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いつもの日々

「どうっすかー? スレイヤっちー?」


「誰がスレイヤっちだ植物女。どうもこうも違和感しかねぇよ」


「口が悪いだけじゃなくてネーミングセンスもないっすねぇ。植物女ってみたまんまじゃないっすか。せめてプラントレディとかにして欲しいっす」


「同じじゃねぇか。何が違ぇんだソレ」


 仲間となったスレイヤ君は、魔力の扱いを学ぶためドリアードに浄化の眉をかけてもらっている。


 しかしやはりというか、ドリアードはコミュ力が高いなぁ。スレイヤ君相手にも萎縮も衝突もせずに上手く会話出来ている。

 まぁ、その主のクレアちゃんはオロオロと見ているだけなんだけど。



 そしてその間に、他のメンバーたちはスレイヤ君を救いに来たという魔人の話をしていた。


「謎の女魔人……か」


「玉木、お前は魔人に覚えがないのか?」



 王子がオレに問いかけてくる。

 だけど……うーん……女魔人……。


「反応がないな……サラ、玉木に聞こえていないのか?」


「いえ、私の隣で考え込んでいます」


「そうか。玉木が知っていればいいんだが……」


 王子の言葉に、ゼルクさんが同意する。


「全くだ。オレの印象では、アイツの強さはあの4本腕に匹敵するだろうな」


 頷くゼルクさんに、ゼリカさんが嫌そうに眉間にしわを寄せる。


「本当かい? いやだねぇ……あんなの相手に情報も無いってのは」


「あぁ。そうなりゃ下手すればオレ達二人がかりでも苦しいだろうな」


 ゼルクさんも苦虫を噛み潰したような顔をする。

 そうだよなぁ……


 魔人側はゲームでも強いもんなぁ。二人がかりでもーーん? 二人がかり? スレイヤ君? それに女魔人ーーあ。


「玉木? 何か思い出したの?」


 サラちゃんが問いかける。

 そうだ。そういえば、スレイヤ君ルートの時だけ、物語終盤で戦う事になる女魔人がいた。

 スレイヤ君と同じナイフ使いで、クレアちゃんとスレイヤ君の二人で戦う事になるステージだ。


 だけどーーどう伝えようか。クレアちゃんとスレイヤ君が恋仲になったら出てくる敵って説明するのか?

 チラとスレイヤ君達の方を見る。未だに会話をしているのはドリアードだけ。スレイヤ君とクレアちゃんは一切会話をしてない、というかクレアちゃんが一方的に委縮している。


 うん。余計な事は言わんとこう。それにそもそもなんでスレイヤ君ルートだけ戦うのかも、オレは良く知らないからな。



「えっとーーうん、思い出したよ。その女魔人は多分、ナイフを武器に戦う敵だね。ただ、オレの知っている知識ではよっぽどの状況にならなきゃ敵対しない筈」


「そうなの? じゃあ、戦いを回避できるかもしれないの?」


「うん。仲間にまではならないけどね。それに幻覚魔人達のような厄介な特殊能力もないし、そこまで警戒しなくていいと思う」


「そっか。それなら安心ね。皆様、玉木が言うにはその女魔人はーー」


 オレの回答をそのまま皆に伝えてくれる。

 それにしても、やっぱりこうして直接話せるのはありがたいなぁ。

 エレナちゃんと共に何日か牢屋にいたけれど、会話も禄に出来なかったからな。

 まぁ、あの護衛の二人にはオレの正体を隠さなきゃいけなかったんだし、しょうがないけどね。



 それでもやっぱり不便だし、上手く会話する方法が無いかなぁ。


「……直接会話出来た所で女性陣相手に気まずくなるのがオチではないですか?」


「フローラさんはもう当然のように思考を読んでくるよね」


 だけどそんなに想われてもオレの心はサラちゃん一筋だから。ごめんね。


「……ただただひたすらに不愉快な事をのたまうのを止めていただいてもいいですか?」


 おお! 凄い! 口にしなくても会話を成立させるとは! フローラさんのオレへの想いは天井知らずだな!


「……良いでしょう。とりあえず首から上を切り離せば不愉快な思考は止まりますかね」


「ごめんって。いや、お願いだからそのナイフをしまってよ。投げキッスくらいならしてーー」


ーースパッーー


 フローラさんのナイフが空を切る。


「チッ!」


「ちょっ!? ホントにナイフで切りつける事ある!?」


「やかましいですよこの変態が。ゴーストを解いて大人しく裁かれなさい」


「ナイフだけに? 三枚おろしに捌いてやるっていうーー」


ーーシュパパパパパーー


 再びフローラさんのナイフが空を切る。しかし今度は何度も切りつけられている。


「うおお!? 当たらないのにめっちゃ恐い!」


「ええい忌々しい。少年少女をストーカーし続ける変態魔人の分際で」


「人聞きの悪い事言わないで!? オレのは君らの指示だからね!?」


「ほう? ですが結果的に貴方はエレナ様のあられもない姿も見たのでしょう?」


「いや!? そんなことする訳がーー」


 ふっとエレナちゃんが視界に入る。

 エレナちゃんにはオレの声が聞こえない。つまりエレナちゃんにはフローラさんの言う『オレが変態』ということだけが聞こえているのでーー


「ま、まさか玉木様……牢屋で私の寝顔とか……いえ、もしかして私がトイレをしてた時も……」


 うわああああ! とんでもない誤解をされているぅぅぅ!

 

「待って待って! 見てない! 断固として見てないよ!」


 焦りのあまり、メモを取る事を忘れ、エレナちゃんの前でまくしたてる。

 すると、フローラさんが更に追い打ちをかけてくる。


「エレナ様。お気をつけください。玉木は鼻息を荒くして貴方の正面に立っております」


「ちょっと!? シャレにならない誤解を与えていくのやめて!?」


「誤解ですか。犯罪者はみな一様に同じ事をいいますね」


「妙な煽りをしてしまいすみませんでしたぁ! お願いですから許してください!」


「玉木、いくら見えないからと言ってエレナ様のスカートを覗き込むのはいただけませんね」


「してない! してないぃぃぃぃぃ! エレナちゃん顔を青くしないでぇぇぇぇ!」


 こうしてひとしきりいじられ続けた後、サラちゃんがなんとか誤解を解いてくれた。

 尤も、この後もしばらくはサラちゃんも一緒になってオレをいじり続けたのだが、それはまた、別のお話。


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