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作戦開始

 ガスクは今日も雑事に追われている。しかし、窓から差す夕日が眩しくなってきた。

 この時間になると信徒もおらず、大聖堂にはガスクと繋がりのある衛兵達だけだ。

 そろそろ片付けの準備をしようかと考えていた所で、ドアが強く叩かれる。


「枢機卿様! 急報です!」


「入れ。なんだ騒々しい」


「ご、ご子息が……メルク様が反旗を翻されました!!」


「反旗? 何のことだ?」


「す、枢機卿様が教皇様の家族を人質に、2神教を我が物にしているとの宣言がありました! それも……メルク様だけでなく、皇太子殿下と神鏡の使い手との連名です!」


「……なに?」


「更に、メルク様が兵を引き連れてこちらに向かっています!」


 根耳に水の報告を聞き、ガスクの眉間に皺が寄る。


(教皇のやつが漏らしたか? ……いや、それは無いな。家族の監禁場所も知らぬまま、そのようなリスクの高い事はすまい。では、あの女の言っていた内通者か? 確認した筈だがーー)


 そこまで考えて思考を切り替える。原因よりも対処を優先すべきだからだ。


「ここに来るのはいつごろだ?」


「……日が落ちる前には着くかと」


「わかった。兵をまとめておけ」


「はっ!」


 扉を開け放して去っていく兵を見ながら、どうしたものかと溜息をつく。


 すると、開いたままの扉からカイウスが入ってきた。洗脳された筈の男が何故わざわざここに来たのか、まさか自分の始末にーー

 ガスクがそこまで考えたところで、聞き覚えのある呼び名が聞こえてきた。


「下手を打ったなガスク殿」


「……まさか、フォウ殿か?」


「あぁ。アミーラに能力を借りてな」


「ほう。そのような事も出来るのですな。それより、貴殿らの力になれるのはここまでのようだ」


「随分と諦めが早いな」


「仕方ない。ドゥーク侯爵の時の事を考えれば、双竜も来るでしょう。アレらは化け物だ。私の私兵でどうにかなる筈もない」


「我らが力を貸すと言ったらどうだ?」


「ほう。フォウ殿がそのような事を言うとは珍しい。……目的は?」


 ガスクはこの男が慈善活動などするはずも無いと確信していた。だが、正直ことここに至っては自分に出来る事など思いつかなかった。


「なに。人質共をこのまま渡すのも惜しい。だから回収しようと考えている。しかし、私もすぐには向かえん。そこで、この男達をそのまま王子たちにぶつけようと思ってな」


「なるほど……。どさくさに紛れやすく出来るよう、荒らしておけと?」


「あぁ。その結果、お前が王子や神鏡の娘を捕らえたとしても構わん。寧ろそうなれば、今後も良い協力関係を築けるだろう。

 ……なんだ? 疲れた? ちっ。わかった。とりあえずそういう事だ。上手く使え。じゃあな」


 しんと静まり返った部屋で、ガスクは安堵の息を吐く。あの魔人、フォウから人質の護衛については聞いていた。双竜の弟子の持つ槍は神剣と同格になりえる武器。そして4本腕の傀儡はあの双竜すらも殺せると。


 だが、それだけの戦力を使わなかった理由についても思い出す。彼らは国の警戒レベルを上げる事を避けていた。だからこそこれほど慎重に動いているのだ。下手な事をして魔人の逆鱗に触れるのも不味い。


(面倒だな。……待て。例えば、傀儡に双竜を任せて、この男に王子の相手をさせればどうだ?)


 

 王子も双竜の弟子。下手に連携されるより、一人浮かせた方が良いだろう。その上双竜の弟子が間違って王子を殺したとしても、それはあの女のせいに出来る。


(あとは神鏡の娘一人。そこに残りの全戦力をぶつければ? あの娘を人質にでも取れば他も抑えられるのではないか?)


 ガスクはニタリと笑みを浮かべた。


(……決まりだな)


 入口に傀儡を置き、余計な兵士が入らないようにする。そして双竜の弟子の獲物は槍。そうなると広い場所より通路の方が良い。

 後は残りの兵士全てを会議室に配置して、神鏡の娘を包囲すれば捕獲できる筈という結論に至った。


(まぁ、神鏡の娘が王子と共にこの男と戦おうとした場合は、兵を連れて逃亡するとしよう。はっきり言って双竜さえいなければどうにでもなろう)



 …………



 兵士たちを引き連れて大聖堂を包囲した。先に様子を確認してきたが、敵はどうやらこちらにとっても都合の良い配置をしてくれたようだ。強いて言えば、ガスクの周囲の兵数が予定よりも多い事が厄介か。

 これらの情報を共有する。あとは細かい作戦の確認だ。


「これが、玉木が確認してきた敵の配置です。どうやら向こうはクレアを抑えたいようですね。会議室に集まった兵が、クレアをいかに捕らえるかを検討していたそうです」


「なら、部屋の前に着いたら、屋根でもぶっ壊したらどうだ?」


「え!? で、でも……そんな事をして、もし兵士の人が大けがを負ったりーー死んじゃったりしたら……」


 戦略としては間違いなくゼルクさんが正しい。クレアちゃんが捕まれば、言う事を聞かせる為に何をされるかわからない。それを考慮すれば彼女の考えはかなり甘い。しかしーー


「兄貴。クレアはドゥークの時以降、実戦はまだ2回目だ。下手な事をして動けなくなってもまずいんじゃないかい?」


「……わかった。ならせめて、突入後は敵の前衛と後衛を分断しろ。天井を壊すなり机を吹き飛ばすなりして壁を作れ」


「わ、わかりました。あ、でも、それなら最初から全員で大聖堂の裏から建物を壊して攻めればーー」


「いや、どの道陽動は必要だろう。下手に不意打ちをして、カイウスや4本腕を見失う方が問題だ。逆に不意打ちされたら一気に不利になる。

 ま、玉木に他の仕事が無けりゃそれも良かったかもしれねぇけどな」


「なら、僕とクレアさんだけ外からーー」


「いや、突入時にクレアがいなけりゃ、何か企んでいるのがすぐバレるだろう。それで下手に警戒されるなら、正面から仕掛けた方がマシだ」


 確かにその通りだ。

 それに今のところ魔人の気配はないが、突入後に姿を現さない保証もない。

 建物の中で魔人に遭遇したなら、敵を倒したゼルクさん達がすぐにフォローに入れる。だが、建物の外で遭遇したりすれば、それこそクレアちゃん達を探すことから始めなきゃならなくなる。


「あとは連れてきた兵士達ですが……4本腕が入り口の礼拝堂にいるとなると、包囲させたままにしておいた方が無難ですかね」


「そうだろうね。アタシら以上の敵ってんなら、シル坊やクレア程度の実力がないと自衛も無理だ。下手に突入させても巻き添え喰らって被害を出すのがオチだよ。

 ただし、旗頭のメルクには突入してもらわなきゃいけないけどね」


「はい。覚悟は出来ています」


「おい、メルク。覚悟ってのは戦う覚悟にしとけ。死ぬ覚悟はすんじゃねぇぞ? お前に死なれたらこの後が面倒だ。

 それにオレ達やシルヴァも少なからず傷を負うだろう。そん時、お前の治療術を頼る場面も出てくるはずだ」


「……分かりました」


「ホントにわかってんだろうな……? まぁいい。あと、例の幻覚魔人の装置は?」


「それは問題ないそうです。ここのところ、玉木には何度も確認してもらいましたから」


「わかった。なら、大丈夫だな。作戦を確認するぞ」




 ゼルクさんが作戦の最終確認をする。今回の作戦は主に4つだ。


①サラちゃんとオレで人質を救出する

 オレは姿が見えないため、人質を怯えさせかねない。そこで、サラちゃんには通訳代わりに一緒に来てもらう


②4本腕の傀儡をゼルクさん、ゼリカさんが仕留める

 恐らく激戦になる。更に、4本腕には色々と仕込みがある可能性がある。このため、二人にはよく警戒するよう伝えてある


③カイウス君を王子が倒す

 ここが一番の山だ。この3日で、かなり神剣を扱えるようになったが、それでも場所も武器の相性も悪い。なんとか切り抜けてもらいたいが……


④メルク君とクレアちゃんでガスクを討伐する

 討伐と言っても基本は捕まえれば良い。……が、メルク君は最悪ガスクを仕留めるつもりらしい。確かに状況次第ではそうせざるをえないが、出来れば避けたい結末だ


 以上が今回の作戦だ。正直②~④はどれも厳しい戦いになるだろう。



「サラ、玉木」 


「シルヴァ様?」


「玉木が前に話していたボウガンだ。それとサラ、槍を渡しておく。カイウス達はいないとはいえ、見張りはいるんだろう?」


 おお! 有難い! どうやって見張りの気を引くか考えていた所だ。これは助かる。


「ありがとうございます。……シルヴァ様。ご武運を」


「ありがとう。そちらも気をつけてくれ」



「さて、行くぞお前ら! 覚悟を決めろ!」


「「はい!!」」


さぁ、作戦開始だ!

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