「ピィィィィ!?」


「誰の名前を叫んでもらうか……。サラ嬢には悪ぃしフローラはーー」


「私のトラウマになるのでやめてください」


「そうなるとーーおい! いねーじゃねーか!! どうなってんだ!」


 知らねーよ! オレのせいじゃねーよ!


「なら、玉木に稽古をつけてやったらどうだい? 玉木は訓練に参加したことなかっただろ?」


 ちょ!? ゼリカさん!?


「お! 良いな。そうすっか!」


「ピッ! ピッ!」


「うるせぇ! テメェはずっと訓練にも参加せず傍観しやがってーーおい! シルヴァ!」


「分かっています。ジャケットを着せて姿が分かるように……ですね。玉木。お前もオレ達の仲間だろう?」


「ピィィィィ!?」


「そうだな。シルヴァの言う通りだ」


「僕達ばっかり不公平ですもんね」


「偶には玉木君もボコボコにされて欲しいな」


「ピィィィィ! ピィィィィ!」


「ダハハハハ!! 暴れても無駄だ! 観念しやがれ!!」



 こうして、体育祭のドタバタはより大きなドタバタで幕を閉じる事になった。

 因みにオレはこの後、全員の目の前でゼルクさんに投げ飛ばされまくった。畜生……。絶対強くなって、いつか見返してやる……!



 でも、ちょっと楽しかったのは内緒だ。

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