戦力確認 後半
ゼルクさん達と共に、魔人と戦うメンバーを確認する。ゼルクさん、ゼリカさん、クレアちゃん、王子の他にはあと4人だ。
だが、メンバーの一覧を見ていたゼルクさんが口を開く。
「シル坊。今の話だと残りの4人ーーまぁカイウスはともかく、他の3人も皆知り合いなのか?」
「はい。同じ学園の生徒達です」
「……学年は?」
「同学年です」
「……まじか……」
王子の返答に頭を抱える。まぁ、言いたい事はわかる。
「ったく……。ガキばっかりじゃねぇか。この時兵士達は何してたんだ?」
「たった8人で魔人と戦うなんて考え辛いけどねぇ……。玉木、何か理由があるのかい?」
当然の疑問だな。けど、ストーリー見てないから知らないんだよなぁ……。ルートによっては一部メンバーが参戦しないパターンもある。正直、全然わからない。とりあえずメモ書きで説明するか。
『すみません。理由までは……。ただ、魔人は何人もいます。それに、魔人の中には大量の兵士を生み出すようなモノもいました。ひょっとしたらそちらを抑えていたのかもしれません』
「兵士を生み出す?」
『その説明をする前にまず、何の能力も無い魔人。有り体に言えば雑魚魔人ですね。ただし、雑魚と言ってもこいつは並みの兵士よりはずっと強いです。多分、10人くらいの兵士でやっと倒せるレベルですね』
「なに? そいつは厄介だな。下っ端でその強さか」
『そして、魔人の中には複数の傀儡を操る魔人もいます』
「傀儡? しかも複数だと?」
『はい。その中でも最強の傀儡はゼルクさん以上の強さを持っています』
「……ホントに頭が痛くなるな……。だが、一応は倒せるんだよな?」
『はい。ただ、残り4人のメンバーのスカウトは必須です』
ルートによっては全員参加しないパターンもあるが、流石に今の4人ではまず無理だ。ゼルクさん、ゼリカさん無しの縛りでも大変だったのだ。そんな縛り、やろうと思った事も無い。
「そうか……。シル坊。お前の目から見てどうだ? 全員快諾してくれるとは限らないだろ?」
「はい。しかも、3年後は全員が師匠達と並ぶ強さという前提です。私やカイウスはまだしも、他の3人もです」
「シルヴァやカイウスにしても、まだまだアタシらから見れば未熟も良いとこなんだがねぇ……」
「参ったな……。幾ら厳しい修行をするっつっても、たった3年でオレやゼリカと並ぶほど強く出来るとも思えんぞ……」
「「……」」
ゼルクさんの言葉に、全員が口をつぐむ。
マジか……。普通に鍛えるだけじゃ駄目なのか……。ゲームだと訓練や実戦でレベルが上がってたけど、現実はそう甘くないのか……。じゃあ、どうすれば良いんだろう。
暫らくの沈黙が訪れる。けど、ゼルクさん達にも分からないのに、強くなる方法なんてーー
「あ、あの……良いですか?」
半ば諦めていると、ここまで静かだったクレアちゃんが、おずおずと手を上げる。
「どうした?」
「あの……神鏡が……。というかウンディーネが話したいことがあるそうです」
「ウンディーネが? 珍しいな。そもそも召喚していなくとも意思疎通が出来るのか?」
「は、はい。召喚に成功してからは、いつも神鏡から私に声が聞こえるんです」
「そうか。まぁ聞いてみよう。クレア、頼む」
「はい。来て! ウンディーネ!!」
クレアちゃんが守護騎士を呼び出した。現れたウンディーネはしずしずと頭を下げる。
「皆様。主がお世話になっております」
「あぁ、いや、こちらこそ。それで、ウンディーネ。話とは?」
「はい。皆様は先ほどから、どのように強くなれば良いかを考えておられるご様子。その事について、私から提案があります」
「提案?」
「はい。いわゆる、訓練方法です」
え? 守護騎士ってそんなことまで知ってるの? 思っていたよりずっと万能だ。
「私たち守護騎士は神鏡の力で、主の感情を元に力を出しています。この際、感情に加えて、あるモノを使っています。それが、空気中にただよう魔力です。
この魔力は人間の成長期。具体的には15~18歳の期間に体に取り込むことで、身体機能を強化出来ます」
「魔力……を、取り込む?」
「そうです。この時期に魔力を取り込んで体に馴染ませることで、18歳以降も魔力が巡るようになります。
基本的に、皆様は最低限の取り込みは自然に行っていると思います。しかし、それを意識的に行うことで、より大きな力を得られるでしょう」
「そんな事がーーん? ひょっとして、師匠達は既に……」
「えぇ。ゼルク様、ゼリカ様はこれを成長期に行っていたのでしょう。お二人の単純な腕力や脚力の強さはこれが理由です」
へぇ。そんな事が出来るのか。という事は、オレがやたらと弱い弱い言われるのはそのせいか。この世界の人は皆、無意識に身体強化をしているってことね。正直、クレアちゃん以下とか言われてたから、理由があってほっとする。
「成程な。それで三年後の戦いがガキばっかりになんのか」
「なら、学園の生徒全員に教えてーーいや、待てよ? ……ひょっとして、魔力の取り込みにも才能があんのかい?」
「えぇ。この場におられる中で才能がある方はーーシルヴァ様だけですね。他の方は残念ながら、それほど大きな効果は得られないでしょう。」
「……そう」
「お嬢様……」
サラちゃんが俯く。彼女はずっと王子の隣に立つために努力してきた。それなのに、これ以上強くなれない。つまり、サラちゃんは魔人と戦えないと言われたんだ。落ち込まない訳が無い。
「サラちゃん」
「……玉木?」
「君は自分が望んだ才能は得られなかったかもしれない。けど大丈夫。君にはオレがいる。オレに指示を出せるのも、オレの声を届けられるのも、君とフローラさんだけだ。君には君にしか出来ない役割がある。だから、一緒に王子の力になろう」
「……そうね。落ち込んでいる場合じゃないわよね。自分に出来る事を一生懸命やらなきゃ」
「うん。それでこそオレの主だよ」
ドゥークの時だって、オレはサラちゃんの力になれたんだ。これからも同じようにやるだけだ。
「因みに、ウンディーネは大人数から、魔力の才能の有る無しを見極める事は出来ないのかい?」
「申し訳ありません。あまりに大人数相手には出来ません。精々数人ずつ。それも行うごとに力を使うので、一日に何度も確認するのは不可能です」
「そうか。そうなると、学園の生徒全員の中から、才能があるやつを引っ張ってくるのは不可能だな」
「そうだね。なら、当面の目標は、【シルヴァとクレアの強化】と【玉木の言ったメンツのスカウト】の二つだね。学生全員に確認することが難しい以上、候補者を絞るしかない」
「そうですね。3年後に向けて、各自、やれることをやりましょう」
そうだ。ただでさえ、サラちゃんの件でシナリオとは大きく違っているんだ。魔人側の行動もゲームとは変わるかもしれない。ならオレも、オレに出来る事を精一杯やってサラちゃんの力になろう。




