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貴族たち

 クレアちゃんについての会議が行われる中、オレは城のあちこちを巡回していた。

 

 理由は2点。


 1つ目は城の警備の為だ。

 今回、双竜の二人は会議の為に登城しなければならなかった。だからクレアちゃんも一緒にやってきて、城の別室で待機している。勿論、護衛を数人つけてはいるが、それでも魔人が潜んでいれば普通の兵士達ではどうしようもない。


 2つ目は主要の貴族達に魔人の影が潜んでいないかを確認する為。

 今回は国の大臣達に加え、国教のNo.1とNo.2がやってくる。本人やその従卒達に洗脳や幻覚の影響がないかを一斉に確認できる。


 だが、数十分城内を飛び回っていたが特に怪しい点は見つからなかった。とりあえず王子に報告しにいこう。


 天井から会議の場に顔を出す。王子を含めてもオレを見えるものはおらず、堂々と目の前を飛んでいても様子が変わる者はいない。


「では、クレア様の婚約については今回は保留ということで」


 その言葉に耳を傾ける。

 ふむ? てっきり王子とクレアちゃんを婚約させるのかと思ったが、そういう訳でもないのだろうか? まぁ細かい話はあとで王子に聞こう。


「しかし、その件は保留にするとしても、何らかの形で国民には彼女と守護騎士の姿を公表する必要があります。当然、彼女にはその場に出ていただかなければ」


「何らかの場を設けるということですか?」


「えぇ。2神教による祭典をあげるべきかと。その点、教皇殿と枢機卿殿はどのようにお考えですかな?」


 話を振られた枢機卿が淀みなく答える。


「そうですね。私共としてもそれは考えております。大聖堂を利用すればそれなりの規模のものが出来るでしょう」


「成程。それは良いですなぁ。それほどの規模であれば大きく盛り上がるでしょうな」


「お待ちください」


 盛り上がる貴族たちにゼルクさんが待ったをかける。

 彼の服装や髪型はこの場に合わせたフォーマルな恰好だが、それでも誰よりも大きな体と鋭い眼光は歴戦の勇士であることをありありと語っている。

 正直、違和感が仕事しすぎじゃないだろうか。


「ゼルク殿? いかがなされた?」


「先ほどの祭典について、開催自体には私も賛同いたします。ですが開催時期は来年にすべきだと考えます」


「ふむ? 理由をお伺いしても?」


「えぇ。クレアはーー」


 隣にいたゼリカさんに肘で小突かれ、ゼルクさんが訂正する。


「ーー失礼。クレア様は平民出であり、今は礼儀作法などを学んでいる最中なのです。加えて守護騎士の召喚もまだ安定しておりません」


「それはつまり1年後には安定すると?」


「はい。礼儀作法は勿論、守護騎士の召喚に関しての訓練も順調に進んでおります」


「成程。より、威厳のある姿を見せるべきと?」


「おっしゃる通りです。いかがでしょうか?」


「「うーむ……」」


 うやうやしくかしこまるゼルクさんというのは本当に見慣れない。

 ただ、それに対する貴族達の態度も千差万別なようだ。侮蔑の目を向ける者もいれば、特に思う所なさそうな人もいる。……目を輝かせているのは特殊な人だろうけど。

 だがそれも頷ける。彼は元々平民だ。その上、正式には騎士団にも所属していないらしい。加えて報酬としても爵位を受け取らないそうだ。だから彼の肩書は、国に雇われただけの傭兵。だというのに、国一番の騎士で皇太子の師匠となっている。貴族とも違う特殊な立場だ。


 と、ゼルクさんについて考察していた所で、一人の貴族が声をあげた。


「私はゼルク殿の意見に賛成だ」


「マルタ公爵?」


 おや? この男がマルタ公爵か。確かドゥークはこの男の派閥だったんだよな? 年齢は50過ぎといったところ。40手前のサラちゃんのお父さんに比べると割と高齢だ。

 だけどドゥークと違ってなんか……悪人っぽくは見えないんだよな。まぁ、人を見る目に自信がある訳でもなし、政治家の腹の内を探るなんて出来ない。とりあえず警戒はしておいた方が良いかな。



「確かに国民へのアピールは早い方がよかろう。だが、無理に進めて召喚に失敗されても敵わん。シルフォード公はいかがお考えかな?」


「えぇ。私としても焦るべきではないと思います」


 サラちゃんのお父さんが賛成を示すと、別の貴族に視線が集まる。この国では最高の爵位である『公爵』家を纏めて三公というらしい。と、いうことは視線の先の男も公爵か?


「……まぁ、私も特に反対する理由はありませんな」


 それを見とめた王子が話をまとめる。


「では、クレアと神鏡についての式典は来年以降に行うものとする。今日のところは以上としたい。何か他に質問などはあるか?」


「「…………」」


「無いようだな。ではーー」


「殿下」


 話を終わらせようとした王子に枢機卿が声をかける。


「なんだ」


「式典については来年で構いませんが……私と教皇様の二人だけでも、クレア様にご挨拶させていただけないでしょうか? 流石にクレア様と面識もないというのは立場上聞こえが悪いので……」


 王子は顎に手を当てて少しだけ思案する。そして数刻の後、顔をあげた。


「わかった。だが、今日はもう遅い。その上今週は同じ時間での会議続きだ。だから来週以降でクレアに都合をつけるようにしたいがどうだろうか?」


「構いません。では、そのようにお願いいたします」



 貴族達が部屋から出ていく。

 やべ……。報告する前に会議が終わった……。



 …………



 王子とゼルクさん、ゼリカさんはクレアちゃんと合流した。因みにサラちゃんのお父さんはそのまま帰宅している。他の貴族たちに下手な勘繰りされても面倒だ。


「あ! 皆さん! お疲れ様です」


「おう。待たせたなクレア」


「ただいまクレア。特に問題はなかったかい?」


「はい! 護衛してくださった皆さんとお話してました! 皆さんとっても優しくって楽しかったです!」


 クレアちゃんの破壊力満点の笑顔にゼルクさん、ゼリカさんは勿論、護衛の兵士達までもが表情を崩す。流石は乙女ゲームヒロイン。人たらしの能力も凄まじいようだ。


「そうか。皆もご苦労だった。それぞれの持ち場に戻ってくれ。それから、明日以降もよろしく頼む」


「「ははっ!!」」


 各自綺麗に揃った敬礼を見せた後に退出する。天使の護衛に優しい上司。なんて羨ましい職場なんだ。

 そして護衛の兵士達が退室した事を確認した後、王子が(くう)を見つめた。


「玉木、いるか?」


「ピッ!」


「よし。何か気になることはあったか?」


「ピッ! ピッ!」


「そうか。明日も同じ時間に頼めるか?」


「ピッ!」



 報告と明日の予定を確認する。しかしこんなやり取りをスムーズに行える王子のスペックよ。


「ふむ。てっきりマルタ公爵付近に何かあると思ったんだがな」


「どうでしょうか。ドゥークは確かに黒い噂も多かったですが、流石に彼にはそこまでの話は聞きません」


「そりゃあ公爵の立場でそんな噂が出るようなヘマはしないだろうさ。ま、派閥内にはドゥークのような魔人と繋がるやつがいるかもしれんがね」


「そうですね。しかし、玉木に全員しらみつぶしに探させるのもキリがありませんからね……」


「そうだな。ま、主要な貴族たちが洗脳されてない確証が取れただけでも御の字だ」



 ふぅ……。流石に全員を調査しろとは言われないようだ。いくらオレの能力が調査に向いているとはいえ、何日、何週間と一人に張り付く訳にもいかない。せめて交代要員でもいるならともかく、そんなものいないしな。



「玉木、何か他に気になることはあるか?」


 オレが胸をなでおろしていると、王子が他の情報について聞いてくる。うーん、特に気になることはないかなぁ……。あ、でも強いて言えばーー


「お。出たな筆談。なになに……『王子達の婚約について教えて欲しい』?」


「あぁ……。成程。私とクレアの婚約についてか」


「うえぇっ!?」


 王子は納得したように頷き、クレアちゃんは素っ頓狂な声を上げている。

 そんなオレの質問に、ゼルクさんとゼリカさんは愉快そうに笑いだす。


「クク……。サラ嬢の為に……ってかい? まるで恋のキューピッドだね?」


「ダハハハ! この状況で考える事でもねーだろうに。ま、そういうとこ嫌いじゃねーがよ」


「ふふ……。まぁ、どの道クレアにも伝えるんだ。今日のことは報告しておこう」



 王子は会議であがったクレアちゃんとの婚約話について語ってくれた。その後、この報告を受けたサラちゃんが、こっそりとガッツポーズしていたのをオレは見逃さなかった。

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