結束??
「さて、事情をお話しする前に、まずオレの能力について説明します」
「能力ですか?」
こちらの事情を話して理解してもらいたい。だが、それはオレの都合。
二人の目的はまず冤罪を晴らすこと。ならば最初にすべきはオレの有用性を示すことだ。能力なら証明もすぐだしな。
「えぇ。オレはさっき部屋で色々としてましたよね? 自分がどんな力を持っているかを検証していたんです。これから話すのはその結果報告です」
「検証? 先ほどの不気味な奇行にも意味があったという事ですか? 頭がイカれていた訳では無かったと」
不気味な奇行、頭がイカれていた……。フローラさんの言葉に刺を感じるがまぁ良い。
「そうです。結論から申し上げると、浮遊、隠密、透過 の3つです」
そうしてオレは先ほど検証した内容の報告を伝えた。隠密に関しては不明な点も多く、この場で証明も出来ないが、それは後で良い。
「ーー以上がオレの能力です」
「なるほど……。それならばすぐにドゥーク侯爵の尻尾も捕まえられそうですね」
「えぇ。オレに任せてください。これほど大掛かりな悪事。やつらも打合せをする可能性が高いでしょう。なら、その場にオレがこっそりと立ち合えば、やつらを丸裸に出来ます」
フローラさんは何か言いたそうにしている。なんだ? 悪口か? 何を言われるか想像は付くぞ? ドゥークを付け回して丸裸にするとか、やばいストーカーみたいだもんな。
というかなんか凄い敵意を感じるんだよな。ついさっき殺されかけたんだから当然だろうけど。
「では、次にオレの事情です。この話は繰り返す通り荒唐無稽な話です。今日の所は信じていただかなくとも問題ありません」
「わかりました」
そしてオレは話しはじめた。オレが異世界にいたこと。ゲームのこと。サラちゃんやフローラさんの事情を知っていたこと。そして召喚される直前のことだ。色々と推測出来ることはあるがそれは後。今はただ事実を全て話すだけだ。
「ーーこれがオレの知る限りの事実です。オレも色々と推測はしていますが、わからないことが多すぎて結論が出せません」
「「……」」
何も言わずに黙っている二人。だがその態度は対照的だ。
フローラさんはオレに対する警戒感を強めている。オレが嘘を付いているとして、何故そんなことをするのかを考えているのだろう。
逆にサラちゃんは無警戒に考え込んでいる。先ほどの話を全て真実と仮定して、内容を吟味しているのだろう。
「話す前にお伝えしたとおり、この話は信じていただかなくても結構です。証明が出来ませんし、オレがお二人の立場でも信じません。
ですのでオレの希望としては、これからのオレの言動が妙な姿に映った時、この話を頭の片隅にいれて判断して欲しいというだけです。先ほどの部屋での言動がそれにあたります」
「……わかりました。正直、先ほどの話は私たちの常識からあまりにもかけ離れていて、判断に困ります。ですので、この件は保留とさせてください」
こんな話、すぐに信じてもらえる訳がない。しかし幸い、この二人は先ほどの話が真実だった場合と嘘の場合、その両方を吟味してくれているようだ。それも打ち合わせした訳でもないのに分担して。ならば保留という結論はオレにとって最高と考えていいだろう。
「信じていただける可能性があれば充分です。
さて、では当面の目的である、サラちゃんの冤罪について動きましょう。その前に、ドゥークがサラちゃんの冤罪をでっち上げたのはいつですか?」
「いつ? 今朝のことですが……」
え? 今朝? ちょっと待って。さっき外に出たときはまだ昼前だった。ならーー
「わかりました。では、今日はすぐにドゥークの所に向かいます」
「え? ですがーー」
「やつも疑われている自覚はあるでしょう。オレがやつなら今日の夜にでも今後の打ち合わせをして、裁判までは下手なことはしません」
「……そういうことですか。わかりました。では、あの男の屋敷の場所と外観をお伝えします。フローラ、急いで地図を持ってきて」
「お待ちください、お嬢様。禁書室の辺りは人があまり来ないとはいえ、ここでこのまま会話を続けるのは危険です。屋敷の者がこの部屋に気づかないとも限りません」
「わかったわ。では、私の部屋に行きましょう」
「お嬢様!? この魔人を部屋に!?」
「ええ。魔人様のお力は今の私たちにとってとても重要。魔人様がお話してくれた事情が嘘であれ本当であれ、私たちの味方だと信じるしかないわ」
「……わかりました。ですが私はーー」
「えぇ。信じるのは私の仕事。だから貴方は魔人様を疑っていて頂戴? もし、貴方が最終的に魔人様を敵だと判断した時は……貴方の判断に従うわ。魔人様には申し訳ありませんがーー」
「構いませんよ。オレも当面はサラちゃんの冤罪を晴らすために動くだけですから」
「ありがとうございます。では、案内します。フローラは地図を。それから紙とペンを持ってきて」
「分かりました」
そうして案内されたサラちゃんの部屋。
……凄くいい匂いがする。だが、深呼吸などしたら折角ここまで持ち直した信用が台無しだ。冷静に。冷静に。余計な事をしないように。
しかし流石はお姫様の部屋。広いしベッドも大きい。それでも、部屋に置いてある小物は少女趣味な感じではない。シンプルだが品がある。それに高そうな美術品もチラホラしてる。お、アレが印の入っていた机か。印はどこに仕舞っているんだろうか?
「……魔人様? 流石にそのようにキョロキョロとされるのは恥ずかしいのですが……」
まずい! 警戒されてしまう! よし、キョロキョロするのはやめよう!
「あの……。だからといって私を見つめらても……」
なに!? それもそうか! しかし部屋を凝視するのも不味いだろう。ならば……!!
…………
ノックの音にサラちゃんが答えたあと、フローラさんが入ってきた。
「失礼します。む……? お嬢様、魔人はどこに行ったのですか? まさかもう侯爵のところへ?」
「えぇと、その……そちらに……」
「そちら? ……何故部屋の隅に座っているのです? しかも壁の方を向いて……? 見るからに怪しいですね」
フローラさんの言葉が刺さる。分かっている。オレもこれは違うと思う。でも、他に思いつかなったんだ……。可愛い女の子の部屋に入った時、男はどのようにしているのが正解なんだ? 誰か教えてほしい。
「え、えぇと……魔人様、説明をしますのでこちらに来てください。この言動にも事情があるのでしょう? 私も気にしていませんので」
「……はい」
サラちゃんが全力で気を使ってくれる。サラちゃんの優しさに涙が出てくる。しかし、15の女の子にこんなに気を使われる30過ぎの男。情けなくてより一層涙が止まらない。
「あの……どうして泣いておられるのですか?」
「気にしないでください。説明をお願いします」
「……排除したくなるほどの奇行ですね……。やはり貴方は敵なのではないですか?」
こうしてまた、心に傷を負いながら、説明を受けるのだった……