表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢の中だけRPG‼  作者: 佐賀葬送
第一章
18/51

過去の記憶 [見下すのは勇斗だ]

今回ちょっと暗いです。

楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。

                 18


             【伊藤勇斗の真実】


 伊藤勇斗は、元来真面目な人間である。中学になってからの勇斗は、言うなれば薄い、そして浅い仮染めの姿だ。


 小学時代の勇斗は俗に言うガリ勉で、友人も最低限のものしか作らず、人生全てを勉強に費やしているような人間だった。では、なぜ今の勇斗があのようなことになっているかというと、端的に言えば、家庭の事情である。


 勇斗の家は、とても厳しいところだった。どんな面で厳しいかというと、全てにおいて、である。朝起きるところから、寝るまで。そしてまた朝起きてから、寝るまで。食事のマナーや歩き方、人との接し方まで、あらゆる事を叩き込まれた。それは、今のチャラい勇斗にも反映されている。だからこそ、女子にも人気が出るのだろう。


 何故家庭がこんなことになっているかというと、それは、勇斗の家がかなり裕福だからである。勇斗の代では跡継ぎが勇斗一人しか生まれなかったため、余計に勇斗には沢山の教育が施された。


 小学一年生で六年生までの単元を完璧に理解し。


 小学三年生でほとんどの感情が消え。


 小学四年生で親友意外がゴミにしか見えなくなり。


 小学六年生で親友すらも失い、孤独になった。


 小学六年生になると同時に親友に別れを告げられ、途方にくれた。その影響で、余計に勉強時間が増え、夏休みが終わった頃には高校の内容すら完璧になっていた。


 しかし、勇斗は時間のかけ方を間違えた。頭はもう十分だったのだ。勉強する時間を友達作りにまわせばよかったのだ。小学六年生になっても、勇斗に言い寄ってくる男女はたくさんいたのだ。だが、まわりを見下していた勇斗は、それを全て完膚なきまでにはねのけた。


 運動会も、合唱祭も、文化祭も、あらゆる場面で勇斗は一人だった。


 しかし、時間を費やし続けた勉強だけは誰にも劣らず、成績はいつも一位だった。『勉強だけできても実技ができなきゃダメじゃない?』と思うだろうか。勇斗も勿論そう思っていた。だから、人一倍トレーニングをした。体もがっちりしてきて、風邪を少しもひかなくなった。


 さぁ、皆さん。まわりを見下し、成績がとても良く、顔はイケメンでスポーツができる。そんな人間の学校での扱いは?


 そう、勇斗はいじめを受けた。夏休みが終わった始業式の日が始まりだった。まず、ベターに、机に花瓶がおかれた。それを勇斗は黙って元の場所に戻した。


 次に、陰口を受けるようになった。あえて勇斗に聞こえるよう、少し大声で言われた。それも、勇斗は無視した。


 極めつけは、暴力だった。殴る蹴るは当然のこと。鉛筆で刺された事もあれば、後ろからバケツで水をかけられた事もあった。


 これほどひどいことをやっていれば発覚するだろうと、勇斗は思っていた。しかし、学校とはこういうものである。生徒たちもかなり巧妙にいじめをしていた。しかし、教師がいじめに気づかないはずがない。


 教師たちも、知っていて無視をした。勇斗に声をかけることすらなかった。全員が、《ことなかれ主義》というやつだった。


 勇斗のプライドがなまじ高いのも発覚を遅らせた。勇斗は教師は勿論、親にも相談をしようとしなかった。その間も、勇斗は一位を取り続け、まわりの人間を見下し続けた。


 事が起きたのは、冬休みが終わり、卒業に向けてのスタートだ。と、いう時期だった。


 始業式の日、勇斗は学校に来なかった。いじめていた者たちは自分たちの努力が実ったと、間違った喜びを称えあっていた。しかし、始業式が終わった後、急遽開かれた全校集会で話された言葉を聞いた瞬間、全校の顔が青ざめた。


 『勇斗が首を吊った』と学校に連絡が入ったのだ。勿論いじめていた者たちは大慌てである。所詮そんな度胸もないのだ。


 しかし、勇斗は死んだ訳ではなかった。朝、勇斗の部屋を掃除しに来た使用人が、首を吊っている勇斗を見つけ、すぐに下ろしたのだ。それによって、勇斗は助かった。


 この首吊りは、いじめていた奴等に後悔させてやる、といった類のものではない。ただ、疲れたのだ。この日常に。この世界に。馬鹿共が平気で我が物顔をしているこの世の中に。


 病院のベッドの上で、助けてくれた使用人に感謝と共にそう言うと、使用人はこんなことを言って来た。 


 「勇斗様、『井の中の蛙大海を知らず』という言葉を知っていますかな。今のあなたはまさにそれです。自分だけが特別だと思い、まわりを見下している。」


 それに対し、不服な顔をして勇斗は返した。


「それの何が悪いんだ?全員俺より下なんだ。頭をあいつらに下げろってのか?」


それを聞いて、使用人は目を細めながら口を開いた。


「いいえ、そういうことではありません。あなた様は頭が良い。その頭を、友人作りに使ってはどうでしょうか。私もそう長くありません。最後に、勇斗様のおもいっきり笑っている顔を見たいのですよ。」


 その使用人が、勇斗の最も信用していた、心を許していた人物だからかもしれないが、その言葉は、勇斗の胸の深くに響いた。


 退院すると、家が変わっていた。親が引っ越したのだという。いじめのあとにはありがちなことだ。あの使用人もいなくなった。その家で一週間程過ごした時、やって来たのは若く、清潔な女の使用人だった。


 勇斗はすぐにあの使用人の事を聞いた。返ってきた答えは、予想だにしないものだった。


 「あの人は、急性心臓麻痺で亡くなったそうです。」


 その言葉を聞いた瞬間、自然に涙が溢れた。消えていた感情が一気に取り戻されたかのように、勇斗の眼は止めどなく涙を溢れさせ続けた。


 その日からである。勇斗が変わり始めたのは。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。後一話、勇斗話を入れるつもりです。


では、恒例、作者の近況報告ー。いぇーい。

私ですね、前でも書いた通り、学生なのですが、授業が始まる時に礼をするじゃないですか。私の筆箱はペン類を縦に立てるタイプなんです。

もう皆さん、大体予想がついたんじゃないですか?

そう、私、ものすごい勢いで礼をしたんです。そしたら、見事におでこにシャーペンが刺さりまして。刺さった瞬間、プチって肉が裂ける音がしましたね。

やー、いたかった!

血も出たよ!かなりの量ね!


そ、それだけです。締め方がよくわからないまま終わってしまった。


じ、じゃあ!これで!読者の皆さん、最後までお読みいただき、本当に、ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 頭にちょっと穴が開いて、血が少し垂れ出ていたこと。 いやぁ、あの瞬間は大爆笑だったな。クラス中が。 その直前しかも本当に直前に葬送の2つ席後ろの例の人がシャーペンで手に穴開けてたから尚更面…
2019/12/05 19:17 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ