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夢の中だけRPG‼  作者: 佐賀葬送
第一章
27/51

ボス戦(LP残り3本)

まだまだボス戦続きます!

最後まで読んでくれると嬉しいです。

                  27


 子猿が降ってきた瞬間、大地はさすがの反応を見せ、即座に指示をだした。


「1組は取り巻き排除!」


 その指示で1組がそれぞれ動き出す。猿が落ちてきたのは、大猿の後ろに8体、その他遠くに2体だ。それを見た1組がそれぞれの動きをてきぱきと行っている。


 そんなことを考えさせる暇も与えてくれないのか、猿がその巨体をこちらに走らせてくる。


 大地の戦略は、半分正しく、半分間違っていた。


 取り巻きを殺すために区切りやすいグループに分けたのはいい。その方が統制がとれるし、今まで一緒に過ごしてきたクラスメイトなら、チームワークも問題ないだろう。


 しかし、そのチーム分けのデメリットもあるのだ。大地自身が用意したメンバーリストは、クラス関係なくグループが組まれている。それによって、どこのクラスにどれくらいのアタッカー、タンク、バファーがいるのか把握していなかったのだろう。1組を行かせてしまったことで、アタッカー、バファーが著しく減ったのだ。タンクは十分にいるが、アタッカーが少ないので弾いてもダメージを与えにくいし、バファーが減った事によって、ダメージをくらった後のリカバリーが大変になった。


 しかも、タンクの盾にも耐久値は存在するのである。このままではタンクの防御が削りきられ、集団の中心から陣形を破壊されかねない。


 固まって猿の攻撃を防いでいるタンクも、それに気付いたようだった。タンクの内の一人が、どうする、という視線を向けてくる。

 

 俺もアタッカーに加わってダメージを与えてはいるが、さっきに比べて明らかにLPの減りが遅い。このままではじり貧だ。


 その時、タンクの一人がふらついた。攻撃を防ぐためにずっと力をいれていたのだろう。力が少し切れてしまったのだろうか。


(マズイ...っ!)


 そう思った時にはもう遅く、ふらついたタンクは思いきり上に跳ね上げられ、凄まじいスピードで天井にぶつかると、ゆらりと体勢を崩し、地面に落下した。


 猿が喜んでいるのか、雄叫びをあげる。


 それと同時に、落下したタンクのアバターが、紅い光を発してその場から消滅した。血のように紅い光の欠片が漂う。


 俺は一瞬、止まってしまった。LPがゼロになったとき、すぐに散るのではなく、オーブというか、魂のような光の球体になるのではなかったのか?オーブになっている時は、30秒間蘇生可能なのではなかったのか?


 俺が混乱していると、隣から声がかかった。


「大丈夫か、勇雅。ボーッとしてたぞ」


 鉄弥がそう言うので、俺はさっき感じた疑問をぶつけた。


 そうすると、鉄弥は俺の知らなかった事実を話した。


「そうか、お前、ハートがゼロになった奴を見たことないのか。ハートが余っていれば、蘇生できるけど、ハートが無ければそのまま消滅するんだ」


 俺は驚愕した。初めてこの世界に来たとき、あの老人が言っていたのはこの事だったのか。『とんでもないこと』とはよくいったものだ。


 こんなもの、ゲームでもなんでもない。今までハートをゼロにしてきたクラスメイトや、同学年の仲間たちは、どこに行ったかも分からない。


 死んでいるかもしれない。植物状態になっているのかもしれない。もしかしたら、もう会えないかもしれない。


 俺の中に、怒りの感情がふつふつと湧いてくる。


 俺は、猿を睨んだ。猿と目が合う。猿が『お前には無理だ』とでも言いたそうな顔でニヤリと笑った───────気がした。


「タンク、全員下がってくれ。俺が一人で攻撃を捌く。その隙に全員で攻撃してくれ。」


 俺はそう言うと、脚に力を込める。スキルの起動準備をし、今にも特攻しようとした、その時だった。


「待て」


 後ろから、鉄弥が制止した。俺が何故、という表情で振り向くと、鉄弥の覚悟を決めた顔が目に入った。


「俺が行く」


 そう言うと、鉄弥はずんずん前進していく。


 猿がこん棒を振り上げた。鉄弥に向かって、致死の流星が降り落ちる。


 間に合わない。そう、誰もが思った時だった。鉄弥の大剣が、うねるように動き、猿の右手に絡みついたのだ。そして、流動的に見えていた鉄はバキン!という音と共に凝固し、猿のスキルを完全に止めた。 


 そこにいた1組以外の全員が、息をのんだ。


 すると、鉄弥から呆れたような声が掛かる。


「おい、早く攻撃しろ。俺の鉄も、割られるかもしれないだろ」


 その声で、一気に全員が猿の周りに密集する。アタッカー、タンクは猿の胴体や足元に。バファーも今日で初めて攻撃に転じ、頭部に色とりどりのスキルを打ち込む。


 猿のLPが目に見えて減り、これでいける、と思った時だった。


 猿の攻撃モーションが出たので、全員が後ろに下がる。この攻撃を鉄弥が止めて...と思っていた。鉄弥がバックジャンプを途中で止めたのだ。何かにつっかえるような動きで。


 その原因はすぐに判明した。猿が鉄弥の剣を握っていたのだ。体長が八メートルもある猿である。剣を握れば、自ずと腕も握られる。そのせいで、鉄弥は動けなくなっていたのだ。


 腕を掴まれた鉄弥は、逃れようと必死にもがくが、猿の大きな腕は微動だにしない。


「腕を切断して逃げろ!」


 と誰かが言っているが、現実と同じ痛みが体に伝わるのだ。腕を切るとは、相当な痛みを伴う行為だろう。


 鉄弥の右腕を、剣ごと握った猿が吼えた。俺にはそれが、勝ち誇った哄笑に聞こえた。


 途端、猿が鉄弥の体を地面に叩きつけた。それで気を失ったのか、鉄弥の全身がだらん、と弛緩する。


 俺は固まっていた体にむち打ち、猿にスキルを撃ち込もうとする。


 だが、猿のほうがワンモーション速かった。


 鉄弥を左手で上に持ち上げると、野球部のコーチがノックをするように、上に少し放り投げ、両手持ちのこん棒でしたたかに打ち付けた。

  

 突進していた俺はそれに反応が遅れ、飛んできた鉄弥と正面衝突する。


 俺は鉄弥と一緒に集団の前まで転がり、尻餅をついたまま上体をあげる。


 「大丈夫か!」


 鉄弥にそう声をかけるが、応答がない。その瞬間、鉄弥の体が俺の手のなかで四散し、光の球体になった。 

最後までお読みいただきありがとうございましたぁ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 猿めちゃつよ [気になる点] 俺氏んだ!? 不甲斐ない
[良い点] ゲームのことあまり詳しくない人でも理解できる書き方ができるのはさすがですっ。 [気になる点] ねえ私の下僕だれ? [一言] 葬送、勉強時間とれてる?? ちょっと心配だあ、。((ごめん余計な…
[気になる点] 感想欄の下僕さんの徹夜はわざとだろうと思いたい願望強めの方向性 [一言] です。
2019/12/26 11:19 煌曁釐心桃
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