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対抗戦 後半

「メルク君! 絶体絶命のこのピンチ。しかし、その表情には諦めといった感情は浮かんでいないようだ!」


「そうだな。だが、このままじゃ時間の問題だ。シルヴァの攻撃を捌きながらサラ嬢を……なんて現実的じゃない」


「さて、どうするつもりなのか。お手並み拝見とーー」



――ダッ――


「「え?」」



 観客は勿論、実況解説、それにAクラスの面々も声を失う。何をするかと注目していたが、なんとメルクは背中を向けて逃げ出した。


「なんと!? メルク君! ここで逃亡だぁ!!」


「んん? 確かにここで戦っても勝機はない。だが、Aクラスは地形を操る。下手に動くのは悪手だと思うがなぁ……」


 ゼルクの言葉通り、メルクの走る先に壁がせり上がる。

 だが、走りながらも前方に杖を構える。そして、棒高跳びの要領で跳躍する。



――ダンッ!――


「な! なんとメルク君!! 器用にも杖で壁を飛び越えたぁ!!」


「へぇ。やるじゃないか。槍じゃ地面に突き刺さるし、あんな芸当は難しいだろうね」


 壁の上に着地して周囲を見回す。そうしてクレアを発見し、声を上げる。


「南南西、距離50!」


「「なっ!?」」


 そのまま壁づたいにクレアの元へ走ろうとする。が、足場にしていた壁が消え、メルクは宙に放り投げられる。



「くっ!?」


「もらった!!」


――パン!――



「決まったぁー!! メルク君の風船は、殿下によって割られてしまったー!!」


「ま、あの状態じゃしょうがないわな」



「クレア!! さっきのメルク様……! ロイド様に貴方の場所を教えた筈よ!! 射線を切っておきなさい!!」


「はい!!」


 サラが大声でクレアに警戒を促す。そしてそれを耳に、クレアも警戒を強める。意識は、ロイドのいるであろう場所。



――パカラッ! パカラッ!――


「おぉ! クレアさん! 壁を使って馬の位置を誘導しています!」


「そうだな。馬上ではある程度高さがある。そうなると、射線を切る為にも壁の高さはある程度必要だ。だから多分、壁を操るのにかなり集中する必要があるんだろう」


「クレアさんの周囲にだけ高い壁があれば良いのでは?」


「そうだな。ほれ、今は高い壁を作っているだろ?」


「あ! 本当ですね!!」


「さっきまではメルクとカイウスがいたからね。あんな事をすれば、すぐにクレアの居場所が割れてしまう。だけど、今はもうロイドだけ。足音にさえ注意していれば、そんなに問題はないと考えたんだろうね」


「更に、ああして馬の周囲に壁を作って動きを誘導すれば、シルヴァやサラにロイドの動きを知らせつつ、防御が出来る」



 そう。実況、解説の言う通り、完全に射線を切られた以上、ロイドに打つ手はないーー筈だった。



――シュピピピッ!!――


「「なっ!?」」


「おおっとぉ!? 空に幾つもの矢が放たれた!!」


「シルヴァ達はびっくりだろうね。馬の蹄の音を頼りにロイドの居場所を予測してたのに、全く別の所から矢が飛び出るなんてね」



 実はロイド。カイウス達と分断された後、すぐに下馬していたのだ。そして、カイウス達が襲撃を受けた後は手綱を放し、馬を自由にさせていた。そして、クレアの力で地形が変わり、驚いて走り去る馬をおとりにしていた。つまり彼は自身の足としてではなく、4人目の仲間として利用していたのだ



「し、しかし……。何故、あんなところに矢を……?」


「すぐにわかるだろうな」


「え?」


 その言葉通り、空に打ち上げられた矢は、急に向きを変え、そのすべてが壁を越えてクレアに襲い掛かった。


「え!? きゃあああああ!!」


――パン!――



 壁を高くしてしまった事で、クレアはどこから矢が飛んでくるかわからず、気づいた時には真上から幾つもの矢が降ってきたのだ。回避など出来る筈もない。



「き……決まったぁぁぁぁ!! と、いうことはーーな、なんと……! 勝ったのはBクラスだぁー!!」


「「わああああ!!」」



 その言葉に観客席が湧く。敗北が濃厚だったBクラスの逆転劇だ。それも当然だろう。



「見事だな」


「そうだね」


「どういうことでしょうか? そもそも、矢はあんな風に曲がるものなのでしょうか?」


「いいや。普通に矢を撃ったってあんな風には曲がらねぇ。ありゃあ、一部が歪んだ矢を使ったな」


「歪んだ矢?」


「そう。矢を真っすぐ飛ばすには、射手の腕だけじゃない。矢の質も重要だ。矢が歪んでいれば、変な軌道を取る」


「ですが、そのようなものを使う弓術師なんて聞いたことがないのですが……」


「そりゃあそうさ。歪んだ矢がどこに飛んでいくかなんて、熟練でも難しい。それにそんなことをやる意味がない」


「意味がない? 何故でしょうか? 『軌道の変わる矢』なんて聞くだけでも脅威なのですが……」


 ゼリカの言葉に納得がいかないようだ。

 確かに、自由自在に軌道の変わる矢。その言葉だけで恐ろしいもののように聞こえる。


「その脅威がないからさ。威力のない弓矢なんて唯のオモチャだからね。あんな軌道を取った矢の威力なんてたかが知れてる。人に当たっても、まともに刺さりゃしない」


「だから実戦じゃまず使えない。あんなもの、けん制にもなりゃしねぇ」


「だけど、今回の標的は人じゃない。風船だ。威力が弱かろうと、上手く当たれば充分割れるからね」


「それでも、さっきも言ったがこんなもの、訓練するような技術じゃねぇ。だからこそ、それをこんな場面でやってのけたアイツの技量はとんでもねぇって話だ」


 双竜の言葉から、ロイドの技がどれほどのものかを知らされる。


「そ、そうですか……。解説、ありがとうございました。では、お二人共、今回の総評をお聞かせ願えますか?」


「そうだな。まずはAクラス。残念だったな。だが、カイウスとメルクを仕留めた所までは良かった。強いていうなら、あまりにも計画通りにいきすぎたんだろうな。最後の動きは迂闊だったな。クレアは防御に走らず逃げるべきだったかもしれん。だが、これはBクラスのーーというよりロイドの奇策が見事だったな」


「そうだね。サラ嬢という一番弱い駒で、カイウスを仕留めたんだ。これは見事な点だね」



「次にBクラス。カイウスは災難だったな。この地形、カイウスには圧倒的に不利な地形だ。ゲリラ戦で槍は使いづらい。その上、ガチガチに対策されていたからな。

 だが、そんな中、メルクもよくやった。あそこでそのままシルヴァ達にやられていたら、結果は違っただろう。クレアの場所を伝え、更にクレアを狙う事でAクラスの警戒度を上げ、クレアに防御を促したんだからな」


「そしてやっぱりロイドだね。多分、元々の作戦とは違う展開だったんだろうね。けど、分断された時点で下馬して状況把握に努めたのは良い判断だった。もし、馬上であの高さの壁を用意されたら、真上に矢を放つしかなかった。そうなると、あんな芸当は無理だったろうね。それに最後の一斉射撃。ただでさえ難しい軌道が変わる矢。それをあんなに複数。それも全てを命中させる技術には、アタシらでも舌を巻くしかないね」


「成程! 解説ありがとうございました!」



 こうして、神鏡とその仲間達による戦いは幕を閉じたのだった。

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