教皇の人質
サラちゃんの元に戻り、すぐに情報を伝える。
「そう。家族を人質に……」
「うん。だけどどこに監禁してるかだね。屋敷や大聖堂じゃないとすると……」
「難しいですね。情報が少なすぎます。一度メルク様やシルヴァ王子に相談した方が良いのでは?」
「そうね。時間が惜しいしすぐに向かいましょう。玉木。先に王城に向かって連絡を入れておいて。フローラ。準備を」
「分かりました、お嬢様」
こうしてオレ達はすぐに王城へと向かった。
ようやく手に入れた手がかりを活かすために。
…………
「怪しい場所ですか……?」
「はい。玉木が大聖堂と屋敷を隅々まで調べたのですが、見つからないそうです。そうなると他の建物。それこそハーディ家の別荘や、関係の深い教会等、です」
「関係の深い場所……」
メルク君が考え込んでいる。もし、彼に心当たりが無ければ状況は一気に悪くなる。ガスクもあの様子ではこれ以上尻尾を出さないだろう。
「しかし監禁か……。ひょっとしたらカイウスもそこにいるかもしれないな」
「そうですね。囚われているか、若しくは洗脳された状態でそこを警備しているか」
「どちらにせよ、場所がわからなければどうしようもないな」
「ええ。メルク様。いかがでしょうか? 何か見当はつきませんか?」
「そのことですが……玉木さん。大聖堂や屋敷には本当に捕まっていなかったですか?」
ん? どういうことだ? 確かに全ての部屋を調べた筈。オレに幻覚が通じない以上、屋敷の外観は誤魔化せない。と、なると隠し部屋も隠せないと思うがーー
「メルク様? 何か確信のようなものが?」
「えぇ。あの男は狡猾ですが、それでいて臆病な男です」
「臆病?」
「えぇ。あの男の権力欲は、時に弱点になります。自分が貶められることを酷く恐れているのです。ですから、教皇様や大司教様方を脅したり、黒い噂を消すのに躍起になったり、慈善活動したりしているのです。
そんな男が自分の弱点になりえるものを、見えない範囲に置くとはどうしても思えないのです。
あいつは2日間、家と大聖堂の往復しかしていないのでしょう? 元々、それ以前も基本的にその2か所以外に頻繁に行くことなどありませんでした」
ふむ。筋は通っているが……そうなると、地下か? だが、その可能性も考慮して何度か地下にも潜ってみたが、そもそも真っ暗で何も見えないのだ。屋敷や教会の真下ならいいが、少し離れた場所の可能性もある。そうなると探りきれない。
「教会か屋敷に囚われているとして……。……待てよ? メルク。大聖堂では食事を配っているんだったな?」
「? えぇ。慈善活動の一環として」
「教皇の家族が監禁されているなら、食事はどうしていると思う?」
!! 確かにそうだ! あれだけ大量に作っているんだ。そのうちの一部がどこかに行ったって疑問に思われることもない。
「成程……。玉木!」
「わかった! すぐに昼だ。急いで向かう!」
「ええ! お願い!」
「あと、一応それ以外の可能性も検討しておいて!」
「勿論! それはこっちに任せて!」
手がかりが少ない以上、仮説を立てて確認していくしかない。これが違うなら他の仮説。時間は限られているんだ。どんどん試していこう!
…………
「ご飯の準備が出来ましたので並んでくださ~い」
「押さないでくださいね~。沢山ありますので~」
大聖堂のシスター達が配膳している。他の職員達も同じものを食べるようだ。
……そうなると可能性が多すぎるな。料理は全て厨房から運ばれてきた。それも一斉にだったから、少なくとも一緒に作って別の所に運んでいる様子は無かった。
この配膳中に厨房で追加分を作っている可能性も無くはない。……まぁ、わざわざ別で作ってなんて明らかに不自然だから考えづらいけど。
だから、まずはこれをもらった人の中で怪しい所に行くやつを……
「ねぇ! あっちの森の方で食べよーよ」
「そうね! 気持ちよさそう!」
「おい。会議室いこーぜ」
「いいけどさぁ……汚さないように気を使うからめんどくさいんだよな」
「でも静かでゆっくり出来るぜ」
「先輩はどこで食べるんですか?」
「……事務室で食べるわ。すぐに仕事しなきゃだもの……」
「あ、じゃあ一緒に食べましょうか。皿は私が片付けておきますよ」
おいおい……マジかよ……。こんなバラバラに移動すんのか? 全員は追いきれないぞ?
くそっ! 時間が無いってのに!
……落ち着け。切り替えろ。焦って見逃したら最悪だ。今日は誰がどこで食うかをメモっておいて、時間をかけて調査していくしかない。
幸い、外で食うやつは空から確認出来る。今日は外で食べているやつを重点的に調べて、明日以降は建物内に入ったやつを調べよう。そして空いた時間で地下に潜ってみるしかない。
…………
調査を始めて3日目。
「いや、つーかさ、あいつ最悪じゃね?」
「あーわかる」
「ホント性格悪いよな~」
「アレだけは勘弁だわ」
そんな話をしながら空き部屋に入っていく4人の衛兵。
こいつらは昨日もここで食べていた。まぁ……この部屋鍵もかかるみたいだしな。のんびりと食う分にはいいんだろうが……
そんな事を考えながら見ていると、床の板が外される。なんだ!? すると、床下から兵士が出てきた。4人分の食器を持っているので、恐らく昨日の分の食器だろう。それを今日の分と入れ替えて、また戻っていき、それを何度か繰り返して4人分の食事を運んでいく。
ここか!!
昨日見たときは4人とも食べ終わっていたように見えた。だから気づかなかったが、このタイミングで食事を運んでいたのか!!
そのまま後を付ける。螺旋階段になっているのか。その上、明かりらしきものが何もない。道理で地下を潜ってもすぐに見つからない筈だ。透過して地下に潜ったところで、明かりが無きゃ何も見えないからな。
こうして地下に潜ると、比較的広い部屋に出た。明かりも少なく、薄暗い牢屋の中には汚れた格好の母親と子供らしき二人がいる。
更に牢屋の前にはカイウス君が立っていた。ただ、案の定洗脳されているようだ。ドゥークが洗脳された時と同様に、紫色の光に包まれている。
「おい、飯だぞ」
「……はい。ありがとうございます」
虚ろな目で返事をするカイウス君。
「後ろのやつらにも食わせとけ。残させるんじゃねーぞ? 倒れられたらオレの首が飛ぶ」
「……わかりました」
「はっ。双竜の弟子が無様なもんだ」
「……」
「ちっ。つまらん。まぁ、ガキが騒いでもオメーが対応するようになって楽になったがな。ガキにビビられるんだ。戦士冥利に尽きるよなぁ?」
そういって自分の分を食べる兵士。
正直今はカイウス君の無事を喜びたいが……。
彼の持っている槍を見る。……あれは確か、魔具:魔槍ゲイボルグ。ゲーム終盤、魔人のアジトで手に入る最強の槍だ。高い攻撃力は勿論、槍から電撃を放つことも出来たはず。そんなものを持っているとなると、彼の拘束も簡単にはいかないだろう。
そして想定外な事にもう一つ、厄介なものがある。部屋の隅に鎮座している4本腕の傀儡だ。あれもストーリー後半の敵だ。それもえらく強い。それこそ魔人クラスの強さを持った敵だ。
……こいつをどうにかした上で、カイウス君の拘束に加え、教皇の家族の救出か……。ハードルが高いな。下手をすれば、これに加えて洗脳魔人達を相手にしなければならなくなる。
慎重に行動すべきだな。
まぁいい。カイウス君の場所も人質の場所も分かった。その後の事については皆と相談するしかない。




