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三十路おばさんの初恋みたいなもの

作者: 中村はるか

 アラサーになった。

 完璧におばさんだ。それも痛いおばさんだ。

 もう、人並みに結婚して家庭を築くなんて幸せ絶対望めないと今でも思っている。

 と、言うか、それが幸せとかも思っていないし、第一、私の性格を好きになってくれる男性もいないだろう。

 人を好きになっても、恐らくはその恋は諦めないといけないだろう。

 年齢もそうだけど、性格にも難があるし、なにより料理なんかからっきしできない。勉強するつもりもなければ、やろうという気も起きていない。家事なんか大嫌い。

 なので、諦める必要がある。そう、今がまさに諦めるその時である。

 私は男を好きになってしまった。

 きっかけは、私が派遣社員としてとある会社へ派遣されたところから始まる。

 アラサーになってもイケメン男性大好きって言っている二次元しか愛さない痛い私が、リアルを愛するのが難しいと周りに言われている私がだ。

 しかも下手したら十年はリアル男性を愛していない私がだ。

 余談だが私のイケメンの基準は爬虫類顔なのだが、その男性はイケメンかそうでないかの2択で言うなら、失礼な話しだが微妙だろう。

 だけど、私はその人を好きになった。

 きっかけなんて大したことはない。その人をただただ尊敬してしまっただけである。

 そんな簡単な理由で好きになるのだから、私も大人になったのか、誤解なきように言ってしまえば、運悪く今までいい男に巡り合わなかったのか……。

 派遣社員として働きだし、初めは勿論、挨拶程度しかしなかった。

 その人のことも知らないし、なによりコミュニケーション能力の乏しい私にいきなり、コミュニケーション上級者がやるような世間話なんて不可能だ。

 だが、向こうは私に話しかけてくれた。

 年上としての余裕の表れなのかも知れないし、彼のそもそもの能力値の高さからくる物かも知れない。

 彼との話はくだらない話からくだらない話まで、たまには真面目な話もあったけど、大体の会話はすぐにでも忘れてしまうような雑談だった。

 派遣社員として色んなところを渡り歩いているので、雑談力のあるなしは話しを聞けば、なんとなくだが分かってくる。

 もしかしたら、彼は今までの中で群を抜いていたのかも知れないし、はたまた、今までの人たちがあまりにもなさ過ぎたのかも知れない。

 もしかしたら、私と話してもつまらないと距離を取っていただけなのかも知れない。

 でも、なにか、話しが引きずり込まれるような不思議な魅力がその人だけにはあった。

 向こうにそんなつもりはない物の、私の心はその人の虜となった。

 私はその会社を二年ちょっとで辞めてしまったが、その内一年半はその人を好きでいた。

 今も忘れられない。

 あの人の話しをもっと聞きたい。もっとちゃんと向き合ってお話しがしたかった。

 後悔しか私の中には残っていない。

 人を好きになるのはこんなにも楽しくて辛いことなのかと、アラサーになって思い出させてくれた。

 だから、ちゃんとありがとうと伝えたい。

 今の私はこれだけの理由で生きている。

 それだけしか今は、理由がない。

 恋愛漫画のどのイケメンよりも私は彼のことが大好きだった。

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