男子四人の合戦 《理科室の陣》
作者、疲れていたのでラフなノリで書きました。
最後まで読んでいただけたら嬉しいです。
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頭を抱え続けた授業も終わり、下校の時間になった。今日はやけに夕焼けが美しく見える。階段を降りて、下駄箱のある場所へ行く。家に帰るということを意識した瞬間、どっと疲労が俺の体を襲う。今日は金曜日。まわりの生徒の「三連休だー!」という元気な声が聞こえてくる。三日間『あの世界』にこもり続けてやるぞ、と心に決め、頭にモディファイやレベルの行く先を馳せる。
学校の新しさの割には何故か古い下駄箱から、新しくしたばかりの指定靴を取り出す。石のタイル張りの玄関で靴を履き替えると、校門に向かって歩き─────出そうとしたとき、右足の靴の中に何か違和感があるのに気が付いた。踵のあたりになにやら厚みがある。立った状態で膝を曲げ、靴を脱ぐ。すると、靴の中からぴらりと一枚の紙が落ちてきた。
拾い上げると、それはキャンパスノートを小さく切ったものらしかった。そこには、一言だけ、端的に言葉が書かれていた。
曰く、『井上優雅、はいれべるぷれいやーとして、理科室に来られたし』ということだった。
そうか、井上優雅さんか。誰だろう。そんな人、ぼかぁ知らないなぁ。
うん、ふざけんな。人の名前をあそこまでひどく間違えられるってどゆこと?相当阿呆が書いたに違いない。字も汚いし、何か少しかすれているし、『室』と『に』の間に間違えたのだろう、ぐしゃぐしゃに書きなぐって消した跡があった。
多分、適当で阿呆でプライドのない人が書いたんだろうなぁ。と考えつつ、ここでずっとこんなことを考えていても仕方がないと思い、俺は重い一歩を踏み出した。
◼◼◼
理科室に入ると、吉川晴男、猪爪優汰、二組の菅野鉄弥が待っていた。晴男と優汰はお馴染みだが、鉄弥がいるとは思っていなかった。鉄弥は学校でも指折りのしっかりもので、時間は破ったことがないし校則、違反をしている生徒を見つけたら即、注意する。
おう、お待たせ。そう言おうとした俺の思考を、晴男の声が遮った。
「なあ、勇雅、あのふざけた手紙を送ってきたの、お前か?」
心底イラついている、といった表情で晴男は話す。しかし、俺もそんなことを問われるいわれはないので、信じてもらえるよう、できるだけ真剣な顔で話す。
「いや、違うよ。俺もあの、名前をひどい間違え方した手紙を見て来たんだ」
「「「だよな!」」」
耳をつんざく程の音量で、俺以外の三人が叫ぶ。あの三人にも、阿呆の手紙が届いたようだ。
「勇雅も、名前に『錆』とか入ってたよな!?」
鉄弥が言う。
「勇雅も、『猪』が『豚』になったりしてたよな?!」
と優汰。
「勇雅も、『吉川』がひらがなで『よしかわ』って書いてあったよな?!」
と晴男。三人とも、えげつない間違われ方をしているようだ。ここまで必死の形相で詰め寄られては、俺もどんな間違われ方をされたか言わねばなるまい。覚悟を決めて、俺は言う。
「俺は、『伊上』の『伊』が井戸の『井』になってて、『勇雅』の『勇』が、優しいの『優』になってた。あと、『プレイヤー』がひらがなだった」
そう言うと、他の三人は、目を見開いてこちらに食って掛かってきた。
「「「おい勇雅!なんでお前、名前が馬鹿にされてないんだよ!」」」
「そんなこと、俺に聞かれてもわかるかぁ!」
理不尽すぎる怒りをぶつけてくる三人に、反論する。何も悪くないのに責められているのだから、反論くらいしてもいいだろう。
すると、優汰がこれまた理不尽すぎる怒りをぶつけてくる。
「お前なんか、『伊上』の『伊』が『陰茎』の『陰』にでもなってりゃよかったんたよ!」
「本当に優汰の口から出たのかと疑いたくなるほどの下ネタ! しかもそれじゃ、『陰上勇雅』になるだろ!」
「お前なんか、それで十分じゃあ!陰茎の上で、優雅にしてろ!」
「お、おい、どうした!? なんかヤバいものにでも乗っ取られたか?!」
「は? 何いってんの? 勇雅、頭大丈夫?」
「まさかの切り返し! それは俺がお前に聞きたいよ!」
「うるさいなぁ、《陰茎魔神》。おとなしくムスコでも愛でてろよ」
「おい、なんだ! 陰茎魔神って! 晴男! 鉄弥! お前らも、何か言えよ!」
「「あ、いいんじゃない? 《陰茎大魔神》。」」
「おいこらぁ! 大をつけるな! 大を! うわああああん! 味方が一人もいないぃぃぃぃぃいい!」
「「「『大』をつけるな、ねぇ······」」」
「あ、あのさ、『大』ってうんこのことじゃねぇからな?」
「「「知ってるよ? 何言ってるの?」」」
「お前ら、俺自体を下ネタ扱いしといて、よくそんな事が言えるな?!」
俺が息をぜぇはぁときらしていると、あきれたような声で三人が切り出してきた。
「「「まぁ、それはおいといて·······」」」
「その一言で何でも許されると思ったら、大間違いだからね!?」
「「「あーはい、さーせん」」」
「お前ら、後で覚えてろよぉ!」
俺が体力の限界に達し、机に突っ伏していると、優汰が真面目な声で切り出してきた。
「ほんとに、いつになったら来るんだろうなー。呼び出した人。ここに来てから十五分もたってるよ」
確かに、さっきからかなりどうでもいい話を繰り返したことで、時間はかなりいい感じになっている。秋が近付いているからか、4時後半なのにも関わらず、夕焼けが沈もうとしている。
俺が夕焼けに見とれていると、他の三人も俺の視線を追い、夕焼けを目に納める。全員がその美しい景色に見とれ、言葉も発をすることもなく一分程じっとしていた。
夕焼けが目に見えるスピードで沈んでいく。赤と紫のグラデーションになった空は、俺たちのクサクサした心を洗い流してくれるようだった。
それぞれがそれぞれのことを考えて、満足に浸っていた、そのときだった。
バアン!
凄まじい音と共に、見たことのある顔ぶれから、顔は知っていても詳しくは知らないものまで、合計六人が夕焼けに染まる理科室に入ってきた。
闖入者のうちの一人が、開口一番、叫ぶ。
「さぁ、ハイレベルプレイヤー会議を始めるぞ!」
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は会議です。
どうぞ、ご期待下さい!




