ついに決着!! [褒められるのは俺だ!]
長くなってすみません。
決着です。
15
俺は全力で右にとんだ。その瞬間、俺が元いた場所に竜のあぎとからブレスが放たれた。そのブレスはもはや熱線で、地面をえぐり取ると、その草と土を一瞬で炭に変えた。
圧倒的威力に戦慄しながらも、俺は考える。
(あの竜五体の持続時間は何秒だ?竜が出ている間は勇斗のSPは回復しないはずだ。どうか、出来るだけ早くいなくなってくれ!)
そう思いつつも、足は止めず、ひたすら走り続け、熱線をかわす。それを一分程続けた時、五体の竜がついにこちらに突撃してきた。
(どうだ?!そろそろタイムリミットか!?)
無様きわまりないが、俺はそんなプライドを捨てて走り続け、時には竜三体の爪による攻撃を弾きながら熱線を避けたりした。
それをまた一分程繰り返した時、ついに竜が光の欠片になって四散した。
(来た!!!)
その瞬間、俺はフルパワーで走り出した。十メートル程も離れてしまった間合いを詰めていく。
(多分今の技でSPを使いきったはず!勇斗のSPが回復する前に勝ちきる!)
この世界では使用したSPは時間経過でしか回復しない。もしかしたらSPを増やす魔法やアイテムがあるのかも知れないが、今は見つかっていない。
瞬きともいえる程の間に二人の距離を縮めた俺は、勇斗の懐に入り込むと、スキルを発動させる。
「《霧雨》」
ドカカッ!という気持ち良いサウンドエフェクトと共に、勇斗の体が吹き飛ぶ。着地し、どうにか倒れるのを回避した勇斗がスキルを叫ぶ───
「《双龍》!」
────が。勇斗の剣が水色の光を纏った瞬間、すぐにその光はシュゥゥ、という音をたてて消えてしまう。俺はこれを狙っていたのだ。勇斗のSPが枯渇し、技が発動できなくなるこの瞬間を。
技が発動できなくなり焦っている様子の勇斗とすぐに距離をつめ、スキルを次々に叩き込んでいく。俺の技は初段のものばかりなので、SPの消費が少ないのだ。
「《霧雨》」
「《霰》」
「《夕立》」
今習得している三つのスキルをフルに使って攻撃していく。切り上げからの振り下ろしである二連撃の《夕立》があたった勇斗のLPがほとんど半分になる。オーバーキルする意味もないので、しりもちをついている勇斗の脚を軽く刺す。そうすると、勇斗のLPが半分のイエローゾーンに入り、俺と勇斗の前にウインドウが表示される。
ウインドウには、『You are a winner!』という表示と、加算経験値が表示されていた。
(決闘でも経験値入るのか)
少し驚いた俺だったが、それどころではないことを思いだし、いまだにしりもちをついている勇斗に話しかける。
「俺の勝ちだ。約束通り、しっかりレベル上げしてもらうからな。」
俺がそう言うと、勇斗は苦虫を噛み潰したような顔をした後、
「ふ、ふん!僕は現時点で君と互角だ!レベル上げなんてしてやるもんか!」
と言うと、ゲットアップボタンを押して行ってしまった。
まさかの展開である。ここまで素直じゃないとは。しかも勇斗は二重の迷惑をかけていった。
通常、フィールドでピンチになることはある話である。そんなとき、ゲットアップしてしまえば簡単に離脱できてしまう。それを防ぐためなのか、フィールドでゲットアップすると、アバターが一定時間残るのだ。その間アバターは無防備であり、モンスターの攻撃をうければLPも減る。要するに、勇斗のアバターが消えるまで俺はここで見守る必要があるのだ。
少しいらっとしたが、ここでそんなこと考えても仕方がないと考え、
「はぁ...。」
とため息をつきながら勇斗のアバターが見える位置に座る。すると、周りから事のてんまつを見ていたらしいグループメイト達がかけよってきた。
「格好よかったよ!勇雅!」
「お前、よくやってくれたよ!」
「勇雅君、よく勝てたね!」
俺に対するたくさんの称賛の言葉がかけられる。人間、褒められて嬉しくないことはないだろう。俺はそれから何分か、友達との雑談を楽しんだ。
雑談が一段落し、グループメイトがまたレベル上げに戻ったところで、シャラン、という音と共に、、勇斗のアバターが消えた。と、そこに、一枚の羊皮紙が落ちていた。恐らく勇斗が置いていったものだろう。拾い上げると、そこには乱雑な文字で沢山の悪口が書かれていた。
『この【ピー】野郎、お前なんか【ピー】で【ピー】な【ピー】だからな!死んどけ!【ピー】!!!』
「......はぁ!?」
長くなったが、これが、俺のイライラしていた原因と、その顛末である。
次の話は、現実に入ります。
第一章もそろそろ佳境です。
どうぞ、お楽しみください。