表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/113

フォウ1

(完全に無駄足を踏んだ。わざわざ出向いておきながら、あの男の始末のみで帰還することになるとはな。奴らも騒ぐだろうな。面倒だ)


 憂鬱とした気分になりながら扉を開ける。


「戻ったぞ」


「おぉ、フォウ殿! 帰ったか!!」


「ちょっと? なんであんただけ? 人質はー?」


「……人質は既に救出されていた。無理やり攫えば、余計な警戒を生む」


「は? なにそれ? わざわざあたしに力を使わせてそれー? あいつやっぱり無能じゃーん」


「ファハハハハ! 仕方なかろう! まさかワシの傀儡すらやられるとは思わなんだ!」


 不快な笑いが響く。この男が無能ならば既に消している、とフォウは内心で舌を打つ。


「……そのことだが、グリアグロウ。あの傀儡はなんだ?」


「フォ? なんだとは? 以前言ったであろう? ワシの最高傑作だ。まさか倒されるとは思わなんだがな」


「違う。最後の爆発のことだ。あの威力、幸運にも双竜は無事だった。しかし、法具の使い手や双竜を殺すことは、公国の警戒レベルをいたずらに上げることになる。だから、何度もやめろと言ったはずだが?」


「は? あんたそんなことしてたの? あたしだってちゃーんと王子は殺さないように洗脳してたのに。まぁ、そのせいでやられちゃったんだけど。あれ、肩じゃなく心臓刺すようにしてたら始末出来てたのに」


 アミーラが便乗してくる。やかましい事この上ないが、指示を守ったゆえに手駒を失ったのだから、その矛先が自分に向かないのは好都合だった。


「いやいや、あれは元々の機能でな? あれを壊せる者は間違いなく我らの脅威。だから確実に道連れに出来るようにしておったのだ」


「……ならばそれを共有しろ。想定外の事態になっても面倒だ」


「ワシとて想定外なのだ。適当に時間を稼いで退散させるつもりだった。それこそある程度傷を負わせてな。まさかあの短時間で腕の特徴を見極められるとは。傀儡を見るのも初めてだろうにあの冷静さ……。ファハハハ! 人間のくせに天晴れなものだ」


 グリアグロウの言葉に頭を痛める。この男が現状を正しく理解出来ているのか疑わしい。だが、そんな風にフォウが呆れていた所で、気にかかる発言をする。


「しかし、わからんな」


「はぁ……。何がだ」


「いやな? フォウ殿にも伝えていなかったあの傀儡の仕組みをな? 何点か見透かしたような動きをされたのだ」


「……なに?」


「あれは口から麻痺針を放てる。だから会敵してすぐに、針を放った。しかし、やつらは針が飛び出す前に動いて全て防いだのだ。1本も当たらなかったのだぞ?」


「何か予測されるような動作があったんじゃないのか?」


「そんな筈はない。あれをそのような愚物と一緒にするな。あれはワシの最高傑作。口の構成はより複雑さを極め例えばーー」


 グリアグロウは一方的にベラベラと解説を続けて話が終わらない。この男との会話はアミーラとは別の意味で疲れるものだった。


「おい、わかった。他には?」


「フォ? あぁ、後は先ほどの自爆だな。槍……いやハルバードだったか? に貫通されたのだが、その後すぐ、投げられたのだ」


「投げられた?」


「そうだ。そこが理解出来ん。やつらは熟練の戦士。敵に一撃を与えた後は、警戒して様子を見る。これならわかる。だが、貫通したと同時に壁に投げ、大剣で身を守ったのだ。まるで自爆することがわかっていたかのように」


「……他の者にこのことは説明はしたのか?」


「ファハハハハ! するわけがなかろう! 自ら種を明かす奇術師がどこにいる!!」


 情報共有しろと言っているのが、理解出来ないのだろうか。どんな頭をしているのかと溜息をつく。

 だがーー


「アミーラ」


「なに?」


「お前の洗脳した男の方。やつはお前の能力が洗脳だと知っていたんだったか?」


「そう! あたしを見て『洗脳魔人……』とか言ったのよ!? なんなのその呼び名!! ダサいにも程があるわよ!」


 アミーラは地団太を踏みながらブツブツと文句を言っている。

 ダサいかどうかはどうでもいいが、それでもドゥークの時といい、こちらの情報が洩れているようだった。


「それで? それがどうしたのよ?」


「なぜ、情報が漏れたのかと思ってな」


「あの無能の部下にスパイでもいたんじゃないの!?」


「いや、念のため私も調査したがそのような痕跡はなかった」


「はぁ!? 意味わかんない!! どーいうわけ!?」


「お前の力を解除したのは守護騎士だったか?」


「そう! あの変な緑色のメス!! ほんっとムカつく!!」


 そう言えば、自分がドゥークと会っていたことを突き止めたのも守護騎士だと言っていた。それに、キャロルの幻覚に気づき、更にそれを解除したとのことだった。


(あの時は水の精霊。確か……ウンディーネだったか?)


 フォウはしばらく思案顔になったあと、もう一人の魔人に声をかける。


「キャロル」


「……なに?」


 ソファの上で横になり、我関せずという態度で寝ていたキャロル。が、話しかけられたことで、あからさまに不機嫌になる。


(……どいつもこいつも面倒な……)


 フォウは懐のナイフに伸びそうな右手をなんとか握りしめ、冷静を装いつつも話を続ける。


「お前が城に置いていた幻覚用の装置も回収されたんだったか?」


「そう。あの神鏡の娘が城に行った日に、殆ど回収された。バレるリスクを考えたら、今後は容易に動けない。ほんとめんどくさい」


「ん? 回収された時も神鏡の娘が城にいたのか?」


「そう。私の供給してる魔力が急に戻ってきたから、確認に行った。そしたら、神鏡の娘が王子と城を歩いているところを見つけた。近づくのも危険だし、詳しく確認してないけど多分、それ」


「成程……」


 と、いう事はグリアグロウの傀儡の能力を見極めたのも神鏡の力だろうか。

 しかし、500年前の戦いのときにはそんな様子はなかった。神鏡は感情で能力が変わるとはいえーー


「まさか……使い手が変わったことで能力も変わったか……?」


 恐らく、今はまだ能力も不安定なのだろう。しかし、最終的には全ての能力を使いこなせる可能性もある。


「……厄介だな」


 フォウがブツブツと呟きながら思考の沼に沈んでいると、再度グリアグロウが話しかけてきた。


「あぁ。それともう一つわからんことがある」


「? 何だ?」


「ガスクを討伐すると宣言した時の内容だ」


「内容?」


「そうだ。やつらは何故、ガスクと我らの繋がりを追及しなかったのだろうな」


「……続けろ」


 確かに宣言の内容については興味を持っていなかった。しかし、グリアグロウの言う事だ。何か違和感があるのだろう。


「やつらがガスクを討伐すると言った時点で、アミーラの洗脳は解除されたのだろう? と、いう事はガスクと我らに繋がりがある事は明白だ。なのに、それを堂々と公表しなかった」


「それはガスクの立場を考慮した上で、という話ではないのか? アレは腐っても枢機卿。そして我らはやつらの崇める神の敵。国教の幹部がそんなものと繋がりがあれば国が混乱するだろう。実際、ドゥークの時には魔人との繋がりを公表していた」


「フォ? そうなのか? なら表向きには自然なのか」


「何かと思えばそんなことか。期待して損をーー」


「だが、ドゥークの時も思ったが、事後の追及が甘いのは何故だ? ドゥークの洗脳を解除しなかったのは、神鏡がその能力を使えなかったと考えられる。だから今回、フォウ殿はガスクを始末したのだろう? しかし、その後に周囲を調査している様子が無い」


「我らの隠蔽が上手くいっているという事ではないのか?」


「調査したうえで見つからないなら、奴らも焦る筈。だが、そんな様子はない。

 加えて、神鏡が我らの痕跡を見つけられるなら、ドゥークやガスクがいなくなっても、その周囲を神鏡の使い手が調査する筈。しかし、彼らの屋敷を訪れたり、調査したような様子もない。

 だというのに、城に置いた幻覚装置は神鏡の使い手自らが、回収しているのだろう?」


「つまり……奴らは一部、意図的に我らを見逃している節があると?」


「そうだ。だが、その理由がわからん」



 なるほど。確かに言われてみれば違和感がある。自分達を警戒している筈なのに、その一方で手を抜いているようだ。だが、考えていてもすぐに答えは出なかった。

 


「わかった。私の方でも考えておく」


「ファハハハ! ワシももう少し考えてやろう」


 会話の後、グリアグロウに背を向ける。

 主が復活するまでに国力を落とし、法具の周辺を崩しておく。

 そうすれば後は精々、双竜と神剣、神鏡のみ。それならば問題なく勝てると思っていたが、少し計画を見直した方がいいかもしれない。面倒なことばかりだ。


 

 溜息をついて、思考を続ける。


(全ては我らの主の為にーー)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面白かったらランキングクリックお願いします!
小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ