ロイドの調査 チーム分け
ーー玉木達が双竜の家に集まっていたころ、ロイドは街に来ていた。
「ここはいつも騒がしいな。中々落ち着けない」
「フフ……ごめんね。でも偶にはこういうデートもしたくって」
貴族だとバレないように変装し、隣には彼の腕を組む女性。彼らが婚約者同士であれば、これは微笑ましいだけのお忍びデートだ。しかし残念ながら彼女はロイドの数多いるガールフレンドの一人だった。
「……君、こういうところ嫌いだと言っていただろう?」
「あら。覚えてたの?」
「忘れるわけがないさ。僕の記憶力を舐めてもらっては困るね」
ロイドが少しだけムッとしたように彼女を見やる。だが、彼女は愉快そうにクスクスと笑う。そんな彼女にロイドは更に不機嫌になる。
「……あまり子供扱いされるのは不快だね」
ロイドは拗ねたようにそっぽを向く。彼女は美人ではあるが、それでも20代後半といった容姿で、ロイドとは明らかに年齢が違う。ただ、そんなロイドの様子が一層愛らしいのか、彼女は笑い続ながらも理由を語る。
「もう。怒らないでよ。余計な事を考えさせない方が良いと思ったのよ。頭が良すぎるのも考えものね」
「余計なこと?」
プライドの高いロイドは『やはり子供扱いされていたのか』、と苛立ちを隠そうともせずに聞き返す。
「ーー学校で何か、嫌な事があったんでしょ?」
その言葉にぎょっとして振り返る。が、彼女はそんなことはお構いなしと喋り続ける。
「私は所詮、貴方の不満のはけ口だもの。特に今日は合った時からずっと他の事を考えてるんでしょ?」
「っ……」
ロイドは言葉に詰まった。図星だったからだ。
彼は実家や婚約者と揉めた時はいつもガールフレンド達に声をかけていた。特に今日はサラ達の勧誘もあって、頭痛のタネが増えていた。勿論、彼とて平静を装ってはいた。しかしーー
「大人を甘くみないこと。どうせ他の子も私みたいな都合の良い女ばかりでしょ? だけど多分ーー貴方のソレ、隠せてないわよ」
お互い様だし踏み込む気もないけど、と呟いた後、彼女は何事もなかったかのように世間話を始めた。
どうやら舐めていたのは自分だったようだとロイドは顔を赤くしたが、すぐに頭を切り替えるのだった。
…………
ゼルクさん宅での話は続く。
とりあえず当面はオレがロイド君に張り付く必要はなさそうだ。
ただ、Bクラスの面々は色々と大変そうだ。だけどーー
「ねぇサラちゃん。オレは本当に何もしなくてもいいの?」
ロイド君に張り付くのも避けたいが、それでもオレの能力は偵察や諜報向きだ。ここで何もしないと後でフローラさんにいびられそうだーーっと思ってふと、フローラさんに目を向けると、彼女は冷たい視線をこちらに送っていた。
……と、とりあえずサラちゃんの役に立たないとな!
「いいえ。貴方にも仕事はあるわ。というか……本当に何も無いのは双竜のお二人くらいでしょうね」
「じゃあ、私にも出来る事はあるんですか?」
サラちゃんの言葉に、クレアちゃんも話に入ってくる。
「えぇ。ロイド様の調査って言ったでしょ? だから私達も色々と調べるのよ」
「調べる? でも、ロイド様のことはBクラスにってーー」
「ロイドの周囲以外でも色々と調べられる事はあるさ」
不思議そうなクレアちゃんに、王子からもフォローが入る。
「例えば、ロイドの噂や評判だ、彼は振る舞いは目立つけど、それが許されるよう、最大限努力している。ならば当然、周囲からの評判には気を付けている筈だ」
「まぁ、その調査は玉木にお願いするけどね」
「でも、それを聞いてどうするんですか?」
クレアちゃんが頭に疑問符を浮かべている。
まぁ、そうだわな。貴族は評判ーーというか体裁を重視するんだろう。オレだって営業としてやってきたからその辺の感覚も理解出来る。けれど、平民でまだ学生の彼女にはピンとこないんだろう。
「評判にも、良い評判と悪い評判があるわよね? そして、きっとその中には気にかかるものがある筈。例えば、『ロイド様は臆病者の腰抜け』という噂が流れているとする」
「……例え、ですよね?」
「勿論。度胸が無ければ女の子に手を出したりしないわよ。で、仮にそんな噂が流れていたとして、何故そんな噂が出回っているのか。ロイド様はそれを放置しているのか、それとも訂正したくても出来ないのか」
「魔人討伐に参加する事で噂を否定出来るなら、参加理由の一つになるだろう?」
「こうやって、他人からの評判でロイド様の求めるものを分析していくの」
「うーん……。わかるような……わからないような……。じゃあ、これから色んな人に聞いて回るんですか?」
「いいえ。さっきも言ったけれど、これは玉木の仕事よ。流石に私達が聞いて回ったら、ロイド様にあらぬ噂が立つ可能性があるわ」
ふむふむ。確かにただの一生徒の聞き込みに、国の法具の使い手に公爵令嬢。更には皇太子までが動いていたら変な噂が流れるだろうな。まだカイウス君やメルク君の方がマシだろう。
もしもそんな事になって、ロイド君に迷惑がかかったらーー仮に仲間になってくれたとしても友好関係を結ぶのは難しいだろうな。
だからこそ、誰にも見られないオレか。ま、噂話を集めるくらいなら問題ないかな。
と、オレが考えていると、クレアちゃんがうーんと唸ってから改めて質問を投げかける。
「ーー玉木様のお仕事はわかりました。だけど……それなら私たちは何をするんですか?」
「ロイドの周囲はBクラスに任せるとはいえ……いるだろう? 彼に近いAクラスの生徒が」
「エレナ様ですか?」
おや。例の婚約者もAクラスなのか。
彼女もゲームでは悪役、若しくはライバル令嬢なんだろう。だけどサラちゃんは良い子だしマリアちゃんやリリーちゃんもーー。えっと、まぁ、悪い子ではないから……。き、きっとエレナちゃんも癖はあっても良い子だろう。
……多分。
「その通りよ。それに勧誘の時、彼女は私達とロイド様にあらぬ疑いを持っていたでしょ?」
「あ……」
サラちゃんの言葉にクレアちゃんが顔を青くする。そういえば……エレナちゃん視点だとこの間の場面は『女好きで浮気性な婚約者が女子二人を人気の無い所に連れて行った』になるのか。それは……不味いな。全員が不幸になるやつだ。
「こういうのは、早めに誤解を解いておくべきだと思わない?」
「そ、そうですね! 私、そんな誤解をされたままなのは嫌です!」
サラちゃんの問いかけに必死に頷くクレアちゃん。その勢いは頭の上のリボンがどこかに飛んでいきそうなほどだ。
そんなクレアちゃんをよそに話はまとまった。オレ達は3つのチームに分かれ、2週間ロイド君について調査する。
そしてオレの仕事はーー人の噂に聞き耳を立てる事だ!
……しょっぺぇ内容とか思ってないし……




